なりきる職業、なりきり師。

第159話 なりきり師、フルコンボを決める。

　訓練場からロビーへと戻りながら、この人の中どうやって盗賊退治をしようか考えていた。

「一般人の前で殺しちゃうとマズイよな…さっきみたいに解体場に連行するか……でも全員バラバラなんだよなぁ…」

「ユウキ？何ブツブツ言ってんの？」

「あぁ悪い、盗賊の仕留め方を考えてたんだ。子供の前で殺すとなると流石に刺激が強そうだからな。できれば血を流さない方向で行きたいんだけど…」

　大人でも苦手な人はいるよね。おれも最初吐いちゃったし。まぁ殺す側だったからだけどね。

「う〜ん、そうだね…なら見えなくしちゃえば？」

「見えなく？あっ、そっかダークネスがあるじゃん！ホーク天才かよ！」

　グロ注意部分には自分でモザイク処理すればいいんだ。でもそうなると詠唱が必要だよね…

「ギルマス、ダークネスの詠唱ってどんなのか知ってます？」

「儂には魔法はサッパリじゃ。さっきも言ったであろう？」

「ですよね〜。と、なると雰囲気勝負か…まぁいいや。そう言うの得意だし。」

　詠唱はアドリブでなんとかしよう。小声でブツブツ言ってたら多分それっぽく見えるだろ。

　ロビーへの移動が済み、まずは状況を観察だ。盗賊の位置、避難民の位置、それぞれを見て避難民を巻き込まないように注意しないとな…。

「いいから早く払いなさいよ！全国の冒険者にこのギルドは新人差別するって言いふらして問題にするわよ！」

「ギルマス、あそこなんか揉めてるみたいですよ？行かなくていいんですか？」

　カウンターの方から女の怒鳴り声が聞こえてきた。

　周りの人で本人は見えないがたった一言で拗らせてるってわかるな…。ある意味才能だよ。

「揉めてる？そんなのはよい！それより今は盗賊じゃ！」

「盗賊はおれたちに任せて行ってください。ギルマスなんだからギルドの仕事をしなきゃだめですよ。

モンスタークレーマーを放っておくと碌な事になりませんよ。」

「しかし…」

「安心してください。盗賊は絶対逃しませんし、避難してる人達を危険にあわせる事もさせないですから。

余計な揉め事は周りの不安を煽ります。だからしっかりギルマスとして止めて来てください。」

「…ッ仕方あるまい。すまぬ…少し行って来るのじゃ。」

「危なそうなら助けるんでいつでも呼んでくださいね〜。」

「ユウキ、ギルマスだけに行かせていいの？あそこにいるのって…」

「いいんだよ。どうせおれたちも行く事になるんだから。あんな地雷臭がプンプンする奴と初見で関わりたくないし、この世界のヒステリー対処法も見てみたいしな。」

　何を隠そうあそこにいるのはおれがずっとマークしてた盗賊だもんな。

　常に周りに１５人程を引き連れて行動してたからマップ上で凄く目立ってたんだよな。

「ユウキー？盗賊倒さないのー？」

「倒すよ。でもちゃんと順序立てて真実を伝えてからだな。悪い奴でもターゲットを騙す為なら善人面するからな。

んで、アイツらは典型的なそれ。今のまま倒してもおれたちへの反感が生まれるだけだよ。やるならちゃんと下調べをしてからだよ。」

　ギルマスには悪いけどフラットな目でみてほしいから盗賊だって事はあえて伝えなかった。

　これだけガヤガヤしてたらおれたちの会話も聞こえないだろうし、是非ともこの世界のモンクレ対処を披露して貰おう。

「だからおれたちは一旦待機だ。話が聞こえる所に自然な流れで移動して様子を伺おう。

先に言っておくけど本当ならあんなのとは一番関わっちゃダメだからな。２人共今後は注意するんだぞ？」

「？　なんで？」

「なんでー？」

「理由はすぐにわかるよ。あたおかってのは常人には理解できない生き物なんだよ。」

　できればホークにもリッシュにも宿に帰って貰いたい位近寄らせたくないが、社会勉強の一貫として見せておこう。

　しっかし拗らせてる奴ってのはどの世界にもいるんだな…同類が集まりにくい分、呟く世界じゃないだけましか…。

　おれたちは話が聞こえる場所まで移動し、地面に座り聞き耳を立てた。

「私達も命がけだったんですよ！でも怖ったけど頑張りました！」

「街のピンチ…それでおれたち避難活動を頑張ったんです！」

「それなのに報酬がこれだけっておかしいじゃない！貴方ギルドマスターなんでしょ？どう責任取るつもりよ！」

　途中からなのであれだが、どうやら報酬が気に入らなかったようだ。何を勘違いしてるんだろうな？

「責任も何も、それがギルドとしての答えじゃ。見合った報酬は出しておるじゃろ。」

「全然足りないわよ！ふざけないでよ命がけだったって言ってるでしょ！なのになんで１万プライしか貰えないの？おかしいでしょ！一人５万プライ出しなさいよ！」

「街の人をここに誘導した事には感謝しておる。じゃが、その要求は何年言い続けても通る事はない！ギルドに不満があるなら出ていくがよい！」

「最ッ低！アンタそれでもギルマス？そんな男に媚びたような服着てどうせエロい事してその地位も手に入れたんでしょ！穢らわしい！」

　あの女盗賊根性あるな。あの暴君にそんな事を言えるとは…絶対違う街から来てるな。ババァって禁句言ってくれないかなぁ…

「何を言おうと報酬はかわらん！」

「２人共わかったか？あたおかには一般常識がないんだよ。

自分の主張は常に正しい。それを受け入れないのは悪。自分の要求を通す為ならいくらでも普通の人を傷付ける。その思想に取り憑かれた拗らせ勘違いバカなんだ。」

「うん…言ってる事めちゃくちゃだね…」

「リッシュあの人間嫌ーい！」

「好きな奴は極一部だけだよ。あれは世界の嫌われものだ。しかも厄介な事に他人の正論を聞く耳を持てないんだ。

特徴としては謝れない。謝ったら死ぬ呪いにでもかかってるのかって位頑なに謝らないんだ。

奇跡的に謝ったとして何か皮肉は絶対に付けるってのが１００％だ。

だからあんなのとは本当関わっちゃダメなんだよ。今回は仕方無いけど今後はダメだからな？」

「わかったー！」

「うん。でもユウキはなんで知ってるの？」

「過去に数年間粘着された事があるんだよ。アウトな奴は全部片っ端から事務所が訴えてたけど止め処なく湧いて来たんだ。それによく似てるからな。経験談だよ。」

「ふ〜ん…大変だったんだね。」

「一番大変だったのは事務所だったろうけどな。おれは変わらず仕事が忙しかったし暇じゃなかったからそれほど直接は関わってないんだけど、一応報告はされるからあの女盗賊が言いそうな事もわかるぞ。」

「そうなの？じゃあ当ててみてよ！」

「いいぞ。そうだなぁ…権利、侵害、資格、差別、可哀想、時代、わかりやすいのだとこの辺かな。

アップデートとか他にもまだまだあるけど、基本的に聞く価値のない戯言だからな。おれはこの６個に昼飯代をかける！」

「んじゃおれは言わない方だね。半分言ったらおれが今日の昼飯代だすよ。」

「決まりだな。誘導あり？」

「ん〜なし！」

「なしかぁ〜。まぁいいや、続き見ようぜ！」

「うん！」

「僕達頑張ったんですよ！今日は朝から門が閉まっててダンジョンにも行けないし…」

「そうですよ！ダンジョンよりよっぽど危険だったんですから！」

「それは君達だけではなかろう！街全体がモンスターに襲撃されたのじゃぞ。」

「だからって私達の働きを無かった事になんてさせないわよ！」

「じゃからギルド報酬は払ったんじゃろ？何が不満なんじゃ？」

「新人だからって甘く見てんじゃないわよ！こっちは働いたんだから貰う権利はあるのよ！ちゃんと払いなさい！」

「イエス！一個目〜！」

「ユウキ、静かにしないと気付かれちゃうよ！」

「ごめん、つい…」

　やべ…ギルマスこっち見てる…遊んでるのバレたかな？

「じゃから５万プライも払えんと言っておるんじゃ。ギルドは働きに応じて報酬を払う。そこに新人もベテランも関係ない。」

「だからそれがおかしいって言ってんでしょ！新人が命かけて街の人を避難させたのよ！ベテラン冒険者がやるのと訳が違うの！

それをたった１万プライってこの子達が可哀想でしょ！こんなの新人差別よ！これからの時代はギルドが新人を大切にしないなんてありえないわ！」

「うっひゃ〜！一気に４つー！ホーク、ゴチになりま〜す！」

　大興奮だよ、思わず立ち上がって飛び跳ねちゃったよ。

「はぁ〜あ、本当に言ったね…。しょうがないなぁ。」

「まぁ今日は持ってる奴で食べよう。さ、珍獣観察も終わったし仕事しますか。」

「ちょっとそこ！うるさいわね！今こっちは真剣な話してんのよ！静かにしなさい！」

　う〜わ…絡んできた。なんでコイツ強気なんだろ？バカなんだろうな。

「静かにすんのはオメェだよ！さっきからギャーギャーうるせぇんだよ！鬱陶しい！」

「なんですって？最ッ低！こうやって新人はイジメられるのね…でも私は暴力には屈しない！新人だからって甘く見てんじゃないわよ！」

「黙れ。被害者面すんな気持ち悪い。やけに新人って所を推してるみたいだけど新人だからって何しても許されると思うなよ。」

「ホントに最低！信じられない。アンタに私を黙らせる資格なんてないでしょ！アンタが黙りなさい！新人イジメてそんなに楽しい？ホントに最低！関係無い奴は出ていきなさい！」

「お前から絡んできたんだろうが。口だけじゃなく頭も悪いんだな。あっ、ごめん顔も悪かったな。それに性格も悪かったな…うわっ欠点だらけじゃん。」

「アンタ正気？どこまで人をバカにすれば気が済むの？私がいくら新人でも黙ってないわよ！」

「黙ってないって以前にお前ずーっと喋ってんじゃん。記憶力まで悪かったんだな。１秒前の事すら忘れてんのか？鶏頭すぎだろ。

それとその謎の新人マウントやめろ鬱陶しい。言っておくけどおれも登録して２週間の新人冒険者だからな。」

「はぁ？２週間？だったら何タメ口聞いてんのよ！私の方が先輩じゃない！私を敬いなさい無礼者！」

「お前イカれてんのか？あたおかだってのはわかってたけど、まさかここまでとは…

おれがお前を敬う理由が何一つ無い。タメ口が許せないならお前がギルマスに喋ってたあれはなんだ？あれはお前の中で敬語なのか？」

「私は新人だけど誰にも媚びないのよ！」

「なんだそのガバガバ理論バカ過ぎてマジ草。完全にヤバい奴じゃん。

お前達もよくこんな奴に付いていくな？おれなら頼まれても無理だわ。」

「いや、流石に…」

「ちょっと引くよね。」

「ブハッ！仲間にも裏切られてる。なら決めさせてやるよ。今ならまだ助けてやる！コイツから離れるなら手を上げろ。

それともまだ端金の為にコイツの泥舟に乗り続けたいなら好きにしろ。おれは止めはしない。」

　周りの取り巻きに自分で選ばせると全員ではないがパラパラと手を上げ始めた。コイツらはまぁ罰則依頼だな。

「ちょっと！裏切る気？許さないわよ！」

「なんか思ってたのと違う。絶対に稼げるって言ったから一緒に避難活動したけどやってる事タカリじゃん。」

「おれも抜ける。５万プライの依頼って聞いたけど１万プライだし約束の３割は渡さなくていいよな？」

「ちょ！」

「う〜わ…それで必死になってたんだ…キッモ！金にガメついだけかよ。ってか３割ってどこのヤクザだよ。」

「うっさいわね！アンタに関係ないでしょ！」

「それが関係大アリなんだよね〜。おれ今主人公モードだからさ、悪は駆逐しちゃうんだよね。」

「はぁ？悪？悪はアンタでしょ！ふざけんな！」

「口クッサ！えっ！？ウンコ食べた？近付くなさっきの距離まで大至急戻れ！ヤバイ吐きそう…」

「あんた頭おかしいんじゃないの？食べるわけないでしょ！最ッ低！！！」

「戻ってから喋れ！食べてないならそっちの方が問題だよ！素でその臭いって歯磨いた事ねぇのか？

元仲間もクスクス笑ってんじゃねぇかよ。誰も教えてくれなかったのか？」

「ユウキよ、君は本当にデリカシーが無いの…。儂ですら我慢してたと言うのに…」

「ギルマスそれ紛れもないトドメですよ？味方のフリして殺しにかかってますよ。グッジョブです！」

「信じらんない！ありえない！なんなのこのギルド！こんな人権侵害されたの初めてよ！

私は当然の権利を主張してるだけよ！それを邪魔する権利も資格もアンタ達にはないのよ！

こんな時代に取り残された新人差別まみれの価値観のギルドなんてこっちから願い下げよ！

はぁ〜あここのギルドの新人は可哀想ね。これから先もこんな理不尽を受け続けなきゃいけないんだもの！」

「フルコンボキター！面白いように掌の上で踊るなぁ。

あと勘違いすんなよ、権利も資格もあるからこうやって言ってんだろ。おれは冒険者登録して２週間だけどもうＤランクなんだよ！」

「はぁ？だから何よ！」

「お前達盗賊は逃さないって意味だよ！本当の仲間はどうやらわかったみたいだけどな。」

「ユウキ、コヤツが盗賊じゃったのか！？」

　残りの３人が一斉に動き始めた。一人は２階への階段を登り途中で止まり、もう２人は近付いてきた。

「言ったでしょうバカが意気揚々とやった事を話すって…ここまであたおかなのは予想外ですけどおれの我慢も限界です。早急にケリをつけます。協力してください。」

「もちろんじゃ。」

「（鷹目）」

　階段の盗賊は弓、他の２人はこっちに向かってて右側の一人は姿が見えない。

「ホーク！見えない奴がいるぞ気を付けろ！左側の奴を頼む！合図するからそれまで待ってくれ。」

「わかった！」

　階段の盗賊が弓矢をこっちに射ってきた。おれはそれをキャッチしてインベントリから弓を出し逆に射ち返し肩を射抜いた。

「こんな人が大勢いる場所で弓を射るなよ！ギルマス、捕獲は頼みます。」

「うむ。ドゥール！奴を捕えよ！盗賊じゃ！」

「は、ひゃい！」

「大丈夫ですかあの人…前もあの返事してましたけどいくら手負いとは言え盗賊ですよ？危なくないですか？」

「あれは儂の舎弟じゃ。そこそこ戦えるから心配するでない。」

「一気に気の毒感が高まりましたね…別の意味で心配ですよ…。」

　ヒビってたからあの返事なのか…職員さんなのに舎弟って不憫だね…

「（ダークネス）ホーク今だ！」

「りょーかい！」

　ダークネスの射程圏内に入ったので全身を包み隠した。すぐにホークも走り出し盗賊へと突っ込んでいってジャンプした。

「メタリカ！」

　うわっ！痛そう…あれは骨折では済まないな。鉄の塊がノーガードの身体に降ってきたんだ…。ご愁傷様です。

「ユウキ！こっちは終わったよ！」

「ありがとう。職員さんが来るまでそうやって抑えててくれ。」

「わかった！」

「さて、残りはお前等２人だけどまだやる？大人しく投降するならその方が楽なんだけど？」

「はぁ？意味分かんない！アンタ馬鹿じゃないの？」

「２人？あの人何言ってるんだろうね？」

「どう見ても１人だよね？」

「はぁ、道理でこんなカスみたいな騒ぎ起こす訳だ。いいか、お前達は今物凄ーくヤバい状況だって事を理解しろよ？

お前達が人助けだと思ってやってた事はこの盗賊達の泥棒の手伝いだからな？

知らず識らずの内に犯罪の片棒を担いでたんだぞ。ずっとこの２人に利用されてたんだよ。」

「ちょっと待ってください！僕達が犯罪ってそんな事してません！」

「してるんだよ！旨い話に裏がねぇわけねぇだろうが！コイツらはお前達を使って安全に泥棒してたんだよ！信じられねぇなら本人に聞け！（バインドプラント）」

　透明人間と女盗賊をバインドプラントで捕まえた。どんなカラクリか知らないが実態はあるようだな。

「何よこれダーリン！助けて！」

「ぐぬぬ…動けない…。」

「えっ？何今の声…」

「嘘でしょ？本当に２人いたの？」

「じゃあまさかこの人が言ってた事って…」

「そんな、それじゃあ僕達が本当に犯罪者の手助けを？」

「だからしてるって言ってんだろ。こんな災害時に更に被害者の傷口をエグリやがって…知らなかったで済まさせねぇからな！」

「そんなの酷いです！私達は騙されてたんですよ！私達は悪くないじゃないですか！」

「悪くないだと？ふざけんなよ！お前ら無能な働き者が頑張ったせいで被害が拡大したんだろうが！

騙された？だからなんだよ？お前らが騙せれてようが、騙されてなかろうが被害者にはそんなもん関係ねぇんだよ！

深く物事も考えずに甘い話にホイホイ乗ったお前ら自身の責任だ。罰は必ず受けさせる。逃げられると思うなよ。」

「罰ってなんですか？」

「さっき手を上げた１０人はギルドからの罰則依頼で勘弁してやる。ただ上げなかった残り６人！お前らは犯罪奴隷として報いを受けてもらう。逃げたければ好きにしろ。盗賊の仲間として駆除してやるよ。」

「そんなの横暴だ！なんでおれが犯罪奴隷になるんだよ！悪いのはそいつらだろ！」

「さっき言っただろ今ならまだ助けてやるって。あの時その泥沼から出てたらそんな結果にはならなかったんだよ！

目先の金に目が眩んでコイツらを信じたお前が撒いた種だろうが！人のせいにしてんじゃねぇぞ！

そこを一歩でも動いてみろコイツらと同じ運命を辿らせてやるからな。」

「ユウキよ、もうよい。君がそこまでの責任を負う必要はないんじゃ。後はギルドに任せて貰えるかの？」

　肩にポンと手を置かれそこでおれは正気に戻った。

「ッ……はい。すいません。どうやら頭に血が上ってたみたいです。おれもまだまだですね…。」

　本気で怒っちゃってたな…周りを全然気にしてなかった…余計な揉め事は不安を煽るとか言っておいて自分が揉め事起こしちゃってたよ…。

　はぁ…最悪だ。ギルド中の全員がこっちを見ちゃってるよ…。

「すいません、おれたちもう帰りますね。残りの盗賊はキッチリ倒すんで心配しないでください。」

「ユウキ、君は何一つ間違った事は言っていない。少し暴走してしまったようじゃが、間違ってないんじゃから落ち込まずにしっかり胸を張りなさい。」

「？」

「一部始終を見ていた街の連中が君の優しさに気付かないはずがない。誰かの為に頑張ってた君は紛れも無く物語の主人公のようじゃったぞ。」

「……フッ、ありえませんね。主人公には絶対的な条件がいくつもあるんです。おれが素の状態でそれを満たす訳ないでしょ。

それに主人公補正の時間はもう終わってます。おれはいつもの自由気ままな冒険者に戻りますよ。

ホーク、リッシュ、後はギルドがやってくれるんだってさ。昼飯食いに行こうぜ！」

「うん！おれもうお腹ペコペコだよぉ。」

「リッシュもお腹ペコペコー！」

「そうだよな待たせて悪かったな。今日は好きな物食っていいぞ。」

「本当？やったー！何食べようかリッシュ？」

「肉ー！」

「だよねー！ユウキ早く行こうよ！」

「わかってるよ。今日はおれも腹一杯食うぞー！」

　こうしておれたちはギルドを後にした。