第2話 狐耳のお姉さまに拾われた
知らない天井だ…
目が覚めると俺は小さめのベッドに寝かされいた
………あれ、生きてる?
状況がうまく飲み込めないが
どうやら俺はあの獣から生き残ったようだ…
生きていることに安堵し、自身が包まれている布を握りしめる
恐怖から抜け出せ安心したせいか
目頭がツンと熱くなり、次第に涙が出てきた、ここは素直に赤ちゃんらしく大声で泣こう
周りなんて気にしない、親に捨てられ俺はもう1人なんだ。せいぜい俺の一世一代の泣き声で鼓膜を震わせるがいい!
そう思い立ちいざ尋常に…
空気をたくさん吸う
(せーーーーのっ!)
「おぎゃya………」
「おぎゃあぁぁぉぁぉぁぁぁ!!!」
(!?!?!?!?!?)
うまく泣けなかった、
いや、正確にはいざ泣こうと声を出した瞬間すぐ右隣から俺ではない泣き声が盛大に響いたのだった
「おぎゃぁぁぁ!!」
隣を見ると俺と同じくらいの赤ちゃんが
手足をばたつかせ暴れていた
「あらあら、ティオったら」
泣き声を聞いて来たのか部屋に1人の女性がやってきた
(!?!?)
驚愕。
部屋に来た女性はとても美しかった
長い白髪、蒼色の透き通った瞳
スラッと細く滑らかな四肢にあまり主張の激しくない、かといってそこまで慎ましくもない綺麗なおっ……おっぱい!
すご!何この美人!
だが驚いたのはそこではない
俺の見開いた目には彼女の頭の上にある2つの耳?のようなものに釘付けだった
……ネコ耳?
そう、その女性の綺麗な白髪の頭部からネコ耳?のようなものがはえていたのだ
「どうしたのティオ、お腹すいたの?」
彼女は隣の赤ちゃんを抱きかかえあやしはじめた
腕の中が心地よいのか段々と泣きやんで
わきゃわきゃと笑顔になるティオと呼ばれた赤子
「あら、あなたも起きたのね」
「うふふ、元気そうで良かったわ」
まじまじと2人を見つめる俺に気がつき
安堵の表情で俺を撫で始める。思わず目を細め笑顔になる
そして俺はまるで母に抱かれていた時のように心地よい気分になり、再び目を閉じ眠りについた
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ティアナside
獣人の女性、ティアナは自らの腕の中ではしゃぐ元気な娘、ティオと同じ歳の頃だと思われる男の子を見て顔が綻ぶ
(それにしても狩りに出掛けた先で人間の赤ちゃんを拾うとはね)
とある事情でフルーハ山脈の麓のこじんまりとした家で暮らす彼女
夫はいない。
だが優しい隣人の助けもあり1人でも平穏に暮らし先日娘が生まれた
娘が産まれるまであまり動けなかった分最近は張り切って狩りに出掛けている
少し張り切りすぎで人族の住む街の近くまで訪れたおりに、滑らかな肌触りの光沢のある布に包まれた赤ちゃん見つけ思わず連れ帰ったのである
(ヴァンくんね)
拾った赤子を包んでいた布に手紙と数枚の金貨が挟まっており
その手紙には子を思う母の頼みが書かれていた。
「名前はヴァンくん、貴族に生まれたけどお家事情で死んだことにされたと」
ティアナはヴァンを見てそっと頬を撫でる
「詳しいことは分からないけれどあなたの母はあなたを愛しているわ」
ティアナも娘を必死の思い出産んだこともあり、手紙に書かれた子を思う母の気持ちに共感し、ヴァンを育てることに決めた
「よし!、そうと決まればマーサさんに相談しなきゃ!」
ティアナは嬉しそうにティオとヴァンを見つめ部屋から出ていくのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます