第145話 村木砦の戦い3

清洲城から村木に向かう内藤興盛と美濃国の安藤守就。


「しかし、内藤殿のその服は軽そうで良いな」

安藤守就が内藤興盛に話し掛ける。


美濃国の兵士は和洋折衷の形の甲冑だ。胴や肩、肘、膝、兜が鉄で出来ているので、頑丈だが重い。


一方織田家の兵士は、蜘蛛の糸で編んだ防刃の服に甲虫の前翅が胸、肩、肘、膝に付いていて、同じく甲虫の前翅で作ったキャップタイプの、ヘルメットもどきの帽子を被り、軽くて強い。


但し、内藤興盛は通常の兵士が着ている量産タイプではなく、オーダーメイドの甲虫の前翅を全面に張り付けた上着を着ており、キャップも兜に近い形をしている。


「うむ、信長様の考案した戦闘用の服だ。軽くて着やすくて丈夫だな」


「鎧が軽いと移動速度も速い。うちもその服が欲しいな」


「ははは、今のところ他国には売らない事になっているが、美濃は同盟国だ。1、2着程度なら売って貰える可能性もあるので、信長様に聞いて見るが良い」


「そうか。斎藤様に頼んで俺の分だけでも、信長様に売って貰える様に言って貰おう」


「ははは」


「ところで信長様はあの空を駆ける100騎程度の騎馬隊で、寺本城を落とせるのか」


「落とせるとも………」


遠くの大砲の轟音が微かに聞こえる。


「安藤殿、今の音が聞こえたか?」


「うむ、物凄い音だな」


「あの音が鳴る武器で、もう寺本城は落としたも同じだ」


「まさかこんな短時間で………」


「ははは、そのまさかを起こすのが信長様よ。多分村木には先に付いていて、儂らを待ってるに違いない」


「それこそ、あり得ない。進軍している儂らより、城を落とした信長様の方が早く村木に着くなんて………」


「ははは、それは村木に着いてのお楽しみだな。さあ、少し速度を上げるぞ。この調子なら儂らが着く前に信長様が村木の砦まで落としてしまう」


「そんな馬鹿な」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


一方織田信行の居城末森城では。


「あっはっはっは、やっと今川軍が尾張に侵攻してくれたぞ。さあ、かねてからの約定通りこちらも攻め込むぞおおおおおお!」

織田信行はすこぶる機嫌が良い。


「どこへ?」

柴田勝家の白けた問い。


「はぁ!信長の清洲城に決まっておろう」


「清洲城には守備兵が多く我らの兵では、攻めきれませんよ」


「くっ、今川軍が来るのを待てば」


「今川軍はそんなに早く来れませんぞ。途中に信長の息の掛かった内藤昌豊の鳴海城、高坂昌信の桜中村城、平手政秀の志賀城、織田信光の那古野城、加藤順盛の熱田羽城、前田利久の荒子城、佐々成次の比良城、青山信昌の深田城、織田伊賀守の松葉城があります。とても今川軍が来るまで待てませんな」


「むっ、そうかぁ。じゃあ………」


「ここから一番近い平手政秀の志賀城に攻め込みましょう」

林秀貞が織田信行に提案する。平手政秀なら倒せると思っての提案だ。


「おお!良い考えだ。秀貞、一緒に出陣しよう。消極的な勝家はこの末森城の守備で残っておれ」


「はい。承知しました」

と無表情で返事する柴田勝家。


「え! わ、私ですか?」

林秀貞は驚き慌てる。


「そうだ。秀貞、弟の通具みちともも連れてまいれ」


「は、はい………」

困った顔で秀貞は返事をした。

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