第193話 森部の戦い5

「あ、大将見っけ」

佐々成政が斎藤軍大将の長井衛安の小姓達を斬りながら歩いて来る。


「ぬぅ、貴様何者だ。相当名の通った武将とみたぞ。名を名乗れえええ!」

成政の平然とした様子にただならぬものを感じて、抜刀し身構える長井衛安。


「あぁ、そういうのいーから。死んでいく者に名乗っても意味ねえし」

そう言って、気軽な足取りで長井衛安に近付き、一瞬で首を落とした佐々成政。


「大将首取ったよー!!」

締まりの無い成政だった。


「おいおい成政、締まりが無さすぎだぞ。こんな時はこう言うんだよ」

愛州小七郎は成政の肩を叩いた。


「長井衛安ぅ! 討ち取ったりいいいいいい!」

愛州小七郎が長井衛安の首を掲げて大声で叫ぶと、戦場は静まり返り斎藤軍の兵士は肩を落とし顔を伏せた。


斎藤軍の周囲を囲んでいた俺は、「投降し信長様の家臣になるなら武器を捨てろ、武器を捨てない者はこの場で殺す」と木下藤吉郎に言わせたら、生き残った9割以上は家臣になった。


1割未満の武器を手放さなかった者は、有無を言わさず俺の家臣にその場で斬り殺された。


新しく家臣になったのは五千人ぐらいだ。

計画通りに後から来た山崎城代・佐々政次、野府城代・平手政秀、勝幡城代・前田利久とに500人づつ割り振り、残りは俺の軍に加えて、近臣達に更に割り振った。


近臣達も自分専属の部隊を持つ訳だ。更なる成長と成果を期待したい。蜂須賀党を家臣にして元々自分の部隊を持ってる木下藤吉郎とかいるけどね。


更に待機していた片原一色城主・橋本一巴、八神城主・毛利某、加賀野井城主・加賀井重宗、竹ヶ鼻城主・不破広綱、森部城主・河村久五郎も合流した。


結果、兵士は下記の通り10,700人に膨れ上がった。


清洲城の信長軍     5500人

山崎城代・佐々政次   1500人

野府城代・平手政秀   1500人

勝幡城代・前田利久   1500人

片原一色城主・橋本一巴  300人

八神城主・毛利某     100人

加賀野井城主・加賀井重宗 100人

竹ヶ鼻城主・不破広綱   100人

森部城主・河村久五郎   100人


まぁ、きっかりの人数ではないけどね。俺の軍で戦死した者もいるし、多少斎藤軍が多かったりしたのでプラマイゼロかな。プラスの方がかなり多いかもね。


「こんなに急に家臣を増やして、兵糧は問題ねえのか?」

橋本一巴が心配して声を掛けて来た。


「全く問題無いですよ」

ダンジョンの備蓄食料を猿飛佐助か石川五右衛門が異空間に収納して転移で持って来れるからね。


食料の問題や裏切り警戒して、普通は敵を逃がして終わりなんだけど、逃がした敵兵はまた攻撃して来るからね。


出来るなら敵兵をそのままこちらの戦力にした方が良いに決まってる。


裏切りは臣従した豪族や城主も同じ事。常に忍者達が周囲の警戒と合わせて警戒してるので、発覚した時点で粛清しているので、外部と情報交換する事は出来ない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「でっ? 大将首は成政で、『首取り足立』は利家と………」


「日比野清実は金森長近、神戸将監は森可成が倒してます」

俺に敵の重要人物を倒した報告をする木下藤吉郎。


「それで、無二は今回手柄は無しか」

俺は新免無二を見た。


「お、おう。敵が沢山いてな、間に合わなかったぜ。がはは」


手柄を立てたのは、いずれも敵後方から襲撃した近臣だ。前方で殿しんがりをしていた剣豪達が敵幹部に届かないのは仕方ないか。


と思っていたのだが、「首取り足立」のところまで新免無二と池田恒興、富田勢源が、日比野清実のところに愛州小七郎がいたと、後で聞いてビックリだった。


こいつら、6千人の敵の中を縦断したの? どおりで家臣にした敵兵達が大人しく言う事聞くと思ったよ。俺達にビビってたんだね。


実は敵兵を一番多く殺したのは圧倒的に新免無二だ。つぎは、元倭寇の許二、そして許四、許三と続く。後は分からん。


こいつら心底レベルアップしたいんだね。


とにかく、この4人が近付くだけで元斎藤軍だった家臣は背筋をピーンと伸ばし、挙動不審になっていた。


そして鶴姫の事をみんな「アネサン」と呼ぶ。困ったもんだ。

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