第17話 新免無二
< レベルアップしました >
ん? 『信長の野暮★な事は言わないで』にレベルアップなんてないぞ。
諸岡一羽と林崎甚助も頭をかしげていた。
しかし、それからの俺達3人は目を見張る様に、身体が軽く動きが速く、力が増していた。
その結果、あっという間に馬車の周りにいたフォレストウルフ達を倒していた。
毒のナイフを投げていた女の子が近付いて来た。色白で可愛い女の子だ。俺よりはちょっと年上か、と言っても10代前半だと思うが妙に色気がある。大きくなったら美しくなること間違いない。
「うふ、有り難う助かったわ。アタイは帰蝶」
そう言った後、帰蝶は俺の顔を見て赤らめた。
「いえいえ、無事で良かった。俺は吉法師、後ろの二人は一羽と甚助です」
「ほっほっほ、そして儂が果心居士」
「いやぁ、本当に助かったよ。子供なのに君達強すぎだろう」
護衛の男達もお礼にしに来た。
そこに身体中に返り血を浴びた男が帰って来た。
「がはは、なんだお前ら生き残っていたのか、運がいいなぁ」
「あんたねえ! そんなに強いなら馬車を守りなさいよ」
帰蝶が男に食って掛かる。
「なぜ? 俺は乗客だ。護衛が馬車を守れば良いだろう。がはは」
「あんた程の実力なら、守りながらでも戦えるでしょ!」
「がはは、俺の刀は攻撃あるのみ、守りながら戦うなんて面倒だ」
「アタイ達が死んでも良いって言うの!」
「弱いやつは死ぬだけだ。お前らが死んでも俺は一向に構わないぜ。がはは」
「あんたねえ! 人の道を知らないの!」
「がはは、知らんねぇ、俺は強くなりたい。それだけだ」
なんて、帰蝶と男が言い合いをしているが、それは無視して……。
「もしかして、一羽と甚助も『レベルアップしました』っていうメッセージを聞いた?」
「はい、頭の中に突然……」
「拙者も聞き参った」
「果心居士、どういう事だろう?」
「ほっほっほ、レベルという概念はこの世にないぞ。転生者特有の現象だろうな。多分一緒に戦った仲間にも恩恵があったのだろう」
「成る程、そうかも知れないね」
「おお、そうでござったか。急に身体能力が上がったので、びっくりしたでござる」
「私もメッセージを聞いた後、一段強くなった様に感じました」
「がはは、聞いたぞ。お前の仲間になれば急に強くなるらしいな。そう言えば遠くから見てたが、急に動きが良くなっていたな。俺もお前らの仲間にしろ」
男が急に割り込んで来た。
「俺に仕えるって事か? お前の名前は?」
「がはは、なんか上から目線だなぁ。俺の名は新免無二だ」
新免無二!! キター!!!
新免無二って言えば、宮本武蔵の父なんだよねぇ。
「良し! 召し抱えてやる」
「がはは、なんだぁ偉そうだな」
「この方は尾張の織田信秀様の嫡男、吉法師様だ!」
諸岡一羽が声を上げた。
「おいおい、一羽! お忍びって事を忘れるなよ。敵地だぞ……」
「あっ……。すいません」
「がはは、信秀の嫡男か。良いだろう仕えてやる」
「ふっ、俺は天下人になる! 進むは修羅の道だ。そのうち嫌に成る程戦わせてやる」
「がはは、望むところだ! 俺は天下一強い男なる。天下人にしてやるさ。がはは」
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