第95話 尾張国の危機

「美濃の斎藤利政が大垣城を襲撃してるのじゃ」

と饗談の報告。


大垣城は美濃国にある城で父信秀が奪い、美濃国進出の拠点にしていた。


逆に美濃国の斎藤利政からすれば非常に目障りで、美濃国を完全掌握するには取り戻したい城である。


「饗談、いつものお前らしくないなぁ。情報が遅いね。今川軍に気を取られたか」


「うう、小豆坂の戦いの詳細を確認中に出陣してたのじゃ」


美濃国の斎藤利政と駿河国の今川義元はてを組んでるからなぁ。同時に攻撃されたら防ぎようがないよな。


「それは、しょうがないなぁ。さあ、抑えを任されたのだ。出陣するぞ」


「暫し待つで候」

煙と共に急に現れる石川五右衛門。


「どうした五右衛門?」


「既に信秀が大垣城に出陣したところ、信秀の留守に乗じて清洲織田の織田信友が古渡城に攻め込もうとしているで候」


「はぁ、主家の清洲織田も敵に回ったか。北から美濃国の斎藤利政、東から駿河国の今川義元、尾張国内では清洲織田家。正に四面楚歌だ」


まさしく危険な状態だな。ここで、今川軍が再度攻めて来たら安祥城も危ないな」

山本勘助が目を細める。


「うむ、その可能性は否定出来ないな」

真田幸隆は顔をしかめる。


「安祥城は守りや易く攻め難い城です。信広様に頑張って貰うしかありませんね」

利久は強い声で言う。


「うむ、その通りだ。先ずは美濃国と清洲織田討伐に急いだ方が良い」

快川紹喜かいせんじょうきが俺を向いた。


「そうだな」

俺は窓から顔を出してニルを呼ぶ。


俺がニルを呼ぶと、俺の家臣達もそれぞれの騎馬(スレイプニルハーフ)を呼んでいた。


「古渡城が襲われたんでしょう。ここ那古野城の守りは大丈夫かしら?」

と養徳院は心配そうだ。


「100人の根来衆が残るので問題ないでしょう。信長様はスレイプニルで出陣です。城の兵もそのまま残りますのでな」

沢彦宗恩たくげんそうおんが養徳院に優しく教える。


「先ずは清洲織田の織田信友から倒すぞ。棟綱!オヤジに清洲織田は俺達が倒すからそのまま進むようスレイプニルで飛んで行って伝えてくれ。清洲織田を倒し次第、俺達も大垣城に向かう」


「承知した」

と海野棟綱が頷く。


尾張国は上4郡を岩倉織田家、下4郡を清洲織田家が統治していた。


だが、実は尾張国は守護である斯波氏の領地であり、それを守護代の両織田家が、に代わり統治していたのであるが、尾張国と越前国、遠江国の3ヶ国を治めていた斯波氏も、今や領地は尾張一国のみとなり、しかも清洲織田家の傀儡となっていた。


父信秀は清洲織田家の三家老の内の一人に過ぎないのだが、父の代から岩倉織田家や守護の斯波氏、主家の清洲織田家を上回る勢力を誇っていた。


父信秀は一門や家臣を尾張の要所に配置し、国内の他勢力を圧倒し尾張を牛耳っていたが、守護の斯波氏や清洲織田家、岩倉織田家はそのまま存続させている為、尾張国は不安定な状態であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


俺達が古渡城に飛んで来たら、古渡城下に侵入した織田信友軍が火を放っていた。


ちぃ、敵がバラけている。大将の場所が分からないと少数で制圧出来ないぞ。


「饗談!」

俺は空中で饗談を呼ぶ。


「どうしたのじゃ?」

空中に出現する饗談。


「敵の大将の位置を教えろ」

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