第4話 家族がチート過ぎた


翌日、ティアナさんに狩りのことは話せていない。

少し罪悪感を抱きながら村長の家へ向かうヴァンとティオ


「こんにちわー!」

「どうもー」


「おぉ、来たか、相変わらずティオを元気がいいな!がっはは!」


ティオは年中ずっと元気だ。

だが今日ばかりは俺もテンションが上がっている、なぜか。

それは、魔法が使えるかもしれないからだ。これでテンション上がらないやつなんか居ない。ワクワクが止まんないぜ!はっはっは!


「それで!早く教えてよ!」

「教えてよー!」


「まぁ待て、とりあえずこれでも読んでおきなさい」


そう言って渡された本

というか幼児向けの絵本


『まほうのきそ』


手作り感満載の可愛らしい絵本だ。


内容はイケメンのラディという村長似の青年が賢者や聖女と出会い

王国のお姫様、ティーオ姫に頼まれ

悪の化身「大魔王」を倒すべく冒険をし仲間と助け合い世界を救うお話


そして物語の最後にはティーオ姫と結ばれていた。




は?




8割どうでもいい情報だった……

え、これ村長が書いたの?

ってかティーオ姫ってなに!?!?

もしかしてティオのこと!?


許さんぞ…

ティオは俺の姉であり妹だ!

だれにもやらん!!!


あのロリコンめ、いつかコ〇ス!



少し感情が荒ぶったが大切なことは序盤に書いてあった。

つまり魔法とは、

体内であれ体外であれ魔力というものを使い自然現象に干渉することのようだ

魔法を行使するのに重要なのは

「想像」と「理解」である

だが自然とは広大で生物が理解するには強大すぎる力だ、そこで歴史の偉人たちは自然現象を大きく分類することによって人々に理解しやすくしたそうだ

その分類とは、

火、水、土、風、雷、闇、光の7種類

その内、光と闇は特殊で5属性に分類されない現象が主に含まれている

そして

各属性に適性があったり、種族により得手不得手がある

1属性習得するのも難しく

一般的に魔法使いと呼ばれる者たちは

2属性持ちが多い

3属性で優秀

4属性で天才

5属性以上は英傑と呼ばれる存在たちになる


というわけらしい


「むむ、このお話つまんない」

「あはは、わかる。これ村長が書いたのかな」

「え、村長が!?」

「たぶん…主人公がラディって名前だし」

「あ、ほんとだー!でも村長こんなに細くないよ?もっとゴリゴリって感じ」

「ふっ、たしかに….」


そう、村長は狼人族なのにゴリラなのだ

笑える。


「お話はともかくティオは魔法のこと分かった?」

「うーん、よくわかんないけど

お水さんでろ!って考えたらいいってことなのかな」


凄くはしょっているが要はそういう事だ

どんな魔法を行使するのか、その魔法はどのような自然現象なのか。


想像だけでも理解が足りなければ行使できない。

理解だけでもイメージが明確になければ行使できない


魔法とは奥が深そうだ…




「どうだ?わかりやすかったろ」

「「…………」」


村長、ドヤ顔である。

ロリコンは許せないが見た目とのギャップの残念さが面白い…

残念村長…これから心の中でそう呼ぼう。


「よし、魔力ってのが大切だってことは理解したか?」


「したよー」

「はい」


「それじゃあ、魔力を感じることは出来るか?」


「うーん、よくわかんない!」

「僕も」


「では今から体内にある魔力を感じてもらう。手を出せ」


村長が両手を俺たちに差し出す

それを2人で片方ずつ握り返す


「もう片方の手でお前たちも手を繋げ」


言われた通りティオとも手を繋ぐ

3人で大きな輪ができた


「今からヴァンに魔力を少しづつ流す、何か感じたら言ってくれ」

「わかりました」


目を閉じ感覚を研ぎ澄ませる

すると村長の……残念村長の方から暖かい何かが流れ込んでくるのがわかる


「あ、なんか来ました」

「感じるのが早いな、ではそいつを自分の中で動かせるか?」


この暖かい何かを動かす…


全然動かない


え、動かないんですけど!!


「う、動きません」

「がっはっは、そりゃはじめから簡単に魔力を動かせちゃ苦労しねぇぜ」


ムカつく。


10分経過

動かない。



30分経過

動かない。



1時間経過

動かない。



そのうちティオは飽きたのか手を離し、残念村長が持ってきた本を読んでる


動かそうとするだけでものすごく疲れる

汗が垂れてきて目にしみる



「そろそろ休憩だ、どうだ?きついだろ」



にやけ顔の残念村長


「ほんとに動くんですか?うんともすんとも言わないんですけど」

「ははっ、私がヴァンに送ったのが証拠だ、魔力は体内で動かせる。慣れれば身体の中で自由自在に動かせるしこねくり回せる」

「むむむ…」

「とりあえずお前さんは休憩だ」

「はーい」


納得いかない


「ティオー、次はお前だ」

「はーい!やっとぉ?待ちくたびれちゃった」

「へん!そんなこと言えるのも今のうちだよめちゃめちゃ疲れるんだよこれ…」

「えーそうかなー?」


転生者の俺でさえそうなんだ、前世での創作物に出てくるようなファンタジーを知っているからこそ理解は早いはず。

そんな超常の力をあまり知らないティオは俺以上に苦労するだろう


とそんなことを思っていたら



「できた!」



え?



「ヴァンー、できたよー」



ほ?



残念村長を見ると目と口を大きくあけてアホになっている

あの様子を開いた口が塞がらないというのだろう


楽しそうに魔力を動かすティオ

(見れないのでよくわからん!)


「村長、ティオできたんですか?」

「…………」

「そんちょー?」

「……………」


ダメだ、フリーズしてやがる


「村長!!、おーい!聞こえてますか?

そんちょー?残念村長ー?ロリコン村長ー?」

「誰が残念村長だ!?」

「あ、起きた」

「………あ?あー、なんだ?」


びっくりしすぎて聞こえてなかったみたい

なのに残念村長には反応したのか…

前に誰かに言われたのかな?


「で、村長、ティオはできたんですか?」

「あ、あぁ、1発で魔力を動かしていた」

「…………まじっすか」


割とショック。


「えー、でも簡単だよ?」


ナチュラルに抉ってくるぜ…


「村長!休憩おわり!ほら、やるよ!」

「あ、あぁ、そうだな」



2時間経過

少し動いた………かな?




「だぁぁぁぁ!!!できん!」

「ヴァン、がんばれー」

「くっ……ね、ねぇ村長もっと手っ取り早い方法ないの?」

「ふむ、あるにはあるが…」

「え、あるの!?なんだ先に言ってよ!」

「あぁ、だがティオは習得したし期間も1週間しかないからな、これ以上時間はかけられんかもしれん」

「でしょー!その早いやつやろ」

「分かった、少し荒療治だぞ?」


再び手を取り合う村長とヴァン


「すー、はー、……フンっ!!!!」

「あがっ!?!?!?!?!?」


途端に目の前が真っ白になる

鈍器で頭を殴られたみたいにくらくらする。


「ヴァン!?」


急に倒れた俺を心配してかティオが走ってくるのが見えたのを最後に視界が暗くなった





「……知らない天井だ」

「あ、ヴァンおきたー、何言ってるの?」

「ティオか、ここどこ?」

「そんちょーさんの家だよ」


周りを見渡すと確かに村長の家だ

俺は今ソファに寝かされているらしい


「お、起きたか、どうだ調子は」

「うーん、普通?」

「はっは、そうか」

「…で、何したんですか?」

「魔力をな、一気に送り込んだんだ」

「ほー」

「自身が知覚できる魔力を大幅に超えた量を体内に流されると意識が飛んじまうことがあるんだ」

「……」

「ほれ、だから今はお前さんの身体に魔力が溢れてるだろ?」


言われて気づく

先程感じていた暖かな何かが身体中に感じる


「それが魔力だ」

「これが……」

「今ならできるだろ、その魔力を集めたり外に出したりしてみろ」

「ん」


魔力を動かしてみる


(おぉ、できた)


「出来ました」

「おう、感謝しろよ?」

「出来れば荒療治する前に説明して欲しかったです…」

「お?そうか?そりゃすまん」


この残念村長め


「ティオー、続きをするぞ」

「はーい」


村長がどこか見た事のある推奨を奥の部屋から持っていた

2人の前にたちニヤリと笑う


「次にするのは、才能の確認だ」

「「才能?」」

「これは鑑定晶と言ってな、手をかざし魔力を込めると自分の技能だったり適正魔法、潜在能力なんかが見れるもんだ」

「へー」

「………(ゲームみたい)」

「生まれ持ったもんだから適正魔法や技能がなくてもしょげるなよ?」

「「はーい」」

「どんな技能があったらいいの?」

「ん?そうだな、剣術だったり弓術なんかが有名で強いな。魔法を使うなら

珍しいが魔力増大がいいらしいぞ」

「へー」

「その中でも特に珍しいのが固有技能だ」

「固有技能?」

「あぁ、そいつだけの特別な技能だ。

普通の『技能』か『固有技能』かは感覚で分かる。しかも持っているのはほんのひと握りの存在だ。

それこそ伝説の『勇者』様だったり『賢者』様や『聖女』様だな」

「「おぉ!」」

「まあ、そんな伝説上の固有技能なんて夢のまた夢だ。………ただの固有技能でさえ珍しいんだからな」

「あったらすごいね!ヴァン」

「そうだね、なんかわくわくするね」

「はっは、期待するだけならただだからな。じゃあ、ヴァンから鑑定晶に手をかざして魔力を込めてみろ」


魔力を込めるため手をかざすと鑑定晶が強く光り出した。いきなりの事で目を細めてしまうが、突如頭の中に情報が浮かんでくる


「あ、固有技能あったかも」



「え!?ほんと?」

「へ?」


村長がすっとんきょうな声を上げて阿呆の顔になり、ティオは輝いた笑顔でこちらを見てくる


「ヴァン、どんなのがあったのー?」

「うーん、『料理人』?ってやつ」

「料理人!?すごい!もしかして美味しいご飯とかつくれるのかな!もしそうならお母さんのお手伝いもできるし!いいなー」

「うーん、でもなんか微妙じゃない?」

「じゃあ、次はわたしね!」


ティオが鑑定晶に手をかざすと、俺の時より強く眩く光り始めた


「あ、わたしも固有技能あるみたい」



「おぉ!さすがティオ!」

「…!?!?………………」

「どんなのだった?」

「うーんとね、『賢者』ってやつ!」



伝説はここに居ました。



うちの家族でしたの。おほほ。



まじか!?!?!?




「賢者?なんかすごそうだね………」

「そうなのかな」

「うん!きっとすごい技能だよ!さっき村長さんも言ってたし、これで2人とも固有技能あったってことはお母さんの役に立てるかもね」

「うん!早く家に帰ってお母さん教えてあげなきゃ!」

「だね!あ、でも大丈夫かな?」

「なにがー?」

「うーん………まあ、いっか」

「ん?」

「村長、そろそろ帰りますねー」

「かえりまーす!」



返事はなかった。




ステータス

 名前:ヴァン・フォン・フレスヴェルグ

 種族:人族

Lv : 1

 魔法:なし

 技能:なし

固有:『料理人』Lv1

・保存庫

・刃物装備時攻撃力up

•撹拌調理



ステータス

 名前:ティオ

 種族:狐人族

Lv : 1

 魔法:なし

 技能:獣化、魔力増大

固有:『賢者』L1




その日、月が空の真上に上がる頃まで

村長は固まったままであった。

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