第148話 村木砦の戦い6

俺の側に軍師の山本勘助が近づいて来た。


「今回も特に作戦はありません。大砲を撃って全軍突撃で良いでしょう。味方の訓練の成果を見るなら、興盛殿は時間をおいて最後に突撃ですな」

勘助は俺の横に並ぶ内藤興盛を見る。


「うむ、それで問題はない。守就殿も儂と一緒に最後に出撃して貰うが良いかな?」

内藤興盛は山本勘助にそう答えると、安藤守就に尋ねた。


「あ、あぁ。全く問題はない。了承した」


「大砲の威力にあまり驚かぬ様にな。発射の時は耳を塞いでおく事を勧めるよ」


「うむ、しかと心得た。兵達にも伝えよう」


内藤興盛には今回の戦いにおける全軍の指揮を任せた。流石に俺では万に近いこの人数を指揮する事は難しいと思っている。


周防の大内家のいくさで、過去にもっと多くの兵を指揮した経験のある内藤興盛に任せて、俺はその指揮を横で経験する事にした。


上手く行ってる時は良いが、不測の事態が起きた時に冷静に全軍を動かせる自信がない。


今の俺の家臣の中で興盛と同様に大軍の指揮を出来るのは、奥羽を席巻した伊達稙宗と小梁川宗朝、一時は幕府の中枢いた三好政長、それと認めたく無いが大内義隆ぐらいだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「信長、俺は先に突撃するぞ。がはは」

「突撃スルヨー」

新免無二と許松が予め俺に許可を求めに来た。


「良いだろう。ダメと言っても突撃するんだろ、許可を求めに来るだけ良い方だ」


「良し、許松!行くぜ。がはは」

「行ク行ク、気持チイー事スルヨー」

無二と許松はそう言うと陣の先頭に向かって走って行った。


許松は何か勘違いしてないかい?


「オタイもうずうずしとります。やきんよ先に行きますけん」

鶴姫がすがる様な目で俺を見る。


「はぁ、無理しないでね」

俺は了承した。


「ありがとでぇ、大好きやわ」

鶴姫は俺に抱き付き、いきなり濃厚な口づけをしてきたので、俺は反射的に舌を絡めた。


はぅ……。


鶴姫の胸が俺の首下に強く押し付けられて、柔らかい膨らみが程よくつぶれる。


うひゃ……。


鶴姫の手は俺の背中とお尻を引き寄せ、俺の股間が鶴姫の太股に押し付けられた。と言うより太股を俺の股の間に差し入れている。


そして太股を動かす。


うほっ………。


だ、ダメだから戦場でこんな事………。


「はいはい。そのくらいにしないと出撃しちゃいますよぉ」

帰蝶がジト目で見ながら、良いところで止められた。


「そうだったで。急がないといかんのぉ」

鶴姫も陣の先頭を目指して走って行く。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「さあ、出撃の準備だ。大砲が鳴ったら出撃するぞ。出撃準備の太鼓を鳴らせ」


興盛の指示で近くの家臣が太鼓を鳴らす。太鼓の音が戦場に響き渡った。


「善住坊、一益、大砲の発射準備だ!」


興盛の指示で杉谷善住坊と滝川一益がそれぞれの大砲隊に対し発射準備の指示を飛ばす。


「守就殿、耳を塞いだ方が良いぞ」

興盛は安藤守就にそう言うと、善住坊と一益を見た。


「大砲を撃てえええええええ!」

興盛の指示が善住坊と一益を経由して大砲が火を吹いた。


轟音が鳴り響き、黒煙が立ち込める。


「突撃だ! 法螺貝を吹け!」

興盛の指示で法螺貝を吹く家臣。


黒煙が立ち込める中で、法螺貝の音が戦場に響き渡った。

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