第145話 なりきり師、二次災害を防ぐ。

「ストーンスパイラル!アイスニードル!」


「ほぉ器用なもんじゃな。空を飛ぶモンスターは儂では倒すのに骨が折れると言うのに…」


 空を飛ぶモンスターを初級魔法でマッピングしながらも仕留める。



「見てないで手伝って貰っていいですか?エルフなんだから弓得意でしょ?」


「儂は弓は使えんぞ?」


「えっ!?またまた〜……それ本気で言ってます?」


「本気も本気じゃ。昔やってみたが絶望的にセンスが無かったのじゃ。デストロイヤーの儂は殴る事しかできん。遠距離攻撃もあるにはあるが、こうも足場が悪いとのぉ…」


 それなら何でついてきたの?まじで戦い方を見たかっただけか?てっきり一緒に戦ってくれると思ってたよ!

 ってかまた出たよデストロイヤー…。そう言えば昔喧嘩してガキ共の女王に君臨したとか言ってたな…昔から素質あったんだ…

 でも物理エルフとか想像と違うんですけど!ドワーフの件といい逆張りばっかだなこの世界……



「…因みに精霊とかって?」


「見た事無い。」


「ですよねぇ…」


「そうがっかりするで無い。君の言う通りエルフは弓が得意な者が多いし、精霊に力を借りる者もちゃんとおる。」


「おぉ!ギルマスにしてはいい情報を提供してくれましたね!そっか精霊いるんだこの世界…」


「それはどう言う意味じゃ!それでは儂がいらん情報を教えてるみたいではないか!」


「みたいじゃなくてそうでしょ。進めずの扉の事を聞くためにどれだけの長話しを聞いたと思ってるんですか?」


「だから言ったであろう。あれは…」



〈ピィーーー!〉



「ウインドサイズ!とりあえず話は後にしましょうか。敵がいくら雑魚でも戦えない住民にとっては危ない敵ですからね…」


「そ、そうじゃの、頼む!」


 それにしてもおかしいなぁ…なんでこんなに多種多様のモンスターが一斉に街を襲撃してるんだ?

 

 これは臭うな…事件の香りがする!……気がする!





 遠目を使い地味に広いクルーシェの街をくまなく

見渡しマッピングは完了した。



「これでよし、と。それじゃあ降りますよ。」


「もういいのかの?」


「マッピングは終わりましたからね。これでモンスターが何処にいるのかわかるのでこれ以上空にいる必要はありません。

それにこの方法だと空間支配者しか熟練度が上げれないんです。おれはテイマーの熟練度を上げたいんですよ。」


「君は聞いている以上にデタラメじゃな…この街の大きさならどんなマッパーでも早くても半日はかかるじゃろうに…」


「スキルの組み合わせが神マッチしてるだけですよ。それよりギルマス、さっきから気になってるんですけどモンスターってこんな風に一斉に街を襲うんですか?」


「儂もこんな事は初めてじゃわい。通常他種族のモンスターは味方であると同時に敵でもあるんじゃ。

もっとモンスター同士で争いが起きててもおかしくは無いのじゃがな…コヤツらは行儀がよすぎるのぉ…。」


「やっぱり変ですよね?おれも何か違和感があるんですけどそれが何かわかんなくて…」


 今までのモンスターと違う気はするけど、同じ気もする…。

 気のせいならそれでいいんだけどなんかモヤモヤするなぁ……



 モヤモヤしながらも地上に降りておれはテイマーへと転職した。



「さてとホーク達も頑張ってるしおれもモンスター狩りを開始しますか。」


「ユウキよ、モンスターは他の冒険者に任せて先に怪我人の回復を頼めないかのぉ?

今それぞれのギルドや協会を避難所として住民が集まっておるんじゃ。」


「だからおれは……ん?ちょっと待ってください。街の人は皆避難してるんですか?」


「うむ。モンスターの襲撃が始まってから結構時間も経っておるからのぉ。君達は何故か寝ていたがの。」


 って事は今このマップに映ってるのは冒険者とか戦える奴って事だよな……あれ?これってまさか…



「…ギルマス、やっぱりおれは回復には行けません。他の人に任せます。」


「なっ!そこをなんとか頼めんか?」


「意地悪で行けないって言ってるんじゃないんです。おれにしかできない事がある事に今気付いちゃったんです。だからおれはそっちを優先します。」


「優先?それはなんじゃ?」


「こう言った災害時には必ずと言っていい程起こってしまう出来事があるんです。今からそれを証明してみせますよ。

なりきりチェンジ マッパー マップ内検索 盗賊……やっぱりな…。」


 金を持ってるであろう貴族街だけでなくクルーシェの街全体的に☆が表示された。 


 人の不幸につけ込んで更にトドメを刺しに来る人による二次災害…泥棒だ。

 盗賊からしたら人がいないこの状況ならやりたい放題の無双タイムだ。



「転写。ギルマスこれを見てください。」


 マッパーのノートに転写を使いギルマスに説明しやすいようにする。



「これはこの街の地図かの?この☆の印はなんじゃ?」


「それは盗賊です。今これだけの数の盗賊がこの街にいるんです。」


「なんと!?それは本当か?」


「昨日おれには調べる方法があるって言ったでしょ?これがその能力です。

恐らくコイツらは人がいない今、この時を利用して泥棒し放題です。なのでおれはコイツらを退治します。だから回復は他の人に任せます。」


「それなら他の冒険者にこの紙を配って…」


「それでは無理です。」


「どうしてじゃ?儂が君の素性さえ話さなければ……」


「それは今の盗賊の居場所です。時間が経てば移動するんです。

もし盗賊が一般人のフリをしてたら他の冒険者には見分ける方法がないんですよ。それどころか無実の住民を盗賊と間違えて傷付けたり、冒険者自身が襲われる可能性もあります。

この街でこの盗賊達を退治できるのはおれとホークとリッシュだけです。」


 マップを見る限り全ての住民が避難してるわけではない。家に残ってる人もいるから下手にノートを渡してしまったら余計な被害が出てしまう。



「モンスターに加えて盗賊じゃと?怪我人もおると言うのに一体どうすればよいのじゃ?のぉユウキよ……」


「狼狽えるな!アンタはギルマスだろ!」


「!!!」


「トップが揺らげば街は総崩れします!街が今以上にパニックに陥ります決して他の冒険者や住民にその姿は見せないでください。」


「すまぬ……」


「確かにおれにはそれぞれ全部なんとかできる力がある。でも身体は一つしかないんです。できる事は限られるんです。

寝てたおれが言えた事じゃ無いですけど急いで一つ一つを片付けていきましょう。」


「そ、そうじゃの!」


「ここからはハードワークです。年寄りにはキツイかもしれませんけどついてこれますか?」


「ぬかせ!ヒヨッコが生意気な!誰に物を言うておるんじゃ?」


「ハハッ、それじゃあ行きます!」


 おれたちは一番近い盗賊へと向かった。








 〜離脱直後 ホーク&リッシュside〜



「おれたちもユウキに負けないように頑張るよ〜リッシュ!」



〈キュー!〉



 ユウキはマッピングするって言ってたけど多分すぐ終わっちゃうと思うんだ。

 面倒くさがってたけどユウキなら怪我人の治療も行ってあげるんだろうな。


 だからおれたちは一杯モンスターを倒して早く終われるように頑張らないと!



「リッシュ、弱い敵にはスキルを使わなくてもいいんだよ!リッシュ位強かったら引っ掻くだけでも倒せるかもしれないね。」



〈キュー?〉



「うん!MPの節約にもなるし、ブレスだと街にも被害が出ちゃうからユウキがダメって言ったんだと思うよ?」



〈キュ〜!〉



「ヘヘッ、やっぱりリッシュは賢いね!あっ!ゴブリンがいたよ!リッシュ準備はいい?」



〈キュー!〉



「よ〜し!じゃあ行くよ!迷子にならないようにしっかりついてきてね!」



〈キュー!〉



 ゴブリンなら前に一人で戦った事がある。あの時の修行を思い出してスキルなしで倒そう。



「リッシュは上から後ろに回り込んで!」



〈キュキュー!〉



「ゴブリン覚悟しろ!」



〈ゴブ?ゴブー!〉



 大声を出してゴブリン達の注目を集めたら予想通りこっちに向かって来た。

 おれもゴブリン達に向かって走り出してゴブリン達の間をすり抜けながら剣で斬って通り抜けた。



「あっ!あちゃ〜。やっちゃった…」


 ゴブリンは3匹いたんだけど全部倒しちゃった…リッシュに後ろに周り込んで貰ったのに無駄になっちゃった…。



〈キュキュキュー!〉



「ごめんごめん、次はちゃんと残すから許してよリッシュ」



〈キューキュ!〉



「うんわかった。じゃあ次はリッシュが倒していいよ。」


 よかった。次の敵をリッシュが倒すなら許してくれるみたいだ。

 強いモンスターがいるんじゃないみたいだからリッシュなら怪我の心配もなさそうだし大丈夫だね。



「あれ?そう言えばゴブリン達は?」



〈キュー?〉



「おれちゃんと倒したよね?ダンジョンじゃないのに何で消えたんだろ?ユウキがインベントリに入れたのかな?」



〈キュキュー?〉



「まっ、いっか!次行こうリッシュ!」



〈キュー!〉



 よ〜し!一杯倒すぞー!

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