第124話 赤塚の戦い2

三の山から降りた俺達は、速やかに南にある「赤塚」の地に陣を敷き直した。最前列に200の鉄砲隊。その後ろに長い槍を持った足軽500。その後ろに騎馬隊100の構成だ。


「訓練通り騎馬隊の半分は、鉄砲を撃って煙が出たら迂回して側面から突撃だ。速度を生かして、ヒットアンドウェイって言うヤツで撹乱してくれ」

山本勘助が迂回するメンバーに指示する。


「おうよ!任せてくれ。がはは」

新免無二が返事をする。


無二はヒットアンドウェイ出来るかなぁ。ひたすらヒットなんじゃないの。一緒にいる倭寇達も怪しいぞ。


「おい、そろそろ有効射程に入るぞ。用意しろ!」

杉谷善住坊の指示がとぶ。


「構え!」

滝川一益の号令で鉄砲隊が鉄砲を構えた。

鉄砲隊は杉谷善住坊と滝川一益が受け持っている。


山口軍と今川軍は、まだ悠長に進軍している、自分達の鉄砲や弓の有効射程になっていないので、油断しているのだ。


「3、2、1、撃て!!!」

滝川一益の号令で200丁の鉄砲が一斉に火を吹いた。


そして鉄砲隊は即座に次の弾を装填する。


敵の前衛がバタバタと倒れていく。まあ、概算だが、1回の射撃で200人が倒れる。このくらい距離あれば5回くらい撃てるんじゃねえか? 鉄砲だけで1000いけるか?


轟音が鳴り、黒煙が広がる。


「行くぞ!!! がはは」

迂回組が間髪を入れずに飛び出した。


「果心居士、風を頼む」

山本勘助の指示で、俺達から山口軍へ果心居士が風を吹かせた。


黒煙が敵軍を包み咳き込む声がかすかに聞こえる。


「構え!」

「撃て!」

滝川一益の号令が響く。


黒煙に包まれた敵軍に容赦なく次弾が襲う。


黒煙を流し、更に次の射撃行われた。


「突撃準備!!」

勘助が号令をかけると鉄砲隊は後ろに下がり槍隊が前に出た。訓練が行き届いた淀みの無い動きだ。


ん、鉄砲はもう終わりか、「まだいけるんじゃね?」って言う顔で勘助を見る。


「鉄砲はもう良いでしょう。迂回組がそろそろ接敵しますので安全策を取るのと、槍隊の訓練の成果も確認します。ささ、大将の号令で突撃しましょう」


「うむ、分かった」

俺は大きく息を吸って下っ腹に力を入れる。


「野郎共!裏切り者を許すな!ぶちかますぞおおおおお!! 突撃いいいいいいい!!」


「おおおおおおおおおおおおお!!!」


俺の大号令に家臣達が一斉に応える。


「なんだかワクワクするけんね」

鶴姫が目を輝かせた。


「油断しないでね」

吉乃が注意する。


槍隊が黒煙に向かって走り出している。


「果心居士、煙を流してくれ」

勘助の指示で果心居士が風を起こし、黒煙は横に流れて行った。


黒煙が消えると概算で600の死体と倒れて呻く敵兵達が見えた。その後ろにいた敵兵達は驚き怯んでいる。


そこに長い槍を持った槍兵達が、足並みを揃えて槍衾やりぶすまを作り死体を踏み越えて突撃した。


槍に突き刺さされて倒れていく敵兵達。歴戦の武将も刀で斬る前に長い槍に刺されて死んでいく。


中には槍に刺されながらも槍を刀で斬り、受け流して進む武将もいるが、槍兵は500人が100人づつ5列になっているので、次の列の槍兵に突き刺される。


更にその後ろに銃剣になっている鉄砲を持つ鉄砲隊100人が散開して待ち受ける。


もう100人の鉄砲隊は槍兵の左右から回り込まれるのを防ぐ為、槍兵の左右後方で回り込んでくる敵に備えていた。

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