捨てられた皇太子、国を興す。

@mixineru

第1話 そして捨てられた。


鳥の囀るこえに穏やかな風

木々の葉音に好きなから射し込む陽の光

森の優しい匂いがして自然を肌で感じる

田舎でスローライフ送るならこんなとこがいいな…



俺は今現実逃避をしている…



俺こと、ヴァン・フォン・フレスヴェルグ

転生したみたいです。いえーい!



そして…



捨てられました。



実の親と思われる存在に……



え、ちょ!まっ!どゆこと!?

待って待って待って!現状が理解出来ない。

いや、したくない…

まじで、どうなってるのこれ!?

こんなとこに置いてかないでー!!!!



時を遡ること数時間前



「皇帝陛下、元気な男の子ですよ!」

「これが我が子か」


自分の身体が誰か抱かれる

暖かくなんとも落ち着く感覚

重い瞼を開こうとするが上手く開かない

少し時間がかかったが瞼を持ち上げることができた

するとろ途端に光がさしこみ目を細める段々視界がクリアになってきた


目の前には長い黒髪に黒い瞳の美しい女性がいた。生まれてこの方こんな美人に会ったことがない。



ほんと、結婚したい



そしてすぐ近くには厳つい顔のおっさんいた、こっちは興味なし。


「そなたと同じ黒髪黒目か」

「えぇ、皇族の血筋である証の皇証紋も手の甲にありますわ」

「うむ、我が子で間違いないようだ」

「これも務めですので」


何やら女性とオッサンが話しているようだが聞き取れない

たぶんだがニホン語ではないのだろう


視界を動かすと自分の手と思われるものがある。それにしても小さすぎないか?

そこにあったのはぷっくりとした小さな手だった。

自分の身体を確認して理解した



(転生したっぽい)



なぜそう思ったのか

曖昧ではあるが記憶があるのだ、前世の。

そうすると目の前の女性とおっさんが誰なのか自ずと検討がつく


母と父だろう


そしてさらに思考すると答えを得た

俺は母親を見た瞬間、恋をし、結婚をしたいと思った。だが母だ。叶わぬ恋


齢0歳にして初恋は儚く散ったのである


悲しいね!



現実逃避も兼ねて部屋を見渡すと

高級感溢れるインテリアが並び

きめ細やかな模様が描かれた装飾品

人をダメしそうなソファ

無駄に沢山ある間接照明やシャンデリアがある。

豪華すぎない!?どっかの王宮!?


物珍しく当たりを見ていると水晶を抱えてローブを着た長いお髭のじいさんが部屋に来た


「この度は、誠におめでとうございます。ではさっそく見させて頂きます」

「よかろう」


恭しくおっさんに礼をするじいさん

そして偉そうにするおっさん

多分偉いのだろう



俺を抱いている女性が不安そうに小さなベッドへと俺を寝かせる

ローブのじいさんが俺へと近づき

持っている青みがかった綺麗な水晶に俺の手をかざすように置く

すると水晶がひかり、眩しくなった俺は目を閉じる


「どうだ?」

「…………」


目を開けると不安そうにじいさんを見る女性と真剣な眼差しでおなじくじいさんを見るオッサン


「…………」



沈黙。



「結果はどうだと聞いている」


少し怒気を強め再び言葉を発す


「は、はっ!………料理人でございます」

「なに…?」

「り、料理人でございます!ご子息の持つ固有技能は【料理人】でございます!」

「………………もう一度だ」



再び手をかざされ光る水晶



「…………り、料理人でございます」

「そうか」



途端に興味をなくしたかのように暗い目になるオッサン


「宰相を呼べ」

「はっ」


なにやらオッサンが怒っているよう声をかけると冷や汗をかきそそくさとじいさんが部屋を出ていく。


そして女性が未だ不安そうな表情でおれを抱き上げ頭を撫でてくる

とても気持ちがいい…

少しの間その幸福な時間を過ごしているとまたら別のおじさんが部屋に入ってきた


「皇帝陛下、お呼びでしょうか」

「宰相、コレは無能であった」

「…む、無能でございますか」

「あぁ、コレは無能だ」

「………いかがいたしましょう」

「死んだ」

「……?」

「此度生まれたコレは死産であった」

「「!?!?」」


女性とおじさんが驚きの表情をし

女性が声を上げる


「皇帝陛下!!どういうことですか!」

「どうもこうもない、コレは無能だ。我が帝国には必要ない、よって殺す」

「な、何を言っているかわかっているの!あなたの…あなたの実の息子なのよ!」

「宰相、わかったな?今ここで殺せ」

「かしこまりました」

「皇帝陛下!おやめ下さい!

【料理人】がなんだというのですか、

たかが個人の技能で実の息子を殺すのですか!」

「………」

「技能の恩恵が少なくとも皇太子は務まります!」

「………」

「例え皇太子になれずとも皇族であれば魔力は多いはずです!教育もすれば武官、文官として帝国には必要になるでしょう!なぜ殺さなければならないのですか!」

「存在するだけで害なのだ」


オッサンは鬱陶しそうに女性を一瞥する


「近衛!」

「はっ」

「この女を後宮に戻せ」

「皇帝陛下!おやめ下さい!その子だけは!」


部屋に煌びやかな鎧を纏った騎士が入ってきて泣きながら何かを訴える女性を連れていく


「宰相、殺すのはやめだ

ここで処理すれば皇妃と公爵家が喚くだろう」

「では、いかがいたしましょう」

「ふむ、荷に紛れさせ北の山脈にでも捨ておけ」

「……北の…フルーハの山脈でしょうか」

「あぁ、あそこならば骨も残るまい」

「ではそのとおりに…」


2人が部屋から出ていき証明も最低げになる。この暗く広い部屋に赤子ひとりの状況はどこか不穏で不気味だものだった


言葉が分からないからなんかオッサンが怒って女性が泣いて放置された、くらいしか理解出来なかった

その後、

何やらメイドさんが手紙みたいなものを俺に託してたがありゃなんだ?


いろいろあったが現在、

おじさん(宰相)に箱詰めされて

ガッタンゴットン乗り物に揺られ

どこかの森に放置されました!



転生して2度目の人生…


オワタ\(^ω^)/




回想終わり


「おぎゃぁぁ!」

「おぎゃぎゃー!」


入ったら戻って来れないとか噂のたちそうな怪しげな森で赤子が泣き散らかしている


やばいやばいやばいやばいやばい

俺生まれてすぐに怪しげな森に放置されたわけ!?

なんの恨みがあってこんな仕打ちなわけ!?

前世では特別、徳を積んだわけでもないけど犯罪を犯したとか悪行をはたらいたとかしてないよ!!

モテたいがために料理始めたら思いのほかハマっちゃった系サラリーマンだよ!?


大声で泣き助けを求めようとするが

しばらくすると空腹感がやってきて

騒ぐことも出来なくなってしまった



あたりは暗くなり視界も悪くなる

ただでさえ怪しげな場所だ

日が落ちると一層不気味さが増す


(俺、このまま死ぬのかな)

(餓死とかやだなー、苦しそう)



ガサッ



(!?!?)



誰もいないはずのこの場所で

するはずのない音がした


(人!?助けてもらえる!?)


万策尽きたかと思いきや助けが来たのかもしれない、一縷の望みをかけて音がした方へ目を向ける



「グルルルルルゥゥ」






獣だった…






オワタ\(^ω^)/







なんでぇぇぇぇ!!!!!!

人じゃないぃぃぃ!!!!!!

餓死は苦しそうだから嫌だなって思ったよ!思ったけど!

喰われて死ぬ方が絶対痛いじゃん!

てか痛いってレベルじゃなさそうだし!


普通に人生を送ってきて

獣に喰われそうになるなんて体験はほぼしないだろう。そんな覚悟もなし

人生初体験、あまりの恐怖におもらししてしまった。泣き腫らしたつもりなのに涙も…ついでに鼻水もでてきた


(あー、死ぬのか)


大人の身体を持っていても肉食獣に抗うことはほほま不可能、ましてや俺はいま碌に身動きのとれない赤子の身体

このまま喰われて死ぬと理解した

………………………そして諦めた。


(悔しい、悔しすぎる)

(せっかく2度目の人生をもらえたのに)


底知れない悔しさ、絶望感と共に死を受け入れてしまった俺はそのまま意識を手放した。

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