第13話 規格外な奴ら

 さて、移動用の飛龍に跨がってザリチェ軍のいる駐屯地まで向った二人は、軽い乗り物酔いに襲われていた。

「ううっ、空を飛んでいるっ」

「揺れ方が馬と違うんだよなあ」

 そんなことを言いつつも、利家と慶次は飛龍を乗りこなしている。それに、案内役として同行している悪魔のベールは、どうなっているんだと呆れていた。

(普通は飛龍に初めて乗って、こんな簡単に操れないはずなのになあ)

 そう思っているが、すでに城に大穴を開けたり爆音を鳴らしたりしている二人だ。通常とは違うと思って黙っている。余計なことを言って不興を買い、試し斬りされては困るしね。

「あれです」

 そんなことを考えている間に駐屯地へと到着していた。砂漠にあるオアシスを囲むように陣が張られている。

 飛龍が舞い降りると、甲冑を纏うがっちりとした体格のザリチェと、小柄な副官のオケアニスがやって来た。

「おや、戦場に女がいるのか」

 慶次が副官のオケアニスを見て、意外だと驚く。

 ポニーテールにした長い黒髪のオケアニスは、軍服を纏っているものの、ぱっと見では戦場に似つかわしくない、戦闘的には見えない人物だった。

「能力があるものは誰でも上に立てるのが魔界だ。女だと舐めていると痛い目を見るぞ」

 それに対し、ザリチェはこれだから異世界人はと鼻で笑う。

「へえ。じゃあ、手合わせを願おうか」

 しかし、慶次はそんな異世界人の中でも異質だった。戦えるっていうならば手合わせしようぜと言い出す。

 それにザリチェは驚いた。今までならばさらに何か言ってくるか、馬鹿にするかという態度だっただけに、これは意外だった。オケアニスの戦い方を見るまで納得しないというのが今までのパターンだというのに、あっさり認めて実力を知ろうなど、本当に初めてのことである。

「試合をしようというのか?」

「戦えるんだろ。じゃあ、武将として対等に扱うのが妥当じゃねえか。言っておくが、女ってのは基本強いからなあ。俺にとっては戦場にいるのが珍しいってだけだよ。叔父貴の奥方の松殿なんてもう、強いのなんの。正面から戦えば、そりゃあ男だし力で勝てるだろうが、そうじゃない場合は負けるね、確実に」

「おいっ」

 話が松に飛び火して、利家は速攻で注意。ここにいないからって、何を言い出すんだ。

「そうなのか。少なくとも他の異世界人と考え方が違うというのが解ればいい。試合はまた時間のある時にやってくれ」

 ザリチェは自分の部下を馬鹿にされるのが嫌なだけだ。ちゃんと副官と認めてくれるのならば、こちらとしては何も言うことはない。

「しかし、解らんことばっかりだな。砂漠ってのも初めて見たが、だたっ広い上に意外と起伏が激しいんだな。こりゃあ、色々と面倒そうだ」

 利家はそれよりもこっちの戦い方を知るのが先だよと、話を戻した。

「行軍するのは難しいのは間違いない。だから基本は空での戦いになる。下にいる軍は後方支援、魔法での支援がメインとなる」

 乗ってきた飛龍が馬の代わりになるのだと、ザリチェは説明した。それに利家はなるほどねと頷く。

「どうりで乗り方が馬と同じはずだ。飛ぶって以外は同じなんだな」

 利家はふむふむと納得。

 しかし、ここまでの一連の流れを見ていたベールは

「とんでもねえ奴らだ」

 ぽんぽんと話が進むことに呆れてしまう。そして、思念波で凄い奴らですよとベリアルにすぐ報告を入れるのだった。

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