ハラッパーの真ん中で【第Sun座】
三重野 創(みえのつくる)
エクスルゲ・ドミネ
第1話 時が未来に進むと、誰が決めたんだ
「オブライエン博士。通常でしたら、メシヤくんたちはこのまま高校二年生となるわけですが」
北伊勢市の洋館で、レオンとジェニーが会談している。
「ムッシュ。前置きが長くなってしまうのですが、バブル崩壊以降の日本人は、時が止まったかのように若さを維持しています。昭和の60代と令和の60代とでは、容貌も思考スタイルも大きく異なります」
30年前の大物MCと周囲の若手タレントが、そのままスライドして時が経過したようにさえ感じられる。
「博士の論文にもありましたね。時は一直線に進むのではないと」
地球が太陽のまわりを一周して一年が経過する、と、機械的に暦ではカウントされる。だが、生物学的な肉体年齢は、本当に暦と呼応していると言えるだろうか。
「ミスター白馬には話していませんが、ヨーコさんは1999年が世界のアルファオメガポイントであるという仮説に、とても興味を持ったようです」
時間の流れ方に関して、古今東西のSFではほぼ語り尽くされているが、その中のひとつに、時間は蛇行しているというものがある。であるからして、ある時空点と別の時空点が、非常に近い座標で存在するということが起こりうる。
「博士の論文の続きでは、1999年から、時空ラインが放射状に溢れ出した、という見解でしたね」
と、いうことは、世界がわずかな刺激で一変しやすくなったということと同義である。並行世界が、細かいピッチで隣接しているためである。
「そうです。かような事情で、1999年以降の世界では、暦の役割が薄れています。もっとも、人々が認識するために、便宜上無くてはなりませんが」
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