第3話 饗談2

ところで、饗談って聞いた事ないぞ。


「まぁ、お主とは初めて会うしのう」


いやいや、饗談っていう登場人物は『信長の野暮★な事言わないで』に出てこないんだよね。


「ノブナガのヤボ……、そんなの知らんし」


ふむ、……饗談って何をやってたの?


「尾張の国を彷徨ってただけじゃ」


何が出来る?


「我は忍びじゃからのう、諜報、破壊活動、謀術、暗殺が仕事じゃよ」


忍者か、それは好都合だ。

情報収集はゲームクリアに必須だからねぇ。


仲間がいるのかい?


「我は尾張に潜む忍びの、……最後の生き残りなのじゃよ」


生き残りって……、ゴーストは死んでるじゃん。


「むむっ、それはそうじゃが、最後の一人と言う事でじゃな、言葉のあやと言うか、何と言うか……」


ははは、そうかぁ、最後の一人なんだね。


「そうじゃ、長い間我が見える人を探していたのじゃ」


そうなんだぁ。それは淋しかっただろうねぇ。まぁ、これからは俺の眷属として活躍して貰うので宜しくね。


「うむぅ、眷属になったのは不本意じゃが、主従の関係を結んだからには、我が出来る事はやるのじゃ。こちらこそ宜しくお願いするのじゃ」


俺はまだ赤ちゃんだから、ここから出られないので、情報収集をして欲しい。


「赤ちゃんの割りには物事を知りすぎてるのう」


ははは、それについてはその内話すよ。


早速だけど現在の周辺国の状況を教えてくれ。特に東の三河、遠江、駿河と北の美濃だな。


そして尾張の南は海だから良いとして、後は西の伊勢も教えてくれ。


「そうだなぁ、東の三河国は松平家が統治しており、領主の清康が今年死去した。10歳の広忠が跡を継いだが、大叔父の松平信定がお主の父である織田信秀と手を結んで不穏な動きをしておるな」


ふむふむ。


「遠江国と駿河国は今川家が統治していて、領主は病弱な氏輝だ。相模国の北条家と組んで甲斐国の武田家と争っている」


ほうほう


「北の美濃国は土岐家が統治しているが、土岐頼芸と甥の頼純が家督争いをして戦火は美濃国全土に拡がり大変な事になっておるのう」


美濃国に斎藤道三はまだ出てきていないのかぁ。


「ドウサン? そのような輩は知らんのう。西の伊勢国は群雄割拠じゃよ。北畠を筆頭に、関、九鬼、神戸、長野に服部、その他諸々じゃな。特に伊勢の北部は四十八家が割拠しており混戦模様じゃな」


何れにしても、何処の国も争いが絶え無いね。正に戦国時代だ。


「戦国時代かぁ、まさしくその通りよのう」


因みに尾張国の状況はどうだ?


「尾張国の統治は斯波家から織田家に代わり

織田達勝が治めているが、お主の父信秀と争っているのう」


尾張も他の国と一緒だね。

この中で『天下布武』を目指す訳だ。


「テンカフブ! なんじゃそれは?」


天下とはこの世界の皆が思っている山城国・摂津国・河内国・大和国・和泉国の五畿内の事じゃないよ、文字通りこの世の全てだ。そして将軍足利を立てる気もない。足利では戦は無くならないからね。俺の天下布武は武をもって世の中全ての天下泰平を目指すのさ。


「そ、そんな事が実現出来るのかのう」


出来る出来ないじゃない。

やるんだよ!


「壮大な夢じゃ。1歳の赤ちゃんの言う言葉かのう」


ははは、見ていてくれこの大陸から争いを無くしてやる。先ずはその第一歩として、饗談には引き続き周辺国の情報収集をお願いするよ。


 「戦の無い世の中になるのは良い事じゃ。まぁ主の実力を側で見させて貰おう」

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