第180話 VS岩倉織田家3

傷だらけのグリフォン3匹が清洲城城壁上の鉄砲隊に襲い掛かる寸前。


城壁上から蟲の王達が迎え撃つ。始めに飛び立ったのはチョウ女王と女王。


垂直に飛び上がり背中の翅から鱗粉を撒き散らした。風上の城壁から風下のグリフォンに流れる風に混ざった鱗粉は、蝶の睡眠の鱗粉と蛾の麻痺の鱗粉。


木下藤吉郎は鉄砲隊に指示し銃撃を始めた。岩倉織田軍は敗走し始める。


次に蟷螂カマキリ王、田鼈タガメ王、女王の3人。


傷付き弱って鱗粉で動きが鈍くなって落下しそうになっている、3匹のグリフォンの背中を脚で掴んで空中に持ちあげると、蟷螂カマキリ王は手を変化させた鎌で首を斬り落とした。


田鼈タガメ王は、腕を変化させた前脚の大きな爪でグリフォンを突き刺し、首の後ろから口吻を突き刺すと消化液を注入し、生きたまま消化し口吻から吸い込む。


女王は小柄で痩せた身体で非力な為、グリフォンを持ち上げる事は出来ず、落下していくグリフォンの背中に張り付き、小顎先端の鋸歯で切り裂いた皮膚に口吻を突き刺し吸血する。


その後、斑猫ハンミョウ王、蜚蠊ゴキブリ王、飛蝗バッタ王が城壁から背中の翅を広げて飛び立ち、死んだグリフォン、弱ったグリフォンを噛み千切り補食していく。


木下藤吉郎は蝶と蛾の鱗粉が飛び散った事を確認して、出撃の命令を下す。


城壁から飛び降りる身軽な根来衆と、城門を開けて飛び出す剣豪と近臣、蜂須賀党達。


「活きの悪い奴らのとどめは任せた。俺は活きの良い奴らのところに行くぜ。がはは」

新免無二と剣豪達は、銃撃や蝶と蛾の鱗粉を吸って弱った兵士達を、殴り又は蹴り飛ばしながら逃げて行く兵士達に追いつき斬り殺して行く。


根来衆達は鉄砲を構えて散開し、射殺しながら岩倉織田の岩倉城を目指す。


蜂須賀党と近臣達は確実に息の根を止めながら、岩倉城へ向かい、蟲王達もその後をゆっくりとついていく。


木下藤吉郎は岩倉織田の兵士達を無視して、すり抜け剣豪達を追っていくと、殿しんがりで残り、追手を食い止め、敗走を助け様とした猛将達は全て剣豪達が斬り殺していた。


「何ともはや、剣豪の皆さんは凄まじい。殿が意味を成さないなぁ」

藤吉郎は独り言を呟きながら剣豪達の後を追う。


その後も岩倉城に逃げる兵士達の死体が、あちこちに倒れているのが見えた。


全て一太刀で殺されている様だ。


剣豪達の凄さを実感し藤吉郎は唾をゴクリと飲み込むと岩倉城急ぐ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「藤吉郎、おせぇぞ。がはは」

「先に岩倉城を襲撃するっすよ」

新免無二と池田恒興が藤吉郎に言う。


剣豪達が岩倉城前で木下藤吉郎を待っていて、恒興は剣豪達と一緒に行動していた。


「皆さん早過ぎですよ。全員揃うのを待ちましょう。まだ蜂須賀党が到着していない」

藤吉郎が答える。


根来衆300人は既に到着して、鉄砲を構えて周囲を警戒している。


「おい藤吉郎、そろそろ大砲の準備をした方が良いんじゃねえか?」

特製の鉄砲を担いで、根来衆と一緒に行動している杉谷善住坊と津田監物がやって来た。


「そうですね。五右衛門殿! 大砲の準備をお願いします」

藤吉郎がそう言うと、石川五右衛門が現れた。


「承知したでござる」

石川五右衛門は大砲を数門、岩倉城に向けて出現させた。


「ほほう、これが信長の大砲かい。良い仕事してるじゃねえか」

津田監物がジロジロ大砲を見てあちこち触って確認している横で、根来衆が数人大砲の準備を行った。

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