無頼漢たちの流儀★
https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16818023211788308647
二体の “
パワーファイターの男型は頭部を綺麗さっぱり破砕され、鋭い動きから蜂のような攻撃を繰り出す女型は、頭部どころか上半身が粉微塵です。
初見時には大苦戦した
「初期型のゴーレムなど、錬金術師の頂点に立つ “時の賢者ルーソ様” の作品であるわたしの敵ではありません」
バラバラになった彫像たちを見下ろし、いつになく気負うトキミさん。
錬金術師の手で生み出された者同士、いろいろと思うところがあるでしょう。
「トキミのお陰でやっかいな敵があっさり片付いた。だが問題はこの先だ」
隼人くんの視線が “金塊貯蔵庫” の床に穿たれた
引き締まる横顔。
それも当然でした。
なぜならこの隧道は前回の探索で崩落して、完全に埋まっているのですから。
そうなのです。
今回の第四層・第三次探索の最大の問題は、この “金塊貯蔵庫” から “鏡の間” へと抜ける隧道が使えないことなのです。
第二次探索でせっかく “時の賢者ルーソの店舗 兼 研究室“ の
事前のラーラさんたちとの話し合いで対策が検討されましたが、
・自警団から大人数を送り込んで、新たな隧道を掘るか。
・安西さんが “
それぐらいしか思い浮かびませんでした。
前者は、徒歩でしか辿り着けない地下四階の、複雑な警備装置を備えた信託銀行。さらには都度復活する金庫番の存在を考えると、実現可能とはとても思えません。
拠点のすぐ近くの崩落を撤去するのとはわけが違うのです。
後者は、それに比べればまだ実現性はありますが、“転移” の呪文を習得するにはレベル13、
また仮にそこまで強くなれたとしても、必ずしも習得できるとも限りません。
呪文や加護には使用可能なレベルに到達しても習得できない
「ヤカン先生の言ったことが本当なら、通れるようになっているはずだけど……」
田宮さんが煮え切らない表情で漏らしました。
結局妙案が浮かばなかったわたしたちは、
https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16818023211709059274
大量のお布施を請求&受けとった、ホクホク顔のヤカン先生曰く、
『
「あのヤカン、どうにも信用できねえんだよな。守銭奴だしよ」
「あれでも情報を売る商人だ。商人は信用を売る。逆に信用できる」
早乙女くんと五代くんでは性格同様、ヤカン先生への評価も真逆なようでした。
そして、ここでは五代くんが正しかったのです。
ヤカン先生の言葉どおり崩落で埋まっていたはず隧道はすべての瓦礫が撤去され、再び通れるようになっていました。
「邪悪な迷宮支配者は、次なる犠牲者を召喚して新たな盗賊に仕立てたのでしょう。再び “黄金の夢” で狂わせて、新たな犠牲者――わたしたちを待ち受けるために」
言いようのない怒りに、声が低まります。
防護巡洋艦『
「俺たちは犠牲者にはならない。前回も今回もだ」
隼人くんの決意に満ちた言葉を合図に、わたしたちは隧道に入りました。
頭上に注意し、慎重に進みます。
前回のように崩落の気配はありません。
わたしたちは何事もないまま “金塊貯蔵庫” から次の
驚くほど透過性の高い壁で構成された、“
複雑な円盤操作で経路を開く “ジグルルーの信託銀行” と同様、初見時には大いに苦戦した区域です。
しかし今は、安西さんが苦労を重ねて描いた地図があります。
先陣を切る五代くんは、彼女が広げた羊皮紙を一瞥して記憶を確かめると、あとは用意してきた顔料で目印を付けながら、迷うことなくパーティを導きました。
古強者の迷宮探索者に同じ仕掛けは、二度通用しません。
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https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16818023211788879325
『『『
我は大河。
あらゆるものを彼方へと運び去る者。
その流れは
波立たず、逆巻かず、
世界をあまねく押し流す者なり。
我は生を呼ぶ者。
我は死を招く者。
我はその両者を見守る者。
我は大河。
されど母なる海にはたどり着けぬ河。
我は永遠に流れ続ける
――答えよ、我とは?
』』』
「それは
『『『汝の答え、偉大なり!』』』
門番を務める骨の “トーテムポール” が満足げに叫ぶと、直後に光の粒子となって消え去りました。
「この先にご主人様がおられるのですね」
「ああ、この先が “ルーソの店舗 兼 研究室” だ。そこの回廊をぐるっと回った先に、真ん中に骸骨がはめ込まれた(気味の悪い)扉があってよ。その奥にいる」
「“霧の湖” で手に入れたと仰った鍵で開くと良いのですが」
「“骸骨の鉄扉” に “骨の鍵” だぞ。開くに決まってるさ――な、枝葉?」
どこまでも前向きな早乙女くんはトキミさんの不安を笑顔で払拭すると、わたしに話を振りました。
「そうですね。符号は合っています。
微苦笑を返すしかありません。
パーティは進みます。
店舗をぐるりと囲む回廊を、
前回開くことができなかった、巨大な頭蓋骨が埋め込まれた鉄扉です。
「ついにきたな」
人間にしては大きすぎる異形の
「はい」
万感を込めてうなずきます。
この扉を通ることができずに、みんなが多くの辛い思いをしました。
それは成長の糧と認めるには辛すぎる経験でした。
「覚悟はいいか?」
隼人くんが最後の確認をします。
もちろんここまできて
隼人くんは全員の意思を確認すると、わたしに扉を開けるように指示しました。
わたしは進み出て、“骸骨の鉄扉” に “骨の鍵” に差し込み、回します。
合わない鍵を差し込んだときの違和感はありません。
直感しました。
この鍵は合っている――と。
施錠が解かれた心地よい手応えがあり、軽やかな解錠音が響きました。
“ようこそ、ルーソの部屋へ”
髑髏がウィンクをして告げると、扉はひとりでに開きました。
そしてわたしたちは、ついに “時の賢者ルーソ” 様を見つけたのです。
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https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16817330669244057777
誰もが無言で部屋の中央に建つ、苔むした墓を見つめていました。
「ルーソの墓
過去に旅し、過去に挑み、過去に敗れた役立たず、ここに眠る
訪れし者に教訓を遺す
わたしは刻まれた墓碑銘を読み上げました。
絶望の墓碑銘を。
「……なんだよこれ……――なんだよ、これっ!!!」
早乙女くんが怒号しました。
「こんなのってあるかよ!!!」
「……ご主人様は亡くなられていたのですね」
感情の失せた声で、トキミさんが呟きます。
「ふざけるな!!!」
「落ち着け」
激高のあまり墓石を蹴りつけかけた早乙女くんを制したのは、五代くんでした。
「男一匹、簡単に物狂うな」
「なんだと!!?」
「冷静になれ。こいつはフェイクだ」
五代くんに全員の視線が釘付けになります。
「ヤカンの言葉を思い出せ。ルーソは生きてるって野郎は言った。あいつは守銭奴のクソだが嘘は吐かない。あの隧道は通れるようになっていたのが証拠だ。奴には金をもらった上でガセネタを渡すってロジックがないんだ」
「それではご主人様は生きておられるのですか!?」
「ああ、あんたのご主人はとんだ食わせ物だな。巧妙に偽装して身を隠してやがる」
「でもいったい誰から? いったいどこに?」
重苦しい空気は吹き飛び、会話が加速します。
トキミさんが驚嘆し、安西さんが早口で問い詰めます。
「さあな。おおかた “邪悪な迷宮支配者” あたりじゃないのか。隠れ家までは――」
わかるものか、と肩を竦める五代くん。
「――ならば探索です。迷宮を端から端から踏破してすべての
進むは、闇。
待ち受けるは、死。
立ち向かうは、絶望。
そして目指すは、一筋の光。
それがわたしたち、迷宮無頼漢の
全員の瞳に再び、強い光彩が宿ります。
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これにて、地下四階の探索は終了
来週からは、『推しの子迷宮 ~第三回配信~』が始まります
そしてスピンオフが終わったら、エバたちが挑むのは地下五階
そこは迷宮に築かれた究極のテーマパーク
ズンチャッチャ♪
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★スピンオフ第二回配信・完結しました
『推しの子の迷宮 ~迷宮保険員エバのダンジョン配信・第二回~』
https://kakuyomu.jp/works/16817330665829292579
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プロローグを完全オーディオドラマ化
出演:小倉結衣 他
プロの声優による、迫真の迷宮探索譚
下記のチャンネルにて好評配信中。
https://www.youtube.com/watch?v=k3lqu11-r5U&list=PLLeb4pSfGM47QCStZp5KocWQbnbE8b9Jj
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