第157話 織田信長22歳1

俺は22歳になった。


その間に佐々成宗が亡くなった。老衰死だ。

「信長! いくさに呼べよ!」、「20年後に生まれたかったぜ」って声が頭の中で甦る。


迫力がある良いじいさんだったよ。


村木砦の戦いの後、焼酎を持って訪問した際は、痩せて衰えた身体で無理矢理ベッドから起き出して俺を迎えた。


「おう信長、今川との戦いは完勝だったんだってな。俺も行きたかったぜ」

って、ギラギラした眼で俺を見ていた。


成宗の葬式ではその息子達である政次・孫介・成政・ 長穐ながあきの四兄弟が俺の元に来て、「オヤジの替わりに信長様の野望を実現する為、命を掛けて頑張ります」

って涙を流しながら言われて、柄にもなく抱き合っちゃったよ。




それから、伊藤屋惣十郎、生駒家宗、加藤順盛が待望の勘合貿易船が帰って来た。


結果から言うと、大大大成功だったらしい。


先ず、入明し皇帝と謁見出来た。


明に行く途中で数多あまたの海賊を蹴散らして、金銀銅等の明が喉から手が出る程欲しい鉱石の山を持ち込んだ。しかも純度が高い奴だ。


明は海賊達に相当頭を悩ませていたらしい。

一緒に海賊を退治して欲しいと頼まれて、正士、副士が入明中に近郊の海賊を蹴散らしたらしい。


帰国する段になると「滞在を延長出来ないか」とか、「今度はいつ来るんだ」とか、仕舞いには「また来てくれよ」って何度も念を押されて、勘合符も追加でまた貰ったらしい。


皇帝からの頒賜はんし物もいつもより大量に頂戴したとの事。


正士を任せた策彦周良さくげんしゅうりょうと副士の沢彦宗恩たくげんそうおんも、大歓迎を受けて鼻高々で帰って来た。


策彦周良さくげんしゅうりょう沢彦宗恩たくげんそうおんの両名も本場の寺院で勉強し沢山の知古を得て感激したとの事。


策彦周良さくげんしゅうりょうはこのまま尾張に住んで貰えるそうだ。実は「次の勘合貿易船の出発が待ち遠しい」と言ってたと沢彦宗恩たくげんそうおんが小声で教えてくれた。


明を離れた後、東南アジアに寄って、南海貿易も行い、無事に帰って来たのだが……。


「ココ、尾張カ」

「オー、兄サン、久シブリヨー」

「レベ上ゲ、行コー」

「金クレー」


「ん? 何だか増えてないか?」


「あぁ、何か許棟きょとうの弟達と知り合いの倭寇の頭領達が付いて来ちゃいました。まあ、そこそこ強かったので、良いっすよね。あははは」

と鐘巻自斎は相変わらずの感じだ。


追加で仲間なった倭寇の頭領は5人だ。


許棟が連れて来たのは、許四兄弟の三男の許楠きょなん・四男の許梓きょしと、知り合いの方武 ほうぶ徐銓じょせん、徐銓の甥である徐海じょかいだ。


許四兄弟は許松が長男で、許棟、許南、許梓の四人だが、それぞれ許一、許二、許三、許四の別名があるらしく、言い易いのでそっちで呼ぶ事にした。


因みに、

許三きょさんはシビレエイの魚人。

許四きょすーはノコギリエイの魚人。

方武 ほうぶはウツボの魚人。

徐銓じょせんはヨゴレザメの魚人。

徐海じょかいはシュモクザメの魚人だ。


方武 ほうぶ徐銓じょせんは倭寇の大物で明の官軍の襲撃を受けて殺されそうになったところを救出して仲間にしたとの事。


徐海じょかい徐銓じょせんの甥だが、当時倭寇最大の勢力を誇り二万の大軍を率いていた豪傑だ。女好きで王緑妹おうりょくまい王翠翹おうすいぎょうという、二人の美人の人魚を妻として連れて来ていた。


俺が策彦周良さくげんしゅうりょう沢彦宗恩たくげんそうおん・鐘巻自斎と話している時、徐海じょかいは俺と一緒に来ていた帰蝶と鶴姫を見掛けた。


「尾張、イイ女、イルナー」

徐海じょかいは並んでいた帰蝶と鶴姫の後ろから間に入り、両手を腰に回そうとした。


帰蝶は回転し股間に後ろ蹴りを、鶴姫は裏拳を徐海じょかいの鼻に同時に喰らわした。


鼻血を出して吹っ飛ぶ徐海じょかい


「クソッ、女、舐メルナヨオオオオ!」

徐海が鼻血を出しながら大太刀を抜いた。

大人になってからは喧嘩で負けた事のない徐海は、頭に血が上り殺気を滾らせた。


それを見て許三・許四・方武 ほうぶ徐銓じょせんも面白がって大太刀を抜いた。


「女、覚悟シロー」

「倭寇、舐メンナヨー」

「ケケケ、イイ女、見ツケー」


「アッ、ソノヒト達──」

許一が徐海じょかい達の動きに気付いて、止めようとしたが遅かった。


鶴姫は素手で5人の倭寇を一瞬で倒した。

「おもっしょい事しようとしたけんね、ええ度胸やわ」


「御姉サン、ステキー」

王緑妹おうりょくまい王翠翹おうすいぎょうが鶴姫に抱きついた。


そこに鐘巻自斎が駆け付けた。

「はぁ、このヒトは信長様の妻で、水軍の大将だぞ。なあにやってんだあああああ!」


それ以来、「アネサン」と倭寇達から慕われる鶴姫だった。


どこのヤ○ザだ!

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