第8話 プラス効果が凄い

「も、戻れるんですね。それは助かります」

「小早川殿よ。何を小さいことで悩んでおられる。殿がこの魔界とやらで天下統一なさろうとしているのだぞ。力を貸すのは当然のこと。殿、この利家、武働きに励みます」

 利家は隆景の肩をバシバシと叩きながら、任せろと調子がいい。

「ふっ。お前ならばそう言うだろうと思って召喚したんだ。他は追々考えるとして、おい」

 信長はそこでサリエルを見た。サリエルは一体何だと顔を顰めてしまう。

 また無茶を言うつもりか。

「こいつらを若返らせることって出来るのか?」

「なっ」

 やっぱり無茶を言ってきたぞ。サリエルは固まってしまう。

「いや、むさいだろ。後、頭を使うにしても戦うにしても若い方がいい」

 信長は俺も見た目が変わったわけだしと、二人をじろりと見る。

 が、二人はささっと視線を逸らしていた。

 戦国武将あるあるだが、信長は男もいけるタイプだ。若返らせて、夜の相手に困った時にあれこれしようと企んでいるに違いない。

森蘭丸もりらんまるも召喚してくれねえかな)

 利家は心の底からそう思う。

 過去に色々とあったもんだ。

 織田家家臣団の一角を担う今となっては、記憶の奥底に沈めたままにしておきたい。

「出来ないこともないですが、その場合はこちらの世界の要素がプラスされてしまいますよ」

 二人の嫌そうな顔を見て、サリエルは面白そうだとそんなことを言う。

 この男もかなりの腹黒だ。

「面白そうだな。やれ」

 で、信長は面白いか面白くないかで判断してくれる。

 非常に困ったコンビの誕生だ。

「ちょっ、お待ちを」

「そ、そうですよ。こちらの若い奴を使えば」

「すべこべ言うな。サリエル、やってしまえ」

「了解しました」

「ちょっ」

「ぎゃあああ」

 二人の訴えも虚しく、魔法は発動されてしまうのだった。



 ≪小早川隆景、前田利家の若返りに成功。人間年齢二十歳。プラス効果として、小早川に黒魔術、前田に雷属性が付与されました≫


「なぜ、そこまで強くなるんだ」

 魔法を行使したサリエルが困惑しちゃう、そんなレベルアップだ。

「うおおおっ、若返ってる」

「ってか、見た目が微妙に南蛮人っぽくなってる」

 さっきまで五十代のおっさんだった二人は、互いの顔を指差して驚きまくっていた。

「よし。これでむさ苦しさは軽減されたな。お前らもこっちの服に着替えろよ」

 そんな二人を眺めて、俺だけ変化したって状況は脱出したなと嬉しそうだ。

 意外にも、信長は自分が悪魔スタイルになったことに納得していなかった。

 だって、元は日本人だもん。

 そこに戦国武将そのままの二人がいては気分がよくない。

 こいつらも変化してこそ、こっちでの天下取りも成り立つってもんだ。

「はあ。そのしゃつとかいうものに、ですか」

 利家は着たことないんですけどと困惑顔だ。

「見たことはありますけど・・・・・・はあ」

 隆景もどうしたものかと思っている。

 しかし、二十歳に若返ったことと、南蛮人っぽい要素がプラスされてしまったせいで、着物の丈があっていない。着替えるしかないのだ。

「じゃあ、着替えてこい。サリエル、シャロンを呼んで手伝わせろ」

「はい」

 もう好きにしてください。

 サリエルは従順に頷くと、まだまだ戸惑う二人を別室に案内するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る