第129話 VS清洲織田家2

「それでは、説明致します………」

真田幸隆が仕組んでいる調略の説明をした。


一つは守護の斯波義統しばよしむねと清洲織田家の守護代織田信友との離間策だ。清洲織田家は今川と結ぼうとしてると流言を流しており、守護斯波義統の近臣を内応させている為、いつでも仲違なかたがいさせる事が出来るそうだ。


守護の斯波義統の父義達は、元々尾張と遠江の守護だったが、今川に遠江を奪われて、何度も遠江に出兵したが遠江を取り戻せず。終いには大敗して捕虜になる始末。言うなれば斯波氏は今川氏に積年の恨みがあるのだ。


二つ目はその内応者により清洲城内の武将で内応する者がいて、戦になれば俺の側につく事になっているとの事。


三つ目は織田信友に斯波義統を殺させて息子の義銀よしかねを信長が保護する策。義銀を信長が保護すれば、守護の名代みょうだいとして清洲織田家を倒す大義名分が出来る。


「まあ、何も無くても力尽くでやっても勝てるんだが、大義名分があれば地方の豪族達にも示しがつくか」


「流石、幸隆殿。良い調略だ」

山本勘助は絶賛だ。


「し、斯波様を殺すのかぁ?」

秀敏はまだ俺の威圧が効いてるのか、怯えながらの発言だが、全く面倒臭いジジイだ。


「かっかっか、今は下克上の時代。守護や守護代を蹴散らして国を取るのに何の問題がある。武士に生まれたからは大きな夢を持たんとな。それに勘違いしないで貰いたい斯波義統を殺すのは織田信友だ」


小梁川宗朝こやながわむねともの言葉と他の武将達の冷たい目線に、「ん、うむ、そうだな………」と頷く秀敏。


「んじゃ、幸隆、早速その調略を早めてくれ。奴らが出陣する前に事が起これば都合がいいな」

俺が幸隆に指示する。


「ちょっと待ってくれ、実は清洲織田から俺に内応の誘いがあるんだ」

いきなり爆弾発言の信光叔父。


「へぇ、どんな誘いだ」

俺は目を細めて信光叔父を見る。


「尾張の下四郡の半分を俺に任せるから、内応して一緒に信長を倒そうと。そう言う内容だ。」

俺を注視して真剣に話す信光叔父。


「ふ~ん」

興味無さそうに応える俺。


「信長、俺に尾張下四郡の西半分を寄越せ。一緒に清洲織田家を倒してやる」

信光叔父は物凄い顔で俺に迫った。


「信光叔父さん、下四郡の半分で良いの? 随分小さな望みだね。俺なら尾張一国を信光叔父さんに任せる事が出来るよ」


「え? お前はどうするんだ」

驚く信光叔父。


「言って無かったっけ、俺は天下をあまねく統治し、争いの無い世の中にする。天下布武を行うのさ。だから俺は天下を取る」


「はぁ?」

信光叔父は訳が分からない顔になった。


「素敵やわ! 惚れ直したけん」

鶴姫がまた俺の首に後ろから抱き付き、俺の顔を鶴姫の顔に向けさせて、濃厚なキスをしてきた。


ちょっと待ってみんな見てるから、反射的に俺も舌を絡ませちゃってるよ。


鶴姫に手が俺の下半身に伸びる。

うへっ、こ、こんなところで………。


帰蝶がジト目で見てるのを横目に、鶴姫を俺から離して信光叔父に顔を向ける。


「だから、今すぐ尾張をあげる訳にはいかないが、俺はその準備をしている。俺が何処かもう一国手に入れた時点で、叔父さんに尾張を任せても良いよ。いずれ伊達稙宗には奥州、大内義隆に中国地方、三好政長に畿内、海野棟綱と真田幸隆には信濃を任せる事を、今のところは考えてるけど、まあ先は分からないよ」


暗に働き次第だと言ってるんだけど、分かってくれたかね。


俺は伊達稙宗、小梁川宗朝、相良武任、内藤興盛、三好政長、海野棟綱、真田幸隆を順番に見る。


それぞれ不適な笑みを浮かべて俺を見る。


一瞬評議の場は静寂に包まれるが、静寂を破り山本勘助が言葉を発した。


「信光殿。良いんじゃないですか。その誘いに乗っても………」

山本勘助が信光叔父を見る。


「む、俺に信長を裏切れと言うのか?」

狼狽える信光叔父。

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