第21話 富田勢源3

富田勢源に敗れて項垂れる新免無二。

型なんてどうだとかぶつぶつ言っている。


「それでは話を聞きましょう」

俺達は富田勢源の屋敷の中に招かれた。


項垂れる新免無二を諸岡一羽と林崎甚助が肩を抱えて連れて来る。


富田勢源はソファーに腰掛け、富田勢源の後ろに二人の門人が立つ。


俺は富田勢源の向かいにのソファーに座ると隣に帰蝶が座った。そのソファーの後ろと横に諸岡一羽、林崎甚助、新免無二、果心居士が立っている。


帰蝶はすっかり正室の雰囲気だ。

まぁ、良いんだけどね。


俺は富田勢源に天下布武を目指す事を話して 、人材を集めたいので仕官して貰えないかお願いした。


「成る程、吉法師様の遣りたい事は理解しました。天下人なって争いが無い世の中を作るとは、随分壮大な夢ですね」


「ぜひ力になっていただきたい」


「私は眼病を患う身。精々一対一でしか戦えない為隠居しました。隠居して最早脱け殻だ。合戦では活躍出来ないので足手まといになるでしょう。


ですが、果心居士殿の頼みとあれば……、門人の鐘捲自斎と佐々木小次郎は、無二殿が言うように実戦の経験が足りない。天下人になる為には多くの敵を倒す為、合戦も多い事でしょう。この2名を仕官させます」


「師匠! 私は師匠と共におります」

ボサボサ頭の鐘捲自斎は富田勢源に叫ぶ。

小次郎は無言だ。


「俺は富田勢源殿に剣士達の指導をして貰いたい」


あの殺し合い馬鹿の新免無二を、やり込めて指導していたからなぁ。是非欲しい人材だ。


「私には無理です。この目ですから……」


「ほっほっほ、ならば儂が目を授けよう」

と言いながら果心居士が俺の後ろからソファーの横に出てきた。


「え?」


「ほっほっほ、儂の手元に魔眼が一つある。まあ、あまり強力なものでは無いが、視力は戻るぞ」


魔眼! それは興味深いな。

「何の魔眼なんだい?」

俺は果心居士に尋ねた。


「ん~、大したことないヤツだのう、未来眼だったかのう。僅か3秒先しか見れん。ほっほっほ」


「3秒先だって!!!」

項垂れていた新免無二が顔を上げて叫んだ。


「果心居士、俺にそれをくれ! 3秒先が分かれば剣士は無敵だ。際を制する事が出来るだろう」

すがり付く様に果心居士の両腕を掴む新免無二。


「ほっほっほ、一つしかないのでな。眼病を患ってる富田勢源が優先だ」


「ど、何処で手に入れた!」


「ほっほっほ、ダンジョンだ」


「ダンジョン!!!」


「ほっほっほ、ダンジョンの話は後にしろ、先ずは富田勢源だ」

果心居士は新免無二を退かすと、富田勢源に向かい合った。


そして魔眼を取り出し富田勢源の右目に押し付けた。


「ああああああああああ」

富田勢源が叫び右目を押さえて踞る。


「はぁ、はぁ、はぁ」

富田勢源が立ち上がる


「見える。見える。見えます。はっきり見えます。ああああ、目が見える。目が……」

富田勢源は涙を流した。


「有り難う御座います」

富田勢源は果心居士の両手を掴んだ。


「ほっほっほ、礼は吉法師様に言うのだな。そして吉法師様に仕えるのだ」


「はい。吉法師様有り難う御座います。あなたに仕えます」


「富田勢源、有り難う宜しく頼むよ。じゃあ、帰ろうか」


「私達は朝倉様にご挨拶して、身の回りの物を整理してから尾張に向かいます」


「そうだね。それでは尾張で待ってるよ」


「はい。宜しくお願い致します」


「あ、アタイはここで別れるよ。また会えるからその時を待っててね」

俺の腕に手を絡めていいた帰蝶がそう言って離れた。


「え?」

驚く俺に……。


チュッ、ペロッ。サワッ。


「うふ、またねぇ」


キスして唇を舐めて、股間を触って、固まる俺を置いて走り去って行った。

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