第158話 なりきり師、加護を知る。
〜冒険者ギルド〜
さぁ、そんなこんなでやって来た冒険者ギルド。ここの盗賊は4人だけ。貴族街の盗賊はどうやら1軒の家に全員いるし回復してから退治しよう。
冒険者ギルドも他の避難所と変わらず人がごった返している。広いだけあってギューギュー詰めではないが、どこもかしこも人だらけだ。
「ギルマス、先に怪我人の回復をします。案内してください。」
「わかったのじゃ。怪我人は訓練場に集めておる。ユウキよ、よろしく頼むのじゃ。悪いのぉ君達にばかり頼ってしまって…」
「乗りかかった船です最後までちゃんとやりますよ。今更そんな事気にしないでください。」
「そうだよギルマス!おれたちは冒険者だから街の為に頑張るんだ。そしたら皆が喜んでくれるもんね!
ユウキだって口では街の事興味無いって言ってても困ってる人が助けを求めたら絶対に見捨てないんだよ!」
「はて?そうなのかぇ?」
「いや、そんな事ないです…よ?」
「え〜でもおれ小さい頃からユウキが助けてってお願いされて断ってるの見た事ないよ!
自分からは行かないけどお願いされたら動いちゃうのがユウキなんだよ!敵には容赦無いけどね…」
ん〜?そうだっけ?確かに村の人に色んな事聞かれて前世の知識チートで子供らしからぬアドバイスをしてたけど…ホークはその事言ってんのかな?
いくら転生人チートがあっても聞けるお願いと聞けないお願いはあるんだよ?
「ホークはユウキの事をよく見ておるんじゃな。」
「うん!」
「いや、流石におれだって断る時は断りますよ?今まで頼られたのも今回みたいに単に簡単なお願いだっただけですよ。おれは嫌な事は嫌ってハッキリ言いますからね。」
「今回みたいにって…君の中では今回のこの騒動を収める事は簡単な事じゃったのか?」
「あれ?おれにとって難しいなんて言いましたっけ?ギルマスに対してベリーハードですよとは言いましたけど……
怪我人回復して、モンスター倒して、盗賊殺すだけでしょ?時間さえあればどれも余裕ですけど?」
「はぁ…儂には君の基準がわからぬ。本来なら数百人規模でも大変な事を余裕とは…」
「ホークもリッシュもギルマスもいましたからね。有象無象が数百人集まるより安心して戦えましたよ。
それにおれの基準は至ってシンプルですよ?死にそうなら大変、それ以外ならなんとかなるです。そんで大抵の事は頑張り次第でなんとかなるもんですよ。」
そんな話をしながらおれたちは訓練場へと辿り着いた。ここにも多くの人がいる。
「んじゃ、サクっと回復終わらせて来ます。」
もうエリアヒーリングを使うのも慣れた物だ。いつもの要領でサクっと回復をしてさっさと盗賊退治をしよう。
おれは中央に行きいつものようにエリアヒーリングを使った。
「エリアヒーリング」
しかしそれはいつもと違った。
「うぇっ?」
今までの経験から大体これくらいだろうと思ってスキルを展開したのだが、圧倒的に大きなエリアヒーリングになってしまった。
感覚でしかないのだが、多分ギルド全体どころかこの周辺一帯をやっちゃってるかも……
加護か?加護なのか?生命神の加護ってこんなにパワーアップしちゃうの?
「まっ、いっか。」
これが攻撃なら大惨事だけど回復だし誰も困らないだろう。
何事もなかったかのようにホーク達の元に戻り、何食わぬ顔で合流した。
「終わりましたよ。それじゃあ盗賊退治しましょうか。」
「うむ。よろしく頼むのじゃ。」
おっ、よかった。どうやらギルマスも気付いてないみたいだ。
「それとユウキ、後でちゃんと説明してもらうからの?」
前言撤回!泳がされた…このロリババアエルフ全てを知った上で……なんたる策士…。
そうか、耳がいいから向こうの声まで聞こえてたんだな…
「とにかく今は盗賊です!ここには怪しい動きをしてた盗賊がいるんですから目の前の事に集中しましょう。」
「なんじゃと?そんな事儂は聞いておらんぞ?」
「言ってませんもん。言ったら先にこっちに来たくなっちゃうでしょ?何度も言いますけど物事には順序が大切なんですよ。」
「そんな建前はどうでもよい!怪しい動きとはたんじゃ?」
「それは本人達に聞いたらいいんじゃないですか?バカは意気揚々と自分の悪事を話してくれますよ。」
「どう言う事じゃ?」
「それは行ってからのお楽しみですね。って事で行きましょうか。おれも直接見たわけではないですけど多分今頃やりたい放題でしょうからね。」
ギルドのゴタゴタが終われば昼飯にしよう!何食べようかな…。
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