第18話 帰蝶

「面白い話をしてるわね。アタイも仲間に入れてよ」

帰蝶が俺に話し掛けて来た。


「ん? 俺達と一緒に居ると危険だぞ。帰蝶の様に可愛い人が傷付くのは見たくない」


「あら、嬉しい事言ってくれるわね。気に入ったわ」


チュッ


え? 口に……チュウされた。あわわ。


「なに赤くなって狼狽えてるのよぉ。あんた童貞?」


「まだ10歳だぞ。童貞に決まってるじゃん」


「うふ、可愛い。ふぅ」

耳に息を吹き掛けながら帰蝶が話す。


「アタイは11歳でバツイチよ。色々知ってるわ。後で気持ちイイ事、し・て・あ・げ・る」


チュッ、ペロッ


あわわ、唇を舐められたぁ。

しかも帰蝶の舌って先端が割れてるぞ。

スプリットタンってヤツだ……。


という訳で新免無二と帰蝶が仲間になった。


気持ちイイ事を期待した訳じゃないんだからね!


「がはは、主、気を付けろよ。綺麗な花には毒があるぞ」


「なによぉ! アタイの邪魔をしないでよぉ。クソオヤジぃ!」

帰蝶は新免無二に文句を言いながらも、俺に抱きついている。


「ところで、無二、お前は何処に行く予定だった?」

俺は恥ずかしい気持ちを誤魔化す様に、無二に話し掛ける。


「がはは、富田勢源と殺し合いやりに来た。奴はつえぇらしい、腕がなるぜ」


「ふ~ん、俺は富田勢源に会いに来た。天下布武の為の人材勧誘だ。敵対したくない。そこは弁えてくれよ」


「がはは、それは富田勢源次第だな」


「富田勢源は眼病を患って一線を退いてるらしいぞ、戦えないと思うが……」


「がはは、目が見えずとも手が無くてもつえぇ奴はごまんといる。そんな奴らと殺し合うのがイイんだよ」


「死んだら終わりじゃないですか!」

諸岡一羽が割り込み新免無二の前に出た。


「がはは、そうだよ。だからイイんじゃねぇか、『死ぬか生きるか』そのきわで得た物が糧になり強くなるのさ。坊主の様に型の練習ばっかりして、剣術ごっこをしてる奴には分からんよ」


「何ぃ!」

諸岡一羽腰に差した刀の柄手を添えた。


「がはは、止めとけ!坊主は百遍やっても俺には勝てねえ。きわの経験が圧倒的に足りねえ。それとも一遍死んでみるかい」

新免無二は諸岡一羽を睨み殺気を放つ。


「くっ」

思わず後退りして悔しそうにする一羽。


確かに塚原卜伝も一羽と甚助は、実戦の経験が足りないと言ってた気がするな。


「ほっほっほ、そのくらいにしておきな」

果心居士が新免無二肩を叩いた。


「おっと、すまねぇ。じいさんとはまだ・・やらねえよ。今やっても負けるイメージしかねえ。天と地程実力差があるからな。がはは」


「喰えないご仁でござるな。しかし『型百遍意自ら通ず』と申す。型も真剣にやり続ければ染み込んだ動きは神業に近付くでござる」

林崎甚助が新免無二を見詰め無表情で淡々と言う。


そんな諺ねえよ。『読書百遍意自ら通ず』のパクりじゃねえのか?


「がはは、坊主とならやってもイイゼ。何だか面白い剣を使うな。俺が死ぬとは思えんが、ちょっと面白い殺し合いが出来そうだ」


「話はそのくらいにしておきな。富田勢源に会いに行こう」

俺は会話を中断させた。


「アタイも行くからね」

帰蝶が俺の腕に手を絡め身体を押し付ける。


「胸が当たってるんだけど……」

子供の癖に胸があるぞ。小振りの胸が柔らかくて、変な気持ちになるよ。白い胸元が艶かしいし……。


「当ててるのよ、気持ち良いですか? 後で触ってもいいですよ」

また帰蝶が耳元で囁く。


ペロッ

あふぅ、耳を舐められたぁ。

割れた舌の先端が微妙に気持ちいい。


「あら、硬くなってますよぉ」

俺の股間をさわさわと撫でて、耳元で囁く帰蝶。


うひゃ、この子エッチぃよ。

皆呆れた顔で見てるよぉ。


「がはは、主はおなごに弱いんだなぁ」

顔を赤らめた俺を揶揄う新免無二。


よ、弱い訳ではない事もないけど、帰蝶が子供の癖に妙に妖艶だから、まだ精通も無いのに勃起したっちゃうよ。


ああ、念話切っといて良かった。

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