第165話 なりきり師、疑われる。
「ところで今日はどう言ったご要件ですか?ギルマスがわざわざ家に来てくれるなんて感激です!
今日はどんなご褒美を貰えるんだろう……」
「ちょっと今日は聞きたい事があってのぉ。正直に答えてくれると助かるんじゃが。」
「なんですか?なんでも聞いてください!ギルマスの為ならなんでも話しますよ!」
「まぁそう急かすでない。まずはこれを持ってからじゃ。」
ギルマスがテーブルにあの物騒な嘘発見器を出した。
「ヒュヒ…なるほど。今日のご褒美はこれですか。あぁどんな事聞かれるんだろ……」
ギルマスに任せて黙ってようと思ってたけどダメだ!我慢できない!
「(ちょっとなんですかこの貴族!急激に残念イケメンに成り下がってるんですけど!
ただのクソドMじゃ無いですか!ギルマスいっつもなにしてたんですか!?)」
「いやのぉ、数十年前にシーマも冒険者になったんじゃが少々生意気での。ボコボコにしたんじゃが、そこから妙に懐かれてしもぉての。」
「は?」
新たな扉開いちゃった系ですか?えっ?さっきまでめちゃくちゃ偉そうだったよねこの貴族…頭混乱してきたんだけど……
「ってか貴族をボコボコにするって何考えてんの?頭イカれてるんですか?」
「あの頃はまだ儂も若かったからのぉ。」
「数十年前ならもうとっくにババァだろ!」
「ババァって言うなゴルァァ!」
『ゴチーーン!!』
ついうっかりツッコミを入れたらゲンコツをされてしまった。ギルマスがボケるからツッコンだだけなのに……
「痛って!なにすんだ……ヒッ!」
めちゃくちゃ羨ましそうな顔でこっち見てるよあの貴族…凄く怖いんですけど……
「……ババァ。」
あっ、コイツ殴られたくてワザと言いやがった…
『パチーン!!』
「ブヘッ!なんでだよ!なんでおれがビンタされてんの?意味分かんないんだけど!」
「成り行きじゃ。最初に言った君が悪い。」
「ふざけんなよ!ぶっ飛ばしハッ……」
う〜わ、めっちゃ見てるよ……目をウルウルさせながらこっちめっちゃ見てるよ…。何この屋敷変態しかいないんだけど…
「同士なのかな?」
「ちげぇよ!一緒にすんな変態!あっ…」
しまった…相手は貴族だった…。
「変態?それは私に言っているのか?」
「あっ、いや…」
「シーマよ。時間が惜しい。早くそれを持つんじゃ。」
「はい!喜んで!」
ダメだコイツ…完全にギルマスの犬だ。もうどうあがいても残念にしか行き着かないよ。
「使い方はわかるのぉ?」
「もちろんです。準備できました。」
「では単刀直入に聞く。シーマよ、君は盗賊を飼っているかの?」
「…いいえ。」
さぁどっちだ?この貴族熱くても我慢しそうだけど、この道具は我慢できないって言ってたもんな。
「うむ。どうやら白のようじゃの。」
「もう終わりですか?とても残念です。と言うより盗賊を飼っているかとはどう言う事ですか?」
「此度のモンスターが街を襲撃した事件は知っておるな?」
「はい。もちろんです。ですが我々も兵を集めて戦いに出たのてすが、モンスターが急に消えてしまって…」
「じゃろうな。あれは元サマナーの盗賊が召喚したモンスターじゃったんじゃ。
盗賊本体を倒した事でモンスターが全て消えたんじゃよ。」
「やはりそうでしたか。原因までは掴めなかったのですが、倒しても消えるのでおかしいとは思っていたんです。
ところでギルマス、私からもお聞きしたい事があるのですが…。」
「さっきもそんな事を言っておったのぉ?なんじゃ?」
「ギルマスはユウキとホークと言うドラゴンを連れた冒険者を知っていますか?
何やらその冒険者達が奇跡の回復奥義を使って怪我人を大量に救ったとか、商業ギルドに隠れ潜んでいた盗賊を捕まえたとか、奇跡を起こして神を召喚したとか到底信じられない話を大勢の人がしていたもので……」
あっ、これマズイ奴だ…。主人公補正でちょっと張り切り過ぎたな……
改めて聞くと結構色々やらかしてんな……
「知っとるも何も目の前におるじゃろ。」
「えっ?」
「そう言えば紹介しておらんかったの。こっちがユウキでそっちがホークじゃ。」
「…ユウキです。」
「ホークです。」
「君達があの噂の冒険者だったのか!?何故早く言わないんだ!」
「何故って名前聞かれなかったし」
「おれたちが噂になってたなんて知らないもんね?」
「だよな。それでそんな事言われても苦笑いしかできないよな。」
「それは申し訳無い。こちらの落ち度であった。」
「ってか貴族様がそんな噂話に乗せられないでくださいよ。ただの人間が神なんて呼べるわけないでしょ。」
「それはそうなのだが…ただあれだけの数の住民が証言しているとなると…」
「確かにあの場に神は降臨なさったぞ。儂もこの子達も見ておったからの。
長く生きておるが初めての経験じゃったよ。まさに神秘の極みじゃったわい。」
「なんと!?それは本当ですか?本当に神が降臨なされたのですか?」
「うむ。」
「何故だ!何故私はこれだけ近くにいながらその時教会にいなかったのだ!クソっ!」
この世界の人って神様信じてる人多いもんね。一生に一度あるかどうかさえわからない神に会えたかも知れないチャンスを逃して悔しいんだろうな。
でも今はそんな事どうでもいいんだよね。
「(ギルマス、話が逸れまくりですよ。盗賊の話に戻してください。)」
「そうじゃの。シーマよ、落胆している所悪いが話を続けるぞい。
先程も言ったようにモンスターの襲撃は盗賊によって仕組まれた物じゃったんじゃ。
そして裏では多量の盗賊が街にちょっかいをかけておったのじゃ。人攫いを企み、泥棒をし、人を殺しやりたい放題じゃった。」
「流石ギルマスですね。この短時間でよくそこまで…」
「儂ではない。全てこの子達が暴いた事じゃ。駆除した盗賊は約60。それが今回の襲撃事件の真相じゃよ。」
「60!?そんなにいたのですか?」
「そして真実の追求具を使った話へと繋がるんじゃ。これを裏で操っておったのが君の護衛のドットス達じゃ。奴等が今回の黒幕じゃよ。」
「……そんな…」
「さっき接触した気色の悪い女で確認しました。盗賊に間違いありません。」
「儂らはここへ盗賊駆除をしに来たんじゃ。大元を断たなければまた同じ事が繰り返されるかもしれんからのぉ。
その過程で君は奴等が盗賊かどうか知っているかどうかが重要じゃった。疑う様な真似をして悪かったの。」
「いえ、それは当然です!実際に貴族が盗賊を飼って悪さをしている事は多々あります。
ましてや我が家の護衛が盗賊なら疑われるのも納得できます。しかしどうして奴等が盗賊だと?」
「少し鼻が利くんですよ。そう言う事にしておいてください。それとあの広い庭を少し借りますね。
これだけ広い屋敷でも家の中で死人が出るのは気持ち悪いでしょう?」
「ちょっと、ちょっと待ってくれ!ギルマスの事を信用していないなど神に誓ってありませんが、やはり自分で確かめなければそんな事はさせられません!」
「シーマよ、わかっておるとは思うが奴等は街に多大な被害をもたらした大悪党じゃ。もう討伐する事は決まっておる。
それでもなお自分で確かめたいならば儂がこの真実の追求具を試そうではないか。」
「そんな事ギルマスにさせられません!それならばこの冒険者ユウキに受けて貰いましょう!」
「はっ?なんでそうなるの?普通に嫌なんだけど…」
「どうして嫌なのだ?真実を話せば先程の私の様に何も起こらないのだぞ?」
「ッ…それはそうですけど…」
「それとも君はギルマスを誑かせて嘘を真実だと思い込ませたのか?」
「あ゛?」
「貴族の私に対してのその態度…それが何を意味するのか君はわかっているのか?
貴族命令だ冒険者ユウキよ真実の追求具を受ける事を命ずる!」
「貴族如きがおれに命令?死にたいのか?」
「やめるんじゃユウキ。君は何故そうも喧嘩っ早いのじゃ?
シーマもよすんじゃ。この子を煽った所で痛い目を見るのは君の方じゃぞ。
両者共真実の追求具くらいさっさと済ませればよかろう。」
「しかしですねギルマス…」
「コイツの上から目線が無理。命令じゃなくお願いしてみろよ き ぞ く さ ま!」
「貴様〜!貴族に対して無礼であるぞ!いくら同じ志しを持ったギルマス愛者でも度が過ぎれば許されないぞ!」
「ちょっと待て、さっきも言ったが一緒にすんな変態!ギルマス愛者ってなんだよ!ただのロリコンじゃねぇか!」
「なんたる言い草…貴様不敬罪で--」
「おっとその先は言うなよ?貴族の地位ごと滅びたくなければそこがデッドラインだ。引き際は見誤るなよ。」
「ユウキ、やめなよ相手は貴族だよ?ギルマスがいい貴族だって言ってたんだから喧嘩する相手じゃないでしょ?おれたちは盗賊を倒しに来たんだよ!」
「でもホーク、先に突っかかってきたの向こうだぞ?」
「ユウキも挑発に乗っちゃったから悪いのは同じだよ。ほらちゃんと謝って。真実の追求具ならおれが受けてあげるから。」
「どうやらホークが一番大人じゃな。少しは見習えバカ共が!」
「すいませんでした…。」
「こちらもすまなかった。少し熱くなりすぎたようだ。反省しよう…。」
「これを持てばいいんだよね?」
「待ってホーク。やっぱりおれが受けるよ。」
「えっ?でもいいの?」
「嘘を付かなきゃいいんだから平気だよ。」
おれは真実の追求具を手に乗せた。
「ユウキ、全ての質問にいいえで答えるんじゃ。この魔道具は質問者にも制約があるんじゃ。回りくどく考える必要はないから安心せぇ。」
「わかりました。どうぞ。」
「ドットス達が盗賊と言う話は嘘か?」
「いいえ」
……ふぅ。何も起こらない。全然熱くならないしこれで嘘じゃ無いって証明できたな。
「続いて…」
「は?」
何続いてんの?意味分かんないんだけど質問は1人1つでしょうが!
「君は転生人か?」
あれあれあれあれ?これって今すっごいマズイ状況じゃね?
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