第152話 なりきり師、龍を射る。
「よかった…ブレス使ってくれたみたいだ…。」
多分ホークがリッシュにブレスを使っていいって許可したんだろう。一方向のモンスターが一気に消えてまた現れ始めた。
「ブレス?どうしてそんな事がわかるのじゃ?」
「モンスターが大量に消えました。でもホークの位置は動いてない。そうなった時に考えられるのはリッシュのブレスだけです。」
「なるほどのぉ。じゃが何故さっき君はリッシュにブレスを禁止しておったんじゃ?」
「リスクが高いんですよ。周りを気にしないでいいなら強力な範囲攻撃ですけど、ブレスのせいで街を壊してたら本末転倒でしょ。」
「確かにそうじゃの…。」
「だけど街を気遣ってやられる位ならブレスを使って街を壊した方がマシです。
でもその判断をするにはホークはいい子過ぎるんですよ。」
「いい子?」
「村で純粋に育った15歳の少年が他人の家を壊してでも大技使って戦うと思いますか?
リッシュが怒られる、街の住人を悲しませる、おれだったら仕方ないと割り切れる事でもホークは優しいから相手の事を先に考えちゃうんですよ。
それでも今回はリッシュのブレスを使ったみたいなんでよっぽど相手の数にまいったんでしょうね…。」
「そう言う事ならホークにリッシュをつけておいて正解じゃったな。エンシェントドラゴンは強いじゃろうからの。」
「何言ってるんですか?リッシュがいるからホークが動けないんですよ。」
「ほぇ?」
「…まさかギルマス、ホークの事戦えない新人とか思ってませんよね?」
「そうじゃないのかの?あの子は転生人ではなかろう?冒険者登録をしたばかりの新人なんてどの子もそう大差はないもんじゃ。」
「はぁ?信じらんねぇ!メルメルでホークの事は聞かなかったんですか?
ホークをそこら辺の新人冒険者と同じにするとかありえねぇ!いいですか、ホークは強化されたアイズダンジョンを鎮静化させた内の一人ですよ?戦えないわけないでしょ!」
「じゃからと言ってモンスターに囲まれておるのだろう?」
「囲まれてますよ。囲まれてるだけなんですよ!もしホーク1人ならあんなの抜けるのは余裕なんです。リッシュがいるからそれができないんですよ。」
「どう言う事じゃ?」
「おれとホーク2人がリッシュから離れたらリッシュが不安になって取り乱して鳴くんです。
鳴くだけならまだいいけど赤ちゃんのドラゴンが周りにモンスターがいる状態でパニックになったら何をするかわからないでしょう…
考えてみてください、さっきも言ったけどリッシュが街中でブレスをもし本気で使ったら街なんて一瞬で火の海に変わりますよ。
だからモンスターに囲まれてる状態でもホークは制限をかけながら戦ってるのと同じなんですよ。」
「火の海ってそんな大袈裟な…」
「大袈裟じゃないからこうやって急いで向かってるんでしょ!
それに苦戦はしてなくても苦労はしてるはずです。って事で急ぎます!舌を噛まないように口は閉じててくださいね。」
「う、うむ!」
空を一直線に飛んでいくとやがて肉眼でもモンスターが見えてきた。バカみたいに数は多いがどれもこれも雑魚モンスターばかりだ。
その中でもまだ戦った事のないオークなんかのモンスターも混じっている。
だが、その辺がサマナーの限界ならいくら数を出せようが取るに足らない相手だな。徹底的に潰してやる。
「いた。ギルマス、ホーク達の所に降りるので戦う準備はしててくださいね。」
「任せるのじゃ!」
「ガトリングウォーター!」
ホーク達の周りのモンスターにガトリングウォーターをぶつけ、場所を開けさせた。
「ホーク!リッシュ!」
「ユウキ!」
〈キュキュー!〉
リッシュがおれを見つけるなり飛びついてペロペロ舐め始めたが今は違うぞ。
「リッシュ舐めるのは後!戦いの最中は油断しない!ホークよく耐えてくれたな。リッシュはおれが見てるから思いっ切り暴れていいぞ!」
「うん!」
「おれたちを狙った事を死んでからも後悔させるぞ!」
「うん!」
〈キュー!〉
「ホーク、敵は何か変な事はしてきたか?戦いながら簡単でいいから説明してくれ。」
「う〜ん…近距離戦が苦手って言ってたよ。で、最初ゴブリンを出して来たんだけど気付いたら周りからも色んなモンスターがドバーって来たんだ。」
「周りからか?」
「うん!」
「ギルマス!サマナーにそう言うスキルは?」
「そんなスキルは聞いたことが無いわい。」
「って事は何人かいるか、それとも奥義かだな…まぁいいこんな雑魚モンスターなら何匹いようと関係ない。なりきりチェンジ アーチャー くらえ!龍弓!」
アーチャーのマスタースキル龍弓。弓を射った瞬間に矢が龍のオーラを纏いリッシュとは違うタイプの長い龍の姿に変わり目の前のモンスター全てを消し去っていく。
その威力に雑魚モンスターが耐えれるはずもなくモンスターで埋められていた道からモンスターが消え去った。
「リッシュ!そっちの道に向かってウォーターブレスだ!」
〈キュキュー!〉
リッシュがウォーターブレスを使ってもう一方の道のモンスターを吹き飛ばした。
「これで残り2つ!そっちをホーク頼む!」
「わかった!よ〜しおれも負けないぞ〜!奥義・スパイラルストライク!」
ホークがスパイラルストライクを使い3つ目の道に突っ込んでいった。
「君達はほんとにめちゃくちゃじゃのぉ…ホークまでもあんな事ができるとは…」
「だから言ったでしょ。ホークだって戦えるんですよ。ギルマス、そっちの道は反対側で戦ってる人がいるみたいなんで気をつけてくださいね。大技かましたら巻き込みますよ。」
多分他の冒険者だろう。ギルドから出てきて戦ってるんだと思う。
ギルマスに任せた方が他の冒険者の統率も取りやすいだろう…。決して手加減が面倒だからではないよ……
「うむ。わかったのじゃ!任せるがよいぞ!」
どうやら本人も乗り気みたいだし結果オーライだ。
「なるほど、増えるって言うのはこれか。」
倒したはずの道からモンスターがまたこっちに向かってやってきている。
「でもその秘密わかっちゃった。ギルマス、おれたちここを少し離れます。」
「構わぬ!儂に気にせず行って来るが良い。」
話が早くて助かる。
「ウッドゴーレム!向こうは頼んだ!おれたちも行くぞリッシュ!」
〈キュー!〉
このモンスター大量発生の正体は間違いなく設置型のなにかだ。マップ上でのモンスターの発生源が全部同じでその後こっちに向かってきている。
さっきの龍弓で消えてないって事はその範囲外…空からはモンスターが降ってきていないので恐らく地面にあるはずだ。
「ガトリングウォーター!」
モンスターをやっつけながら流れに逆らって発生源に向かっていく。
「やっぱりあった。ライトニングボルト!」
地面に魔法陣が書かれており、そこからモンスターが湧き出ていた。ライトニングボルトを使い地面もろとも魔法陣をぶっ壊した。
「ユウキ〜!」
どうやらホークもこっちにやってきたようだ。まぁあっちの魔法陣はウッドゴーレムに任せれば問題ない。
おれたちはサマナー本体をやっつけるとしますか。
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