第4話 養徳院

目を覚ました。

腹が減ったな。


2歳児が急に喋ったらおかしいので、誰かを呼べないから周りを見渡す。


直ぐ側に髪の長い綺麗な若い女性がいた。

20歳ぐらいかな?


赤ちゃんに授乳している。

その形の良い色白の綺麗で豊満な乳房をジッと見詰めてしまった。


「あら、若様おっぱいが欲しいの?」

女性がジッと乳房を見る俺に気付いた。


むむむ。……恥ずかしい。


戦国時代は離乳食って無いよなぁ。

母乳飲むしか無いよねぇ。


前世で30歳だった俺が、20歳そこそこの女性の乳首を吸うんだぜ。


恥ずかしいったらありゃしない。


『年齢=彼女いない歴』だよ。

女性の生の乳房を見るのも初めてだっちゅうのに、乳首を吸うのかぁ……。


顔を紅くして下を向いた俺の頭を撫でる女性。


「遠慮しなくて良いのよ。こっちのおっぱいが空いてますよ」


俺の頬に手を添えて、乳首に誘導する。


「いっぱい吸っていいのよ」

小声で優しく言う女性。


思わずパクっと乳首を咥えて、チュウチュウ吸ってしまった。


吸い方は身体が覚えている。


エッチな気持ちは無いからね。お腹が空いてるから仕方がないんだ。そう、これは生きていく為に必要な行為だ。


そう心に言い聞かせて、チュウチュウ乳首を吸う俺だった。


味はあまり無い。物凄く薄味の……。

何だろう? ほんのり甘い。

血の味にちょっぴり似てるかな。


俺は吸血鬼じゃ無いので、血を吸う習慣は無いけど、指を切った時に血が止まるまで吸った事はあるのだ。


母乳は血液から出来てるって言うしね。


美味しくはないけど不味くもない。

まあ、身体が欲しているからごくごく飲むのだ。


ごくごくと……。

ああ、恥ずかしい。


ガラッ。


引き戸が開いて、無精髭を生やした体格の良い大男が入って来た。

「おっ飲んどるなぁ。養徳院、吉法師は乳首を噛んでないか?」


「信秀様、吉法師様は全く噛む事もなく元気に飲んでますよ」


「それは重畳だ! 養徳院は乳を飲ませるの上手いみたいだな。この調子で乳母を頼むぞ」


「承知しました」


信秀!

こいつが俺の父親か!

ちょんまげしてないぞ。服も洋服だ。


しかしこのオヤジ、養徳院の乳房を凝視してにやけてやがる。


とんだスケベオヤジだ。


ヨウトク院? ……養徳院か。

池田恒興の母で俺の乳母になって、後に…… 、信秀の側室になるんだ。


このオヤジに犯されちゃうんだ。

ちょっとショックだなぁ。


そして隣で母乳を飲んでる赤ちゃんが、池田恒興。乳兄弟ってヤツだ。成長したら色々働いて貰うぞ。


それと、乳首を噛むねぇ……。


ふむ、信長は幼少時に乳首を噛み破る癖があった、なんていう話もあったなぁ。生まれてから今までの記憶は無いが、母の姿を見た覚えが無くて、淋しい感情は覚えている。その裏返しだったのか?


なんて思いながら母乳を飲む俺だった。

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