きっちん・すらっぷすてぃっく

奈那美(=^x^=)猫部

第1話

 (さて・・・そろそろ起きて、朝ごはんとお弁当作らないとな)

ふだんから寝起きだけはいい私は、普段どおりに起きだして台所へと向かった。

今日は旦那が職場にお弁当を持っていく日。いつもはおにぎりだけは作って、あとはカップスープだったりカップ麺だったりを持たせているんだけど、今日はお湯が調達できない場所らしくって。仕方がないのでタッパウェアにおかずを詰めてあげることを昨夜約束してしまったのだ。

 

(まったく・・・ヒトがハイボール二本でほろ酔いになってるのを逆手にとりやがって。こんなことなら頼まれる前に三本目飲んで寝オチしておけばよかった)

作るおかずは決まっている。ウインナー炒めて買い置きの味つき鶏肉を焼いて。ブロッコリーとカリフラワーはボイルして、冷食のお弁当オムレツそしてりんご。おにぎりの具は鮭フレークと海苔のつくだ煮と梅干しの3個。大きさも数も大したことはないけれど海苔で全体を包んだのが好みだから手間が倍かかる(汗)

 

 

まだ夜明け前で暗い台所に入り、窓から差し込む外灯の光を頼りに台所の吊下げ式ライトから下がる紐をカチッと一度引っ張る。・・・点かない。

(え?なんで点かないの?)

カチカチと二度引っ張るとナツメ球だけは点いてくれた・・・でも・・・暗い!

とてもじゃないけれど料理なんてできやしない。

(電球・・・球切れかな?昨夜まではちゃんと点いていたし、それに二本とも一度にダメになるなんてあり?まったく、よりによって今日というか今朝切れなくてもいいじゃない)

それでもお弁当、そして朝ごはんも作らなきゃだし。

気を取り直して、私は後ろを向きシンクの上についている蛍光灯のスイッチを入れた。

 

しばしののち、こちらは無事に点灯してくれた。シンクの右側にあるコンロ台の下からフライパンを取り出してコンロに乗せ、昨夜のうちに冷凍庫から冷蔵庫に移しておいた肉を取り出そうと一歩踏み出したとたん、足にビニールが触る感触がした。

(なんでこんなとこにビニール?)

かがんで拾い上げると手に重さと弾力がある何かが入っている。

(メインのライト点かないと暗くて見にくいな)と唯一点いている蛍光灯で確認した私は「!!!!!!!!!!」びっくりしすぎて声にならない声をあげてしまった。

 

 

なんとそれは海苔で巻いてラップで包んだおにぎりの残骸で、昨日のうちに炊飯器を洗う必要があったから昨夜の残りごはんで朝ごはん用にと作って食卓の上に置いていたはずのものだったのだ。

(もしかして・・・まろのしわざ?)

うちの飼い猫まろは、道端で迷子?になっていたのを半年前に拾っていたもので普段はキャットフードしか与えていない。でも好奇心旺盛なのと食い意地がはっているのとで、私たちが食事をしていると寄ってきて甘え声を出しておこぼれをもらおうとしたり、時には膝やテーブルにのぼってきてあわよくばかすめとろうとまでするのだ。ちなみに好物は柿で、ご飯も食べた過去がある。だから夜は過度ないたずらができないような長さのリードで柱に結びつけていたはず・・・。

 

(それはさておき、このおにぎりは・・・処分するしかないな。さすがに猫が食べた物をシェアする気分にはなれないし)そう思って一緒に作った残り二個の現状を確認しようと食卓のほうに振りかえった私は、さっきの数倍の衝撃を受けた。なぜなら・・・そこには残り二個のおにぎりも、社会人の娘が帰宅してから食べるためにおいてあったおやつも、冷めてなくて冷蔵庫に片づけられなかった肉野菜炒めも・・・ほこりよけにかけていたネットともどもぐちゃぐちゃにされていたからだ。

 

(ちょ・・・ちょいまち!これ、どうしろというの?というかこんなの食べたら、まろ、みるくみたいになっちゃうじゃん)

腎臓系の病気で亡くなってしまった先代猫のみるくのことを思い出して、私はめちゃくちゃに慌てた。わざと食べさせたわけではないけれど、ちゃんと【食べられない場所】に保管してなかったからって、旦那に怒られる!!

(やばいよやばいよ。とりあえず、ここにある分は片づけることとして・・・同時進行でお肉焼いて・・・)

 

 

今度こそお肉を取り出してコンロに向き直ろうとして私の眼の端に、床の上にあったらおかしいものを捉えた。時間がもったいなかったのでコンロの上のフライパンにお肉をのせて弱火にし、先ほど目にしたもののところに向った。

(なんでこんなものが?私買ってないし。・・・もしかして美緒?)

そこに落ちていたものは食パンで・・・それもビニールが破れてて中身がかじられてて。

(ちょっと!これも?やばすぎやん。もうどんだけ食べたんよ?まろのやつ)

食卓の上に散らばるものたち、床に落ちている残がいをレジ袋にかたっぱしからつめこむ。

 

かたづけもしなきゃだし、ご飯その他も作らなきゃだし、それよりなによりまろが病気になっちゃったらどうしよう?そんな思いが頭の中をぐるぐるかけまわり、気持ばっかりが焦った私の耳に・・・

 

 

 

 

ピピピピピピ・・・

 

 

 

電子音のアラームがなり響いた。

 

 

(完)

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きっちん・すらっぷすてぃっく 奈那美(=^x^=)猫部 @mike7691

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