第14話 塚原卜伝3
「こ、これ程とは……」
膝をつき汗を流す門人が呟く。
「ほっほっほ、これぐらいで良いだろう」
果心居士魔力に放出を止めた。
「いい鍛練になったよ」
慶次が立ち上がり歩いて来た。
「師匠でも敵わないのでしょうか」
膝をついていた門人が立ち上がり、卜伝に問う。
「俺は逃げるぞ、敵うわけがない。あの果心居士と凄腕二人だぞ」
と言いながら後ろの門人の更に後ろを見た。
「おお、おら達の事分かったか」
と猿飛佐助。
「なんだ、もう終わりでござるか。貴殿ら、吉法師様が無事で良かったな。傷がひとつでもついてたら皆殺しでござったぞ」
と石川五右衛門が門人達の後ろに現れた。
「ほっほっほ、心配症だのう。儂がいるから吉法師様には傷ひとつつけさせんよ」
と果心居士がいつもの笑みを浮かべた。
「な、なに!」
「全く分からなかった」
「信じられない」
「俺達が動けば背後から襲われていたのか」
驚く門人達。
「仙気が漏れている。仙人にはまだ届いていないと見た。道士ですね」
卜伝は佐助と五右衛門に問う。
「うん。おら道士だ」
無表情の佐助。
「おう 、拙者は道士の石川五右衛門だぁ!」
と見得を切る五右衛門。
「吉法師様、果心居士様と道士二人を従えるとは恐れ入ります。ささ、こちらにどうぞ」
そう言うと卜伝は颯爽と寺に向かって歩き、佐助と五右衛門の間を通り抜けた。
「佐助、五右衛門、ご苦労様」
「おら、吉法師様に危機であれば何時でも来るだ」と佐助。
「三太夫様に頼まれているゆえ、何時でも助け候」と五右衛門。
そう言うと佐助と五右衛門は姿を消した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
寺の一室で塚原卜伝と向かい合う。
「私の門人が失礼な事をして申し訳ない。そして、殺さずに対応していただき感謝致します。」
塚原卜伝のお詫びから始まった会談。俺は天下布武の為、人材を集めている話をして、協力を要請した。
「争いのない世の中をつくる崇高な思いは理解しました。私もその様な世の中になるのは良いと思いますが、実現性に疑問があります。果心居士殿が手助けしても達成出来るとは思えない。失礼ながら吉法師様は地方領主の嫡男の身ですから」
「ごもっともです。私が尾張、そして美濃の2国を手に入れて、初めてその入り口に立てると重々承知しています。まだ入り口にも立っていない小僧の戯言と突っぱねられないだけでも充分でしょう、しかし半歩でも進む為に人材は集めたいのです」
「ははは、私は剣の探求者ゆえ、正直どうでも良いのですが、吉法師殿が茨の道を歩む事は想像出来ます。幾多の合戦を重ねる事でしょう。その戦場で実戦の経験を得る事も修行の一つ、若き門人から何名か派遣しましょう」
「おお、有り難うございます」
「そうだなぁ……。これ、諸岡一羽と林崎甚助を呼んでまいれ」
卜伝は部屋の隅で待機していた門人に指示した。
諸岡一羽! 林崎甚助!
キター!!!
諸岡一羽と林崎甚助は俺と同じぐらいの年の様だった。恐らく10歳前後だろう。しかし、無表情のその佇まいは剣豪の風格を感じる。
諸岡一羽は「一羽流」の開祖で、新撰組の近藤勇の天然理心流も一羽流の系統だからね。
林崎甚助は「神夢想林崎流」の開祖で、居合いの達人だ。
こうして若かりし頃の諸岡一羽と林崎甚助が俺の配下になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます