第156話 なりきり師、友達が増える。


「柔らかい…。」


 あの連れてこられる感じは一緒だったけど連れてこられる場所も感覚も違う。

 って言うか体制も違うし目を開けて広がる景色も全然違う。



「あら、目覚めたのね〜。」


 聞き覚えの無い声だけどここは神の世界。それは間違いない。

 いつもと違う事が多いがその中でもおれの頭の後ろの柔らかい感触と目の前の眼福……ここは天国ですか?


 なんとおれは知らない女神に膝枕されてフッカフカのソファに寝転んでいた。

しかも目の前には乳!巨乳を通り越して爆乳〜!横乳見えてますよ〜!エッロイ服着てますねぇ。



「目は覚めました。でもまだふらつきそうです。このままでいいですか?」


「フフッ…カワイイ子ね〜。でも女神って心を読めちゃうのよね〜。」


「知ってますよ。でもそれがなにか?一度離れると二度と帰れない場所もあるんです。おれをこの聖域サンクチュアリから引き離すつもりですか?」


「そこは貴方の聖域サンクチュアリじゃなくて私の膝の上なんだけど?」


「どうぞお構いなく。おれは気にしませんから。そのままご要件をどうぞ。」


「私が気にするのよッ!貴方女神をなんだと思ってるの!?」


 女神がパチンと指を鳴らすとおれの身体が勝手に起き上がった。


 ヤダ!何これ…自由を奪われてこれから何をされちゃうの?僕怖い!純情が汚されちゃう。



「はぁ…初対面の女神相手にそこまでふざける人間がいるとはねぇ〜」


「無理矢理呼ばれましたからね。ちょっとした悪ふざけですよ。でもいくら神でも勝手に呼ぶなんてルール違反ですよ!」


 うわっ正面から見るとめっちゃ綺麗。ライトグリーンの長い髪に目。スラッとした顔立ちでスタイル抜群。にも関わらず基本のほほ〜んとした喋り方…やりたい放題だな神……



「それはごめんなさいね〜。それと褒めてくれてありがと。」


「まぁ来ちゃったもんはしょうがないです。はじめまして。ユウキ=ノヴァです。女神様は誰で何の御用ですか?」


「私は生命神キュラリア。万物の命の女神なの〜。貴方にお礼が言いたくて呼んじゃったの〜。」


「お礼ですか?そんな事で神力使っていいんですか?」


「少し位なら構わないのよ。ユウキ=ノヴァ君…それとも一条勇気君の方がいいかしら?」


「ユウキでいいですよ。日本人の一条勇気はおれの中でもう過去です。おれはもうユウキ=ノヴァとして生きていますから。」


「そう。それじゃあユウキちゃんって呼んじゃうわ。貴方への感謝の印に私の加護を…」


「ちょっと待ったー!!!」


 突然おれの横の時空が歪み穴が空いた。それよりこの声って…



「何勝手な事をしてるんだいキュラリア!」


「あっ、プライちゃんおっ久〜。」


「ユウキ君は僕の友達だよ!勝手に加護を与えるなんてどう言うつもりだい?」


「加護なんて何柱分あったって良いじゃな〜い?この子は私の加護を受け取るに値する働きをしたんだもの。

それきこんなにカワイイ子なら加護の一つや二つ与えたくなるじゃな〜い」


「ダメー!ユウキ君は僕の友達なの!ダメったらダメー!」


 うーわ何この居た堪れない状況……私の為に争わないで…的な奴だよ?



「ってか神同士で喧嘩すんなよ!世界が乱れるだろ!……乱れるの?」


「こんな口喧嘩で世界に影響があるわけないでしょ!あったとしても僕達には些細な事さ。」


「おれには重大な事なんだけど…」


「ユウキちゃん、貴方の口から聞きたいわぁ〜。私の加護欲しい?」


「だからダメ!」


「う〜ん…正直どっちでもいいかな。役に立つなら欲しい。でもショボイならいらない。プライもこうやってゴネてるし…。」


「えぇ〜?人間に神の加護を断る子っているの〜?普通なら泣いて喜ぶはずなのに〜!」


「加護貰った位で泣かないよ?もうプライの加護持ってるし、別に無くても困らないし。」


「ふふん!流石ユウキ君!僕の友達の事だけはあるね!」


「プライもさっきから友達友達って言い過ぎじゃね?友達は別に一人だけじゃ無くてもいいんだよ?

プライとキュラリア様が友達になってもいいんだし。おれがキュラリア様と友達になるのもありだよ?」


「まぁ!素敵な提案ね〜!」


「そんなのダメー!友達は一人でいいの!」


「それじゃあホークとプライが友達になれなくなるだろ。ホークはプライに会うの楽しみにしてるんだぞ?

それによかったらリッシュとも会ってあげてほしいんだけどな…」


「うっ…」


「プライの事だからずっと見てたんだろ?ホークはずーっと楽しみにしてるんだよ。

リッシュもすっごくいい子でカワイイんだぞ?」


「でも…」


「友達が一人でいいなんて寂しい事言うなよ!気が合わないなら無理に友達になる必要なんてないけど、できればホーク達の事は拒まないであげてほしいな。」


「僕はそんなつもりじゃ……君がキュラリアに取られたくなくて…」


「ハハッ、取られるってなんだよ!おれがもしキュラリア様と友達になったとしてもプライと友達だって事は変わらないよ……

あっ、でもプライのその気持ちおれも知ってるよ!おれも昔経験あったもんな…。」


「君も?」


「あぁ。中学生の時におれと、学校の友達と、違う学校友達3人で遊んだ事があったんだ。

その2人は元々知らない者同士だったんだけど気付いたらおれより2人の方が仲良くなっちゃって、知らない内におれ抜きでも遊んでたんだ。

その時におれが紹介したのにおれ抜きで遊ぶなんて!って思った事もあったなぁ。つまりヤキモチ焼いちゃったんだよ。」


「わかるわぁ〜!キュンキュンしちゃう。」


「キュンキュンはしないだろ…絶対使い方間違ってますよそれ…」


「君はその時どうしたの?」


「別に何もしなかったよ?普通にそれぞれと仲良くしたし、2人が遊んだ時の話とかも聞いてたよ。」


「どうして?嫌じゃないの?自分がいない所で楽しく遊んでるんでしょ?」


「う〜ん…説明が難しいなぁ…。確かに最初はムッと思ったけど、友達が誰と仲良くしようが友達の自由だからな。おれがとやかく言う事じゃないんだよ。


そりゃヤバイ相手なら止める事もあるかもしれないけど、2人共いい奴だって知ってるし2人が楽しいならそれでいいんじゃね?って感じで全然気にならなくなったよ。」


「寂しくなかったの?」


「別に喧嘩したわけじゃないし他にも友達はいたからな。それにおれも中学の時は弱小だったけど野球部だったからな。部活とかでそれなりに忙しかったんだ。」


「でも僕には君しか友達がいないんだ…。」


「確かにあの空間にずっと一人でいたら友達なんてできないよな。人は行けない場所だし友達を増やしたいなら他の神と友達になるしかないな。」


「べ、別に僕は今まで通りでいーの!」


「もぅ…素直になれよ。おれがお手本を見せるからプライも恥ずかしがらずに頑張ってみろよ。」


「お手本?」


「キュラリア様、おれと友達になってください。」


「もちろんよ〜。喜んで。」


「あーっ!」


「ほら、簡単だろ?入りなんて適当でいいんだよ。もし合わなかったらそのままフェードアウトすればいいんだから。難しく考えるからややこしくなるんだよ。」


「ユウキ君の裏切り者!僕と言う神がありながら!」


「さっきも言っただろ。誰が誰と友達になろうと本人の自由なんだよ。おれはプライとも友達だし、キュラリア様とも友達になっただけだよ。

プライとの関係性はなーんにも変わんないよ。プライはおれの友達で恩人…恩神だよ。」


「フン!もう知らない!」


「拗ねんなよぉ!ほらほら。あっ、プライのホッペって柔らかいな。赤ちゃん肌だモッチモチじゃん!」


「フフッ、ユウキちゃんって面白い子ね〜。神相手にそんな事する子見たことないわぁ〜。」


「プライとは友達ですからね。セクハラ騒ぎが怖いからキュラリア様にはやってあげませんけどね。」


「あら〜残念ねぇ…じゃあ友達の印に私の加護を貰ってくれるかしら?」


「…プライ?キュラリア様の加護貰っていいか?」


「なんで僕に聞くの?好きにすれば!?」


「わかった。好きにする。キュラリア様の加護ありがたくいただきます。」


「よかった〜。断られてたら落ち込んじゃう所だったわ〜。それじゃあ…えい!」


「あったか〜い…あれ?この感じ…」


「貴方の身体の方が限界みたいね〜。加護を渡すのに間に合って良かったわぁ。」


「マジか…キュラリア様、プライの事よろしくお願いします。

たまにお茶したり話相手になってあげてください。あと図々しいけどお願い事があります。思い浮かべるんで読み取ってください。」


「うふふ…わかったわ。」


「プライまた会いに来るからその時は機嫌治しててくれよ?」


「僕は別に機嫌悪くないよ!」


「そっか、ごめん。またな!」


「あっ…」


 意識がすーっと薄くなる。キュラリア様お願いしますね…。








「プライちゃん面白い子を見付けたわね〜。」


「ちっとも面白くなんかないよ!」


「素直じゃないわね〜。そう言う所は人間の子だけどユウキちゃんを見習わないとね。あの子私達の前でずっと本心で話してたわよ?

媚びるでも謙るでもなく本当に友達だと思っていたわよ?」


「わかってるよそんな事……」


「普通の子にはできない事をできる子。あの子があの世界にどう言った波紋を広げるのか…楽しみねぇ〜。」


「勝手に僕の子を見ないでくれる!?」


「あらいいじゃない。それより一緒にお茶しましょ!ユウキちゃんに頼まれた事もあるし、事の顛末を一緒に見ましょうよ。」


「……ど、どうしてもって言うなら…いいよ。」


「うふふ、どうしても。」

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