第125話 赤塚の戦い3

戦況は順調に進んでいる。まるで、決まっている事を当たり前に行う、ベルトコンベアで流れ作業を行うベテランの従業員の様に、黙々と確実に仕事をこなす兵士達に、敵兵が見る間に減っていくのが分かる。


その時、迂回組が敵の後方横手から突撃した。


「死にたい奴と強い奴は掛かって来い!がはは」

新免無二は敵軍に突っ込むと馬から飛び降りて、敵兵を斬り殺していく。


「無二サン、馬カラ降リル、ヒットアンドウェイ、ナラナイヨー」

倭寇の許棟きょとうが馬の上から大太刀を振り回し無二元へ駆け付けた。


「良いんだよ!俺はこのまま、敵の大将を狩りに行く。がはは」


「ホホウ、ソレ、良イネー」

「付キ合ウヨー」

「沢山殺スヨー」

「ヤル」

李光頭りこうとう許松きょしょう許棟きょとう陳思盻ちんしけいの4人も馬降りて大太刀を振り回し、無二の後を追う。


その後ろで、

「はぁ、やっぱり無二さんは突撃しっぱなしか。みんな行くぞ!」

内藤昌豊が残りの44人を指示して撹乱していく。


「さて、退却される前に俺達も行くか」

一番後方に残った騎馬隊50人。俺と妻達も含めて25人づつに別れて、槍隊の左右から突撃した。


俺は右回りで、山本勘助が左回りだ。


因みに俺の隊は………。

俺、帰蝶、ゆず、吉乃、直子、鶴姫の俺と妻達6人。


塙直政(16歳)、丹羽長秀(18歳)、奥村永福(12歳)、前田利家(14歳)の小姓と年少者4人。


生駒家長、佐々政次、前田利久、平手久秀の与力の嫡男4人。


滝川慶次、諸岡一羽、林崎甚助、鐘捲自斎、佐々木小次郎、富田勢源、愛州小七郎の剣豪組7人。


そして、佐々成政(17歳)、佐々長穐(16歳)、木下藤吉郎(16歳)、池田恒興(17歳)の4人の比較的若手の家臣を加えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


敵本陣にて……。


「あわわ、何でこんなことに」

狼狽して山口教継に尋ねる息子の教吉。


「君主の葬式に喪服も着ないで抹香をかけて帰る大うつけ者だぞ」

親の山口教継も狼狽えてる。


「何でこんなに死んでるんだ。今まで一緒に戦って来た兵達だぞ。顔見知りもいるだろうに、情け容赦無いにもほどがある!」

怒り始める教継。


尾張国内の今までは謀叛を起こしても、過去に同じ戦場で戦った仲間で、いずれ仲間に戻る事もある為、手加減して戦うのが常だった。


しかし、今回信長が連れて来た兵は殆どが初陣。兵農分離の政策で新規に召し抱えた兵である事から、敵は敵としか認識していない事も功を奏した。


「かつての仲間を皆殺しにする気かぁ! 織田信長は狂ってる。大うつけ者だ。あわわ」

怯える教吉。


「た、退却して鳴海城戻るぞ」

山口教継が判断を下すが、時既に遅し。


「山口教継が居たぞ!!!」

後方で撹乱していた内藤昌豊隊が山口教継を見つけた。


「俺は山口教継だ!織田家の軍門に戻る。助けてくれ」


「ふっ、戦場で命乞いか、裏切り者には『死』あるのみ。信長様を侮った事を後悔して死ね!」


内藤昌豊が山口教継の首を斬り落とし、高坂昌信が山口教吉の首を斬り落とした。


「山口教継を討ち取ったああああああ」

戦場響く内藤昌豊の大音声。

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