第164話 なりきり師、狙われる。
「久しぶりじゃのぉシーマ伯爵よ。護衛も付けずに一人で出歩くとは不用心じゃの。」
「あっ、ギル…お久しぶりですねリリー殿。本日はどうして我が家に?」
なるほどね。この2人知り合いだったのか。だからあんなに自信満々に大丈夫って言ってたんだな。
ってかギルマスってリリーって名前なの?知らなかった…
「少し折り行った話があっての。時間を作っては貰えんじゃろうか?」
「わかりました。私もリリー殿に聞きたいことがあるので丁度いい。……ところで彼等は?」
げっ、こっち見た。存在気付いてたんだね。片膝付いた方がいいのかな?
「儂の護衛じゃ。2人共この後Bランクへと昇格が決まっておる将来有望の冒険者じゃよ。」
は!?なにそれ?Bランク?聞いてないんだけど!ってか別に護衛でもないんだけど!何か考えがあるんだろうから黙っとくけどさ…
「ほぅ。その若さで……」
ほら変な事言うから貴族様がめっちゃ品定めする様な目で見てきてるよ?……その目イラッとするなぁ。
「とりあえず話は中で聞こう。門を開けよ!」
「「はっ!」」
「ロディスご苦労様。よく休んでくれ。」
〈ヒヒン!〉
「ロディスを小屋へ連れて行け!」
「はっ!」
馬を門番さん達に預け、歩きで庭へと進んだ。おれたちはシーマ伯爵の後に付いて行き貴族邸へと入った。
「ねぇユウキ、おれたちBランクになるのかな?」
「ん?あぁ、どうなんだろうな?確か昇格試験あるみたいな事言ってた気がするけどな…
まぁとにかくおれらは黙ってよう。貴族との会話の方法なんて知らないし、面倒事はギルマスに全部任せようぜ。」
「それもそだね。前もなんとか罪で処刑だ!ってあのハゲた貴族にユウキ言われてたもんね?」
「そうだったっけ?あの豚貴族の時は遊んでたからあんま覚えてないや。あの時の悲劇が繰り返されないといいけどな。」
まぁギルマスが大丈夫だって言ってるから大丈夫だとは思うけどね……
「お帰りなさいませ旦那様。」
貴族に執事ってのは絶対なんだね…この広さならメイドとかも一杯いるんだろうな。
建物の入り口にはもう執事がスタンバってた。
「爺、客人だ。客間へと案内を頼む。私は着替えてくる。」
「承知致しました。皆様ようこそおいでくださいました。部屋の方へご案内させて頂きます。こちらへどうぞ。」
「うむ。よろしく頼むのじゃ。」
そう言ってここから案内は執事にバトンタッチされた。
客を待たせておいて着替えてくるって…身分が高いと自由でいいねぇ。
長い廊下を歩き執事についていく途中で問題が発生した。
「ユウキ…」
「しっ!気付かないフリしろ。警戒心を解いて自然体を心掛けるんだ。今はまだ戦う時じゃない。」
おれたちが向かってる方向に☆マークがある。この先に例の元Aランク冒険者の盗賊の誰かがいる。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、凄く立派な屋敷で驚いてしまって…すみません。静かにしてますね。」
「ほほっ。ありがとうございます。構いませんのでどうぞ普段通りにお過ごしください。」
「ありがとうございます。」
耳の良いギルマスならさっきの会話が全部聞こえてるだろう。ギルマスも襲いかかったりはしないはずだ。……しないよね?
歩き進めるとやがて全身黒コーデで固めている女が見えてきた。
「燃やしたい。燃やしたい…。」
「またそんな事を言って…ストラお客様の前です弁えなさい。」
「気に入らない物は燃やすそれが私…。私の機嫌を悪くすると貴方も燃やすわよ?」
はい、ヤバイ!見た目、言動全てヤバイー!
全身真っ黒なんですけど!顔色悪すぎて紫なんですけど!病気なの?薬ガンギマリなの?ゾンビなの?
気味悪いってそう言う意味だったの?
「久しぶりじゃなストラ。元気でやっておったか?」
「ギルマス……どうしてここへ?」
「シーマ伯爵に少し用があっての。ドットスやボーダもいるのかの?」
「この子達は何?」
「彼等も冒険者じゃよ。今日は特別に連れてきたんじゃ。」
「貴方、燃えたい?凍りたい?」
「はっ?おれに言ってんのか?」
何コイツ…マジで気持ち悪い。しかもさっきから他人と会話全くできてねぇんだよな…
言葉のキャッチボールできねぇのかよ…話がすぐ変わるし、自分は答えさせるのに自分は全然答えねぇし…あの貴族よくこんなの雇ったな…
「やめなさいストラ!お客様に無礼でしょう!」
「燃やそうかなぁ…凍結させようかなぁ…どうやって追い込もう…フへッ、フヘヘヘヘ……」
うわぁ…真正のメンヘラだ…。声では笑ってるのに顔は全く笑ってないよ…あの不名誉な二つ名はこれが原因だな。
正真正銘の危険人物だし盗賊関係無しに消した方がいいだろ。
「ストラよ、儂がいるのにお主が魔法を使えると思っておるのか?儂はこれでもギルドマスターじゃ。貴様の弱点はわかっておる。
痛い目に遭いたくなければやめる事をオススメするぞい?」
「……もういい。でも貴方はいずれ燃やす。フへへへへ……」
不気味に声だけ笑いながらどっか行っちゃった…
ってかなんかおれターゲットにされちゃってんだけど…笑っちゃうレベルの訳わかんない因縁つけられたよ。
ギルマスが怒りそうで怖くなって逃げ出すくせに弱そうな相手にはイキリ倒しちゃうんだね。
でもその弱そうなおれの方も結構過激だよ?燃やす相手は慎重に選ばないと火傷程度じゃ済まないんだよ?
「我が家の者が大変申し訳ございません。」
「大丈夫です。気にしないでください。」
後で殺すんで…。殺す事を決めた奴が今更何をしてきたって結末は変わらないからね。
「痛み入ります。では改めて部屋の方へご案内させて頂きます。」
そしておれたちは客室へと案内された。
「こちらでお待ち下さい。今お茶を用意させますので…少々失礼致します。」
そう言って執事さんは部屋から出ていった。
「ユウキや、よく我慢したのぉ。偉かったのじゃ。」
「へっ?なんの事ですか?」
「さっきの事じゃよ。儂は君がストラを先走って殺ってしまうんじゃないかとハラハラしておったわ…。」
「いやいやどんだけおれの沸点低いと思ってるんですか…
先に殺しちゃうとここの貴族が黒幕かわかんなくなっちゃうでしょ。確かにあれは死んだ方が世の為ですけどね。ところで…」
『コンコン』
肝心な所で部屋の扉がノックされた。さっきギルマスが言ってた弱点を聞こうと思ってたんだけど仕方無い。
「失礼します。お茶の御用意を致しました。」
「ありがとう。悪いのぉ急に来たのに…。」
「とんでも御座いません。おかわりもありますので一杯食べてくださいね。」
「ありがとうございます。いただきます。」
「いただきます!」
紅茶にクッキー。うん貴族ってるねぇ。リッシュのおみあげも欲しいけど言ってもいいのかな?
『ガチャ』
今度はノックも無しに扉が開いたと同時にシーマ伯爵と執事が入ってきた。
「待たせて申し訳ない。なにやら我が家の者が無礼を働いたそうだが…」
「構わぬよ。それより今日は内密な話があるんじゃ。シーマ伯爵以外は席を外して貰えんかの?」
「わかった。2人共…」
「はっ。」
「失礼致します。」
そう言って執事とメイドは出ていった。えっ?いいの?
「久しぶりじゃのぉシーマよ。」
「ちょっとギルマス!来るなら来るって言って下さいよ〜!問前で見た時ビックリしちゃったじゃないですか〜!」
えっ?なに?この展開…急にキャラ変しすぎだろこの貴族……
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