第190話 森部の戦い2

織田軍の先頭を走るのは池田恒興。「首取り足立」の足立六兵衛に向かって走る。


「あぁ、戦いたいけど。今は我慢ッス」

恒興は、足立六兵衛の斧を掻い潜り、六兵衛の胸に飛び蹴りをかます。


蹴った方の恒興が弾き飛ばされた。


「ちっ、やっぱダメッスね。中央突破は無理みたいだ。退却だああああああ!!!」

恒興が叫ぶ。


「待ちやがれえええええええ!!!」

足立六兵衛が斧を振り回し追ってくる。


織田軍の兵が六兵衛の斧で殺られる。


「あはははは、逃げられると思うなよ。両翼よ、進めえええええええ!!!」

長井衛安の号令で、左右の翼の位置にいた斎藤軍の兵達が襲い掛かり、左右両側から織田軍を挟む様に攻撃する。


両翼包囲と言う戦術の動きだ。


良く訓練された斎藤軍の兵士達の動きに、後方にいた織田軍の指揮官である木下藤吉郎が慌てる。

「ちぃ、動きが早い。仕方がない切り札の一つを切るか」


木下藤吉郎が笛を鳴らす。


「おう、もう出番か。がはは」

新免無二と剣豪達が織田軍の左右の前、中間、後ろから飛び出した。


右前方から新免無二、右中間からは諸岡一羽、右後方から林崎甚助が走る。


諸岡一羽の刀が唸り高速の突きが喉を裂き、華麗な軌道で鎧の隙間を斬る。林崎甚助の神速の居合いが光り、首が手足が落ちていく。


「がはは、これよこれよ。さあ、来い!」

無二が右手に癬丸、左手に十手を持ち暴れ回る。


左前方から佐々木小次郎、左中間から富田勢源、左後方から愛州小七郎が走る。


佐々木小次郎が備前長船長光を抜き一歩進むと、襲ってきた斎藤軍の兵士が立ち止まった。


「来い!」

「あああああああああ!!!」

大声で自分を奮い立たせて兵士達が駆け寄るが、刀を持った両手と首が斬られていた。


富田勢源が兵士達の間を踊る様に駆け抜けると、兵士達が倒れていた。


愛州小七郎が抜刀し構えると、兵士達は底知れぬ殺気に動揺し足が竦み動けなくなった。


「もう、オタイたちの出番なのなぁ。さあ、行くで!!」


「ハイヨー」

「任セテー」

「殺ルデー」

鶴姫の号令で元倭寇の許二・許三・許四が退却の先頭に走って行く。


元倭寇達は、言葉だけ聞くと可愛い感じだがかなり強力で凶悪だ。


包囲しようとして走り来る斎藤軍の両翼の先端に向かって、右に鶴姫と許一が、左に許二と許三が駆ける。


「覚悟しまいで!」

鶴姫が走り飛び跳躍する。着地後一閃、大太刀を持って1回転すると周りの敵が崩れ落ちる。


「ビューンヨー」

許二はオニイトマキエイの魚人だ。走りだすと直ぐに飛行した。空中から柳葉刀を振り回し首や頭を刈っていく。


「ビリビリヨー」

許三はシビレエイの魚人だ。身を低くして走る。周囲に電気を発し痺れた敵を足元から柳葉刀を斬り上げていった。


「当タル、痛イヨー」

許四はノコギリエイの魚人だ。大きな身体で吻のノコギリを振り回し刀ごと敵を叩き飛ばす。


「さあ、今のうちに全員退却だあああ!」

木下藤吉郎が叫び退却していく織田軍。


「はいはい。皆さん退却ッスよおおお!」

池田恒興が最後尾から、敵を倒しながら剣豪達や鶴姫、元倭寇達に声掛けする。


剣豪や元倭寇達と殿しんがりをしながら後退していく恒興。


「え~とぉ、ひい、ふう、みい………、ん? 足りないッスね」


「無二がおらんで」

鶴姫の言葉を聞いた恒興。


「あちゃー。無二さんは相変わらずッスねぇ。ちょっと連れてくるッス。鶴姫様、殿の指揮宜しくッス」


「しょうがないやわ。オタイが殿の指揮をしますけん」


恒興は忘れ物を取りに行く様な気軽さで、追ってくる敵の中に走っていった。

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