第3話 友達作りって難しいね




「ぼく、ヴァン、6歳!」


「「「…………」」」


「悪いスラ…人族じゃないよ!」


「「「………い、行こうぜ」」」


3人の獣人の男の子たちが気味悪そうに俺を避けて遠ざかっていく。




ぼく、ヴァン、6歳!

現在、盛大にスベッて友人作りに失敗しました。泣きそう、ぐすん。



「ヴァンー、何してるの?変なことしてないで早くそんちょーさんのとこ行くよ」

「……変なことって、ぐすん。」


無神経におれの傷口を抉る美少女

銀色の髪にちょこんと2つの獣耳

母と同じ蒼色の透き通った瞳

少しつり目で気の強そうな容姿

名をティオという。

とある事情で育ての親になったティアナさんの実の娘だ


「ほら、早く行かないと置いてくよー」

「あ、待ってよティオ!」





齢0歳にして親に捨てられた俺

あれから6年ティアナさんに助け育てられ立派に成長しました


そして今日は初めて村に来た


なぜ6年も住みながら初めてなのか

それは俺は人族だからだ


この世界には様々な国があり

その中でも「人族至上主義」という考えの人族がいるらしい


(ケモ耳とか最高じゃん、なんで迫害とかするかな、頭沸いてんのか?)


そしてこの村は狼人族の村

過去に人族から酷い仕打ちされた者や家族を殺された人もいるらしい

家が村外れにあることも相まって今日まで村に来ることはなかったのだ


ティアナさんの家が村外れにあるのは

彼女が狐人族だかららしい

獣人族は元来あまり交流のない閉鎖的な種族みたいなので狐人族のティアナさんも少し浮いた存在だったなんだそう



そんなこんなで村長の家に到着



「こんにちは」

「こんにちわー!」


建物に入ると筋骨隆々な身体に目元に傷の入ったイカつい狼人族の男がいた


村長だ


「おぉ、よく来た2人とも」


笑顔で俺たちを迎えると2人の頭を撫でてくる


「えへへへー」

「…どうも」


「がっはっは、相変わらず可愛いなティオは!……ヴァンはもっと愛想よくせい」


(余計なお世話だ…俺はティアナさん一筋なんだ、ゴツイおっさんに撫でられてもうれしくないやい!)


「そんなことより早く教えてよ!」


村長のラディルクさんはティオや俺を昔から孫のように可愛がってくれている

ティオにはまあ…デレデレだ

かくゆう実は俺も嫌いではない。

人族嫌いの多い獣人族だが例外入る

それは王国出身や王国近辺の村で育った者たちである

王国は「人族至上主義」の帝国と違い

獣人族の貴族もいるような差別のない国らしい

更には人族より肉体が強靭で身体強化の魔法を得意とする獣人族は「冒険者」となって活躍してると聞いた

王国バンザイ。


閑話休題



そう、「魔法」



この世界には魔法があるのだ!!



そして今日は待ちに待った魔法を教えて貰うために村長の家に来たのである!



「まあ、焦らずとも座りなさい」

「「はーい」」


2人ともワクワクしながら今日という日を待ったのだ

ティアナさんが家で簡単な魔法を使い家事などをしているが危険だからと教えてもらったことはない


「さて、この村では10歳になれば仕事は割り振られる、主に畑仕事だ。君たちはこれを知っているか?」

「「はい」」

「うむ、そして君たちは未だ6歳になったばかり、仕事をするにはまだ早い、それもりかいしているか?」

「「…はい」」

「だがそれを通してでも働きたいと?」

「「……はいっ!」」

「なぜか、聞いていいか?」


ラディルクさんの鋭い眼光が2人を刺す

ティオは少し震え涙を浮かべるが必死に耐える。質問には俺が応える


「…母とティオのためです」

「………」

「母は女でひとつで僕たちを育ててくれています、村のでの畑仕事、でもそれだけじゃ足りないから休みの日には森へ狩りに出かけてます。それでも母は一生懸命僕たちを育ててくれています…

僕たちが元気でいられるのは母のおかげです、でもそのせいで最近は体調を崩しがちだしティオとの時間も少なくなってきてます、そんな母を助けたいです…」


「…ふむ」


「でもまだ僕たちには力がないです

なので魔法を教えて欲しいんです!」


「……」


「お願いします!」


「……」


「ティ、ティオも!お母さんを助けたいです!お願いします!」


怖かったのだろう、ラディルクさんが睨むから…だがそれを我慢して必死に涙を滲ませ頭を下げるティオ


「…………」


「「お願いします!!」」


「……………うむ、君たちの意思はわかった、私もティアナには無理をして欲しくない、だが…」


ラディルクさんの言葉を聞いてまだ話している途中だというのに途端に元気になる2人


「わぁぁぁぁい!」

「よしっ!」

「「ありがとうございます!」」


「ま、まて!2人とも、魔法の件は許可をしよう、だが魔法を覚えたいということは畑ではなく狩りの方を手伝いたいということであろう?」

「「はい!」」

「ならばそちらはティアナに許可を貰わねば許すことは出来ん」

「「え」」

「当然であろう、狩りは命懸けだ

母の気持ちも考えてみよ、幼い我が子を命懸けの仕事に行かせるのがどれほど心配か」

「「………」」

「魔法は教える。だが母にも君たちの意思伝え許してもらわねば狩りは許可できん」

「………わかりました」

「………はい」

「うむ、では明日から1週間みっちりと魔法と鍛錬だ!」

「「はい!」」



村長の家を出て家路につく

一応、許可は貰えた。だが最大の難関ティアナさんがまた残っていて素直に喜べない2人だ


「が、がんばろうね、ヴァン!」

「うん!」


1人なら心細いだろう

でもこっちは2人だ、ほぼ生まれた時からずっと一緒に育った2人

怖いものなんてない!!たぶん!

きっと……だといいな…



「あら、ティオ、ヴァンおかえりなさい」


家に着くと美味しそうな匂いがする

台所からティアナさんが顔をのぞかせる

幸せな光景だ。


「ただいまー!!」

「ただいま」

「元気ねー2人とも」

「えへへー」

「今日はラディルクさんのとこに行っていたんでしょう?どうだった?」

「「…ぎくっ」」

「あら、どうしたの?」

「「ううん、なんでもない!」」


「あらあら、お母さんに隠し事かなー?」


リビングに入るとマーサさんが居た


「マーサさん!こんにちはー!」

「あ、マーサさん」


「ふふ、えぇ、こんにちわ、1週間くらい会ってなかったけど元気にしてたかい?」

「「うん!」」

「そうかい、そりゃいいさね」


マーサさん

ふんわりとした茶髪の狼人族のおばちゃんでラディルクさんと同じく人族に偏見のない人だ

マーサさんはティアナさんがここに住み始めてから何かと世話を焼いてくれる気のいいおばちゃん

ちなみに、2児の母でティオのお産に立ち会ったのもこの人だ


「じゃあそろそろ家に帰るさね、ティアナちゃん無理しちゃあいかんよ?」

「ありがとうございますマーサさん、大丈夫です!母は強しですから!」

「そうかい、2人ともお母さんの言うことはちゃんと聞くんだよ?」

「「はーい」」


そう言ってマーサさんは家に帰っていった


「さて、ティオ、ヴァンご飯にするよ、手を洗ってきて」

「はーい」

「わたしの手綺麗だよ!」

「ティオ、またそんなこと!いいからヴァンといってきなさい」

「………はーい」


ティオは手洗いを面倒くさがり母に怒られる、いつもの光景だ


「それじゃあ、いただきます」

「「いただきまーす」」


前世の習慣でご飯の前に手を合わせていたらティアナさんが気に入って、今では我が家の当たり前になっている


今日の献立は

クズ野菜のスープに黒パン

デザートのリンガ

リンガとは味は林檎で見た目は洋梨の不思議果物だ


「ヴァンは今日はじめての村だったわね、どうだった?」

「…ぐっ」

「どうしたのヴァン?」

「………(友達作ろと張りきったら気味悪がられたなんて言えない)」

「あのねあのね!ディル達に変なこと言ってた!そんで変な目で見られて無視されてたよ!」

「ティ、ティオ!なんで言うんだよ!」

「え、いいじゃん、お母さん聞いてるんだし。でもなんでヴァンのこと変な目で見てたんだろーね」

「あらあら、うふふ、ヴァンも大変ね

大丈夫よ、これから少しずつ仲良くなっていけば。私だってマーサさんや村の奥さんたちと仲良くなれてるんだもの」

「…………はーい(慰めが逆に辛いやつ)」


天使のような笑顔で俺を慰めるティアナさん、マジ天使。1周まわって天使すぎる


そんななんでもない会話をして1日が過ぎていく。こんな日が毎日続くといいな

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