第53話 坂氏の村1

坂氏の村に足を踏み入れたとたんに矢が飛んできたので、俺は矢を斬り飛ばす。


蜻蛉トンボ大土蜘蛛タランチュラを掴んで、矢が飛んで来た方向に高速で飛んでいた。その後ろを兜虫カブトムシ鍬形虫クワガタムシ雀蜂スズメバチ髪切虫カミキリムシ蟷螂カマキリ達が飛んで行く。


「殺すなよ!」

俺は蟲達に叫んだ。


蜻蛉トンボは高速飛行だが成長し、更に速くなったみたいだ。次の矢をつがえる前に対象に到着し、大土蜘蛛タランチュラが糸でぐるぐる巻きにした。


木の上に二人いた様で大土蜘蛛タランチュラの糸でぐるぐる巻きになった二人を、兜虫カブトムシ鍬形虫クワガタムシが運んで来た。


大土蜘蛛タランチュラは捕らえた二人を、エルダートレントの枝に逆さに吊るした。


二人は女の子だ。12歳の俺よりは歳が上だろう。耳が尖っていて、色黒のところを見るとダークエルフだな。


蟲達が二人に群がり威嚇する。


「ひぇ~、気持ち悪いよ~、助けて~」

震えておしっこをチビる少女。


「ちょっとぉ! 何すんのよぉ! あんた達何者よぉ! 何の用なのよぉ」

じたばた暴れる少女。


「そのくらいにしなさい!」

俺が叫ぶと蟲達はエルダートレントの枝に戻って行った。


蟲達は、二人が俺に矢を射った事で怒っていたらしい。


俺は抜刀しぐるぐる巻きなった蜘蛛の糸を、少女達を傷付けないように斬った。


そして、枝から落ちた少女の1人を受け止める。


じたばたしてた少女をお姫様抱っこして声をかけた

「怖い思いをさせてすまなかったね。争いに来たんじゃないんだ」


「ちょっとぉ………」

俺の顔を見て何故か頬を赤らめる少女。


もう1人は杉谷善住坊が受け止めて、下におろしたが……。


「キャァ、サイクロプス! 怖いよぉ……」

怖くてお尻をつき後退る。


俺は目の前の女の子に話し掛けた。

「俺達は怪しい者じゃない。坂氏の人にお願いしたい事があって来たんだ。村の責任者の人と話したい」


「責任者って、村長ね」

と女の子が言うと──。


「儂が村長じゃ」

村の奥からダークエルフの老婆が来た。


「あ、村長!」

女の子達が村長に抱き付く。


「私は尾張の織田信秀の嫡男、吉法師と申します。坂氏にお願いがあってきました」

と俺が老婆に言うと


「尾張の吉法師殿か。ん? 後ろにおるのは果心居士殿じゃないかえ」


「ほっほっほ、如何にも儂が果心居士だ。はてお主は誰だったかな。すまんが思い出せんぞ。何処かで見た事がありそうなんだがな」


「儂じゃ、儂じゃ、坂九仏さかきゅうぶつ玄孫やしゃご、坂百仏じゃ」


「ほっほっほ、成る程、坂九仏の面影があるな。子供の頃会った事があるのだな」


「果心居士殿は変わらぬのう」


「ほっほっほ、儂は不老不死だからな」


「流石、果心居士殿じゃ。儂の渾身の結界を壊さずすり抜けたのも、果心居士殿なら納得じゃ」


「ほっほっほ、お主の結界もなかなかの物だったぞ」


「まあ、こんなところで話すのは、果心居士殿にも吉法師様にも失礼じゃな。こちらにどうぞ。そうそう蟲は遠慮して貰えんかのう、村のみんなが驚くからのう」


「そうですね。送還します」

俺は蟲達とエルダートレントを送還した。

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