第10話 お眼鏡に敵う?

「あたたかくなって来たからか、虫が出て来たわね」

 虫でびびるようなマリアではないのだが。


「このあいだ目に虫が入ってさ、大変だったよ」

 指でこするより、洗面器に顔を浸けたいところだ。


「眼鏡をしていれば虫も入りませんが、メシヤさまには裸眼でいてほしいですわ」

 眼鏡を掛けるとインテリに見える、というガラでもない。


「日本人ってサ、眼鏡率高いよネ!」

 データでは、日本人の7000万人が眼鏡を掛けているとのことだ。


「こういうラノベでは、キャラの描き分けのために必ず眼鏡キャラがいるはずなんだがな」

 作者が眼鏡属性では無いことが、関係しているかも知れない。


「スマホ老眼なんて社会問題になってるけど、医学が進歩してもこんな現状なのは、一体どういうことかしら?」

 マリアは両目とも2.0である。


「こういう時って、まずインターネットで検索に掛けるじゃん? でもさ、それが本当に効果的な方法かどうかは、疑問な時があるよ」

 専門家と称する人物が話の根拠とする原典を示すこともあるが、さかのぼればその論拠と対立する原典が出て来ることは、珍しくない。


「目の疲れにはこのマッサージをすると良い、といくつか出て来ますね」

 レマが素早くスマホを操作した。


「うん。ところがさ、一番効くマッサージ法がなぜか除外されてるんだ。しかもそれをすると危ないなんて書き方をされてる」

 メシヤも2.0である。


「どうやってするノ?」

ぱっちり目のエリが尋ねる。


「人差し指・中指・薬指の三本で、目を閉じたまぶたを刺激するんだ。気持ちよく感じる程度に押す強さを調節するといいよ」

メシヤが実演して見せた。


「ホントですわ! これ、すごく気持ちいいです!」

レマも同じ動きを繰り返す。


「医者がオススメしていない訳だから、自分でやってみたその感覚を信じるしか無いな」

そう言いつつも、イエスもこのマッサージが気に入ったようだ。


「あんた、これどこで知ったの?」

片目ずつ視界の見え具合を試しているマリアが、質問した。


「一家に一冊持ってると言われていた、戦前・戦後のベストセラー、『実際的看護の秘訣』だよ」

別名、『赤本』。目を酷使する受験生にも、大いに役立つことだろう。

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