第148話 なりきり師、スッキリする。
「ユウキや、大丈夫かの?」
「はい。無事に全員捉えました。ありがとうございました。」
「なに、お安い御用じゃ。じゃがどうやら君にかかれば逃走の心配は無かったようじゃの…」
「ギルマスが入り口に待機してくれてたおかげですよ。おれものびのび戦えました。それよりコイツらを連れて行きましょう。残りの一人がさっきの盗賊と合流しちゃいましたよ。」
「なんと!?それは本当かの?ルクタルの小僧は何をやっとるんじゃ!」
「とにかく行きましょう。詳しい話は行きながら話します。」
「わかった。」
盗賊3人を引きずり連れておれたちは商談部屋へと向かった。
「多分ですけど最後の盗賊はこのギルドの職員のマクラウトって人のようですね…。」
「ギルド職員が盗賊じゃと?」
「はい。常にマップを見てたわけじゃないので100%とは言えませんけど、それにしてはタイミングが良すぎます。
今商談部屋にいるのは盗賊が3人と普通の人が2人です。
恐らく普通の人は商業ギルドのギルマスとリネって職員さんですね。それ以外は全員盗賊です。」
「それではあの二人が危ないではないか!」
「危ないかどうかはわかりませんけど、ハッキリ言って予想外でした。
盗賊が一人で奥の部屋にいたので怪しいとは思ってたんですけど、まさか職員とは思いませんでしたからね。」
「あの二人はその事を知っておるのか?」
「さぁ?調べてないのでわかりません。でもここのギルマスは盗賊を飼ってないって言ってましたし、もし庇うなら同じ部屋に呼んだりしないんじゃないですかね?退治するって予告はしましたし。」
「それはあの君達の声が聞こえなくなった時かの?」
「そうですよ。あんな話子供の前では刺激が強いですからね。」
「なるほど。そうやって冒険者ギルドでも愛の傀儡を作ったと言うわけじゃな?」
「あっ!いや、うん。えぇと…何の事ですか?」
「よくもまぁ白々しい。じゃが今回の功績で水に流してやろう。モンスターと回復、消火活動は頼んだが盗賊駆除は進んでやってくれておるからのぉ。」
あっ!そう言えばモンスターをそろそろ集めとくか。死体をそのままってのも衛生的によろしくなさそうだし。この際新しくウッドゴーレムの派遣もしておくか。
「あれ?…あれあれ!?」
「どうしたのじゃ?」
モンスターがインベントリに入らない?見に覚えの無い盗賊は入ったのに…ん?何で?
あれ?そう言えば今日モンスターをインベントリに入れてないな。空を飛んでる時は撃ち落としてそのまま消えていったし、他はウッドゴーレムに任せて見てない。
でも確実に倒してるから入らないのはおかしい……
ん?消えた!?
「あー!そう言う事か!!違和感の正体がやっとわかった!めちゃくちゃスッキリ〜!爽快感パネェ!」
逆に何で今まで気付かなかったんだろう…冒険者として初歩的の初歩じゃん!
インベントリが便利過ぎてその辺が厳かになってたな…ホーク達は……流石に気付いてるよな…。反省しよ。
「ギルマス、ダンジョン以外のモンスターが跡形も無く消える事ってありますか?」
「何を言っておるんじゃ!モンスターがダンジョン以外で消える事など……いや、一つだけあるのぉ。」
「やっぱり。おれも一つだけ予想が付いたんですけど、それがもし合ってるとしたらこのモンスターの襲撃も多すぎる盗賊の泥棒も全部の筋が通ると思うんですけど…。」
「しかしここまで大量のモンスターはいくらなんでも無理じゃ!」
「実際に事は起こってるんだからできたんでしょ。敵が一人とも限りませんしね。
ギルマス、人って隠し事が結構多いんですよ。自分で言うのもあれですけどおれも隠し事の塊みたいなもんですし…。」
「じゃが何故こんな事を…」
「それはサマナー本人を問い詰めるしかないですね。って事でコイツらにも色々喋って貰いましょうか…。」
この世界では実態のあるモンスターの死体は残る。これは間違いの無い事実だ。それなのに残らないって事は特殊なモンスターなんだろう。
それを踏まえて考えられる有力候補がサマナーだ。今街で暴れているモンスターは召喚されたモンスターなんだと思う。だから死体が残らなかったんだろう。
あくまで予想でしかないが今回の事はサマナーと盗賊が手を組んで街を襲撃し、手薄になった家から泥棒をすると言う卑劣かつ残虐な計画犯罪だ。
「何をされてもお前等に話す事なんてねぇよ!」
「殺すなら殺せよ!仲間は死んでも売らねぇ!」
「ふ〜ん。立派な覚悟だけどそんな事言って大丈夫かな?おれが優しく聞いてる間に吐いちゃう方がいいと思うけど?」
「盗賊を舐めるなよ小僧!こっちは死ぬ覚悟なんていつでもできてんだよ!何をされたって喋らねぇよ!」
「その捕まった姿でカッコつけられてもねぇ……まっ、それならそれで死んだ方がましだって思える苦痛をこれから味あわせてやるよ…。」
商談部屋へと到着しノックして中に入った。そこにはやはりさっき捕まえた盗賊2人とギルマス、女職員、そして新しい男の盗賊職員がいた。
清潔感があり、至って普通の好青年と言った感じだ。とても盗賊には見えないがコソッと鑑定した所間違いなかった。
「さて、これで全員揃いましたね。」
「ユウキさん、残りの盗賊は4人ではないのですか?」
「そうですよ?」
「えっ?でも3人しか……」
「ちゃんと4人いますよ。ねっ、マクラウトさん?」
「ギルマス、なんですかこの子…僕まだ仕事があるんですけど…。」
「すまない。少しだけ付き合ってくれ。ユウキよ、おれにも4人目が見えんのだが何処にいるんだ?」
「目の前にいるじゃないですか。マクラウトさんがこのギルドにいる最後の盗賊ですよ。」
「!? なんだと?マクラウトどう言う事だ!」
部屋に入ってからの反応を見る限りギルマスは知らなかったのかな?演技をしてるようには見えない。
このギルマスが食わせ者なら別だがそこまで器用そうには見えなかったもんな…。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!僕が盗賊?ふざけないでください!こんな訳もわからない子の言う事を信じるんですか?」
「マクラウトとやらよ、それならばステータスを見せて無実を証明すればよかろう。」
「い、嫌です!他人にステータスは知られたくありません!」
「ギルドマスターである儂らにも教えられんのか?」
「教えることを拒否します!それが受け入れられないならこのギルドを辞めます!」
「うん、勘違いしてますねマクラウトさん。辞める辞めないの話じゃないんだよね。今してるのは盗賊か盗賊じゃないかの話なんだよね。
盗賊だったら言い訳無用の討伐対象なんだから大人しく認めてくれた方が手間取らずに済むんだけど?」
「大体なんなんだよお前!いきなり現れて人を盗賊扱いしやがって!」
「今はこの街の盗賊を全滅させるつもりの盗賊ハンターですかね?
盗賊扱いしやがってって言われても盗賊を見分けれるんだから仕方ないでしょう。
普段なら無関係の盗賊なんて面倒なんで放置なんだけど、今日はやる気出しちゃってるんで全員退治しちゃいます。運が悪かったですね。」
「そんなの納得できるか!ギルマス!こんな奴の言ってる事を信用するんですか!?」
あぁイライラしてきた…。あと何ターンやるんだろこのやり取り…もういいよね?我慢したもんね。優しい時間は終わりだな。
「グダグダグダグダうっせーんだよ!盗賊は全部狩るって言ってんだろうが!テメェ一人に時間かけてらんねぇんだよ!
無実ならステータス見せればいいだろうが!こっちはもうお前が盗賊だって事はわかってんだよ!」
「マクラウト、おれはお前を信じたい。だからステータスを見せるんだ!」
「っんぐ……い、嫌です!僕は盗賊じゃない!鑑定士です!」
いや、それもう白状してるのと同じじゃね?
「マクラウトさん…ユウキさん!マクラウトさんは人を殺せるような人ではありません!思い違いではありませんか?」
えぇ…まさかほだされたの?勘弁してよ…おれが悪者みたいじゃん……まっ、気にしないけど。
「思い違いではありません。人を殺せるような人じゃないならお金に汚かった盗賊なんでしょ。
鑑定品の横領や鑑定金額の詐称、ダブルチェックをせずにお金に関わる人を自由にさせすぎると起こってしまう事柄はたくさんあります。実際はどうか知りませんけど何も無ければ盗賊に落ちませんからね。」
「ぼ、僕はやってない!人も殺してないし、盗みもやってない!盗賊なんかじゃない!うわぁぁぁ!」
『パリーン!』
マクラウトが懐からポーションのような瓶を出し地面に叩きつけた。地面からはモクモクと煙が上がり始めた。
「ただで殺されてたまるか!それならおれがお前らを道連れにしてやるよ!」
殺してないって言う割には躊躇わずにいったな…。おれでも初めての時はかなり葛藤したんだけどな。
ってかあれ毒かな?道連れとか言ってるし毒だな!あのモクモクは絶対そうだよね?だってモクモクしてんだもん!でもおれ毒って大得意なんだよね…。
「(リカバリーフィールド)」
リカバリーフィールドって状態異常回復だけじゃなくて浄化作用もあるんだ?発動したらあのモクモク消えちゃったよ。これって今後の冒険に役立ちそうだな…
「なっ!なんだこれ?」
「誰も死ななくて残念だったな。何をした所でお前のやる事なんて簡単に一つ一つ全部潰してやるよ!」
「ななな、なんなんだよお前!」
「ただの新人冒険者だけど?それよりギルマスさん?さっきコイツの行動は自白と取って大丈夫ですか?」
全員巻き込んでの自殺をしようとしたんだもんそれだけで十分過ぎる証拠だ。
「マクラウト……残念だ…。」
信じてた人に裏切られたってのは切ないねぇ。メルメルのギルマスもこんな思いをたくさんしたんだろうな。
「嫌だー!!!死にたくない!」
往生際が悪い。盗賊に落ちたのもそのせいで殺されるのも全部自分のせいなのにな…。
「さようなら」
ここは一応商談部屋だから汚さないように血が出ない強めの首トンで骨を折った。
「マクラウトさん……どうしてこんな事に…」
「もうこれでおれが盗賊を見付ける事ができるってわかって貰えましたかね?」
「そのようだな…」
「さて、じゃあ次は仲間思いのお前らの番だな。どこまで耐えれるか根性見せてみろよ。
ギルマスさんこのギルドって解体場あります?」
「あ、あぁ一応あるにはあるが…解体場で何かするのか?」
「はい。拷問を少々…」
「………ん?聞き間違いか?拷問と聞こえたが…」
「はい!ごうもんです。あっ、心配しないでください。コイツらには許可取ってますから。何をされたって喋らねぇって事は何をしてもいいって解釈しちゃいました!
ここからは血生臭いですから商業ギルドのお二人は見ない方がいいですね。
なんだったらギルマスもここに残りますか?」
「バカを言うでない!儂も行くに決まっておろう!」
「そうですか。んじゃギルマスさん解体場借りますね。」
【テイマーの熟練度が6に上がりました】
【テイム確率がアップしました】
どうやらホーク達も盗賊に気付いて盗賊狩りをしてくれてるようだ。
ちょっと心配だったけどマーキングを残しておいてよかった。これなら思ってたより早く終わらせれそうだ。
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