第14話 S級超えの魔力

 利家たちが南の駐屯地に到着した頃。城では隆景が魔術の使い方を教わっていた。

「滅却!」

 魔導書を開いて隆景がそう叫ぶと

「ぎゃああああ」

 試し斬り用に置かれていた下級魔物が一瞬にして炭になった。

「うわああ」

 それに隆景は思わずドン引き。魔導書と自分の言葉だけで殺せるのかと、その力の強さにおののく。

「凄いですね」

 それにサリエルは何でそんなにあっさり出来るんだと呆れる。何とも教え甲斐のない。あっさり使えすぎ。

「面白いな。俺にもやらせろ」

 で、何でもやりたがる信長。隆景から魔導書を借りると

「滅!」

 速攻で下級魔物を消し飛ばした。炭にすらならない。完全消滅だ。

「あいつもあいつで」

 とんでもない魔力だなと、サリエルはそれに呆然となる。

 信長を初めとして、異世界人たちの能力は誰もが桁違いだ。人間が決めた魔力ランキングで言えば、S級を軽く越えているだろう。

 それはすなわち、五人だけですでにこちらの軍力が桁違いに上がったということだ。

「魔界の統一、それだけでなく、中間世界に打って出ることも出来るかもしれないな」

 これだけの能力があれば可能だろう。しかし、この信長やその部下の下に自分たちが付くというのは腹立たしい話だ。ベリアルを蔑ろにしないか、それが気になってしまう。

 そうならないように、しっかりと自分が監視しておかなければならないだろう。これも信長の魂を引っ張り込んでしまった者の責任だ。ベリアルはぐっと拳を握り締める。

「おい。確か東や北にも敵がいるんだよな。呑気にしていていいのか?」

 そこに風魔大剣を使いこなせるようになった元親が戻って来た。よほどの大技を使ったのか、髪が乱れている。

「そうだな。なんせ十二人ぶっ飛ばさなきゃならんらしい。利家を向わせたから、あっちはすぐに戦を始めるだろう。次を考えないとな」

 元親の指摘に、信長も遊んでいる場合じゃなかったかと、魔導書を隆景に返す。

「ご自分で使えるのならば、私は要らないのでは?」

 隆景は魔導書を受け取りつつも、思わずそう呟いてしまう。

「馬鹿か。強い奴をわざわざ手放すわけがないだろう。聞こえてなかったのか。他とも戦をするんだ。さっさとその毛利の中枢たる頭脳を俺のために使え」

 しかし、信長は正論を言ってくれるうえに、考えろと命じてきた。それに隆景は溜め息だ。

「ノブナガ様にしても他の方にしても力が凄くお強いようです。それを他の魔王も敏感に察知していることでしょう。思った以上に動きは速くなるかもしれません」

 戦に関して話し合うというので、サリエルはそう進言しておく。すると信長は面白いと、にやりと唇を吊り上げる。

「東側は誰だった?」

「バエルという魔王ですね」

「そいつはどんな奴だ」

 信長は情報を教えろとサリエルに訊ねる。それに隆景も元親も真剣な目になってサリエルを見た。

 それだけで、こいつらが歴戦の戦士であることが解るサリエルはすぐに説明を始めた。

「バエルの軍事力はサタン王、そしてそれに次ぐ大国のルシファー王の次に強いと考えてもらって問題ありません」

「ほう。つまり十三人中三番目か」

「ええ。ですので、いくら皆さまが強いとはいえ、正面突破は得策ではありません」

「となると、北と一度同盟を結び、協力して倒すのが一番ですね」

 そう言ったのは隆景だ。常に同盟と破棄を繰り返す地域で戦っているだけに、そういう戦略には慣れている。

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