第6話 Golden Crown
「クラウンの金色って確か発売されたハズなんだけど、見たこと無いね」
メシヤは金ぴか好みである。
「車に限らずだけど、ゴールド色の小物とか増えたわよね」
本当にゴールドを使っていたら、とんでもない金額になる。
「内装とかでも見るようになったぞ。ゴールドのモールとか棚枠とかな」
日本人なら、仏壇の金細工に馴染みがある。
「ああいうので金運アップって、あながち馬鹿にできないと思うんだよね」
身に付けると確かに気分は上がる。明るく輝くモノに、生物は吸い寄せられる習性がある。
「金のシャチホコとかネ!」
名古屋人は堅実だが、使う時は使う。金鯱は中部圏の好調さを象徴している。
「メシヤさま、咳をされていますね」
レマが心配そうに見つめる。
「うん。昔からちょっとぜんそく気味なんだよね」
メシヤはそのせいもあってか、匂いや空気の流れに敏感である。
「可哀想だけど、この時期にはなんともタイミングが悪いわね」
プロミネンス禍はいまだ収まらない。
「お兄ちゃん、これ食べる?」
マナが冷蔵庫から旬の金柑を取り出した。
「おっ、気が利くねえ」
メシヤはざっと洗い流してヘタを取り除くと、皮ごと口にほうり込んだ。
「うわっ、あんたよく皮なり食べれるわね!」
メシヤは基本的にフルーツを丸ごと食べる。
「マリアさん、金柑は皮にヘスペリジンなど多くの栄養素が含まれていて、血流の改善や疲労回復など様々な健康効果があるんです。咳止めや風邪予防にも効くんですよ」
マナがにこやかに食効を解説した。
「ふむ。金柑はシロップ漬けや蜂蜜漬けにして食べることが多いが、それだと糖分も摂り過ぎてしまうからな。メシヤみたいにそのまま食べるのが“薬”としては適切だろう。
そう言いつつ、イエスも金柑をひょいひょいと摘まむ。
「自然ってちゃんと出来てるわよね。こういう風邪をひきやすい時期には、ちゃんとそれに効く食べ物が実るようになってるんだから」
夏場には、ほてった体を落ち着かせるスイカやトマトが育つ。
目下、世間を震撼させているプロミネンスウイルス。もし金柑が少しでも症状を和らげるのだとしたら、天の配剤と言わざるを得ない。プロミネンスをcorona(冠)と呼称する別世界もあるようだが、キンカンに金冠という字を当てられることもあるのだ。
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