第13話 塚原卜伝2

俺と果心居士、慶次、恒興の4人は、塚原卜伝に面会を求めて、卜伝が逗留しているとある寺に来ていた。


しかし、門人達が急に襲い掛かって来たので、果心居士と慶次が門人達を倒す。


残りは一人。槍を持って慶次と向かい合う。


額から汗を流して、後がない門人の男は震える手で槍を構えた。


無造作に槍を構える慶次。槍は朱塗りの鉄製の柄。慶次特注の槍だ。凄く重いはずなのに軽々と扱うので、鉄製には見えない。そして通常の槍より長い。


慶次が街中を歩く様に軽い感じで間合いを詰めて、無造作に槍を横に振る。予備動作が無く振りが速いのでの、初見では躱せない。


しかし門人の男は2度見ている。素早くそして遠くまで躱し槍を構えた。


慶次は横に振った槍が躱されると、素早く槍を引いて突き出す。男は受け流し、返しで槍で突く。


しかし慶次は受け流された槍を、素早く引いていた。


慶次は槍を突きながら相手の槍を弾く。

左斜め後ろに躱す男。


「ちっ、やるな。基本動作しか出来ない様だが、信じられないぐらい重くて速い」


槍を持つ男は防御に専念し始めた。隙を窺っているのか、援軍を待っているのか、勝負は長引く。


そこに……。


「止めなさい! 果心居士殿お久しぶりです」

剣豪塚原卜伝がやって来た。


ただ歩いて来るだけなのに目が話せない。一目で卜伝と分かった。初老に見える男。その佇まいは何者も侵せないそんな雰囲気を持つ。


その後ろに4人の無表情の男達がついて来ていた。4人共に一筋縄ではいかない雰囲気。


そして果心居士と慶次に倒された門人達がよろよろと起き上がり卜伝に頭を下げる。


「ほっほっほ、卜伝久し振りよのう、中々元気な門人が多いのう。いきなり襲って来おったぞ」


「申し訳ございません。ささ、この様なところで立ち話もなんですから、こちらにお出でください」


「ほっほっほ、争いに来た訳ではないのでな。吉法師様、宜しかったか」

果心居士が俺を見た。


「うむ、良いだろう」

俺は頷く。


俺達は卜伝について行く事にしたが……。


俺達に倒された門人達が悲壮感を滲ませ、卜伝を見詰める。

「卜伝先生……」


卜伝は門人達を振り返り。

「お前ら破門だ! 相手の度量の見極めも出来ず。我ら全員が命の危険にさらされた」


「師匠ぉ……」

門人達は涙を流す。


「良いかね、果心居士殿が本気を出せば、ここにいる80と余人の門人達は、全員一瞬で殺された。剣の修行も半ばで、無念に一生を終えるところだったぞ」


「そ、それほどの……」

「ま、まさかその様な事は……」

「あり得ません」


「はぁ、まだ分からんか……。果心居士殿お手数をかけますが、本気の殺気を見せていただけませんか」


果心居士は俺を見たので、俺は頷いた。


「ほっほっほ、良いだろう」

果心居士は俺達の前に出て、全力の魔力を放出した。


濃厚な魔力の中で押し潰される門人達は、立つ事が出来ず倒れていく。卜伝の後ろの4人も、汗を流して膝をつき果心居士を見詰める。ただ卜伝だけは平然としていた。


俺と恒興は果心居士の背後にいて魔力が来ない様だ。しかし、前方で槍の男と戦っていた慶次は膝をついて必死耐えていた。

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