【勇者カカカの冒険Ⅱ】はじめから ▷つづきから 冒頭2話
けっきょく夜まで飲み食いしてしまった。
上等なワインを飲み過ぎて、フラフラだ。
家までは馬車で送ってもらった。馬車から降りて御者さんに礼を言う。
しかし、なんだろう。勇者ってこう、王女様とか助けるのがパターンじゃないか。おれが仲良くなるのは、ジジババばっかりの気がする。
振り返り、家の玄関に歩こうとして、すっころんだ。自分の家の屋根を見たからだ。
おれは頭の下に腕まくらをして、星を眺めた。
「いやー、いい星空だなあ」
完全に現実逃避だ。屋根の上を見たくない。
寝転んでると、寒くなってきた。夏は終わった。もうすぐ冬が来るだろう。
おれはあきらめて立ち上がった。家に近づいて屋根を見上げる。
「あのう・・・・・・何かご用でしょうか?」
見つめた先は返事をしなかった。死霊だ。おれがギルドの前で倒したやつ。
あの時、黒い霧だった女の霊は、白い霧になっている。だが形は同じだ。そして風もないのに長い髪と服がゆらゆら揺れている。お前は風見鶏か!
死霊は何を考えているのか、遠くを見つめたように立ったまま風に吹かれている。
おれのステータスが勝手に開いた。
名前:精霊
親密度:20
「・・・・・・ぜったい、イヤ!」
おれは叫んで家に入った。ピシャリと戸を閉める。
もう、三匹目の仲間が霊なんて、ぜったい無理。
「やあ、ぼくはカカカ、勇者をしてるんだ」
「あら、勇者さん、うしろに立つ女の影はなに?」
こんな会話を今後することになる。もう一生モテない。
おれはチックをテーブルに移し、ベットに倒れ込んだ。寝返りを打って天井を見つめる。
しかし妙だ。バルマーが死んで、死霊とアンデットも消えたはず。主人の拘束から逃れた「はぐれモンスター」みたいなのだろうか?
これ、憲兵副隊長のニーンストンに言っておいたほうがいいな。ほかにもいたら、やっかいだ。
だめだ、酔った頭で考えれることではない。家の中には入ってこないようなので、おれは考えるのをやめ、目を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます