第2話 テプラの首領
「うわっ、汚い字!」
机の上に、メシヤのメモ帳が置かれていた。
「マリア、駄目だよ! これは僕のネタ帳なんだ!」
仕事や学校で使う手帳と、こうしたプライベートなメモ帳との併用は、避けた方が好ましい。もっとも、メシヤのネタ帳は、当人しか読めないほど文字が崩れてはいるが。
「あんたさ、絵はすごい上手なのに、なんで字はこんなにダダクサなのよ」
責めるというより、純粋に疑問に感じるマリア。
「う~んとさ、こうしたら上手く書けるっていうポイントは分かってるんだけど、それよりも考えてることを忘れないうちに早く書き写したいのかも知れない」
字の拙さを指摘されたときに、万人がする言い訳である。
「それでメシヤさまはテプラを愛用されているのですね」
文章作成はパソコンやポメラを使っているが、メシヤは自分の持ち物に分かりやすくラベルを貼りたいときにテプラを使用する。レマの言葉を受け、棚からテプラを取り出して来た。
「メシヤのテプラ、変わってるネ! いまはこんなのがあるんダ!」
メシヤが魔改造したのだろう。ガワだけ契約の
「これがクセになるんだ。オンラインでなんでも繋がってる状態だと、ストレスが溜まる部分もけっこうあるんだよね。こういうスタンドアローンなマシンは、作業が快適だよ」
人間の欲望を刺激するような記事をクリックすると、見る以外に広告を消すことが出来なくなる。
「なんか懐かしいわね。絵文字とかもさ、こうやって各携帯会社が独自のものをたくさん作ってたわよね」
SNSで使う絵文字が限定されるのは、興を削がれる。
「おーおー、俺もガキの頃にテプラをいじっていたが、今のはこんなにも操作性があがってるのか。昔のは使い始めるまでかなり面倒だったんだ」
セッティングに手間取り、敬遠していた人も多いことだろう。
「飛んダ!」
テープカットの時に、ラベルが派手に宙を舞う。
「は?」
飛び出したラベルを見て、マリアがフリーズした。
【さとう】【しお】
「書いてないとさ、いまだに間違うんだよ」
箱を色で分けようとも、時と場合で失念する。
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