第144話 なりきり師、飛び起きる。
〜翌日明朝 宿の部屋〜
『カンカンカンカンカンカンカンカン…』
「だぁ〜!もぅうるせぇ!!!何時だと思ってんだバカヤロー!」
〈キュキュキュー!!〉
何処かから鳴り響く鐘の音のうるささで陽が昇ったばかりの時間に起こされてしまった。
リッシュも無理矢理起こされてかなり不機嫌そうにしている。
「リッシュおいで。街に何かあったのかな?」
〈キュー?〉
未だに鐘の音は鳴り続いている。誰がやってるのかはしらないが意味も無くこんな事はしないだろう。少しおれたちも警戒しておこう…。
「リッシュ、ホークのベットに入るよ。物理結界。」
これでよし。ホークのベットには防音の魔石があるからこれで騒音も気にならない。物理結界も張ったし安心して二度寝ができる。
街になにかあってもその内誰かがなんとかするだろう。
「リッシュ、もううるさくないからな。もう一回寝ような。」
〈キュー。〉
リッシュを撫でながらおれももう一度眠りについた。
はずだったのに……
「何故君達は寝とるんじゃー!!!フーフー…」
「ギャァーーー!ビックリしたぁ!なんですか急に…めちゃくちゃしますね……」
気持ちよく二度寝してたのにいきなり胸ぐらを掴まれて怒鳴られて起こされた。今日は厄日だな…
「それはこっちのセリフじゃ!なんじゃあのバカ硬いバリアは!声をかけても全然起きないし、どうなってるんじゃ君達は!」
「ん?バカ硬いバリア?あっ!結界壊さないでくださいよ!ってかなんなんですか人の部屋に勝手に入ってきて」
「ユウキどうしたの?……」
あっ、ほらホークも起きちゃったじゃないか!
「どうしたのじゃなかろう!あの鐘の音が聞こえておったであろう!」
「あっ、ギルマスおはよぉ…鐘の音って?」
「なんか朝からカンカンうるさっかったんだよ。だからホークの防音ベットで結界まで張って二度寝してたのにギルマスに叩き起こされたんだ。
全く人の事を非常識扱いするくせに自分が一番非常識じゃん!ギャーって叫んじゃったよギャーって!」
「とにかく…………」
あ〜あ、防音の範囲出ちゃったからなんにも聞こえなくなっちゃった。
もう一回結界張って寝たら怒るかな?怒りそうだな…でも眠いしなぁ……
「ホーク?もう目は覚めたか?多分おれたちは今から面倒事に巻き込まれると思うんだけど大丈夫か?」
「うん!それよりユウキ、ギルマスがすごい顔でこっち見てるよ…」
「えっ?」
振り返ると般若がいた。あれれ〜?おかしいぞぉ〜!ギルマスはエルフのはずなんだけどな……しょうがない、起きるか。
「で、なんのようですか?寝込みを襲うような真似して」
「モンスターの大量発生で街が一大事なのじゃ!力を貸してくれるかの?」
モンスターの大量発生ってそんな異世界転生物のベタな展開ある?なんでおれがいる時に起こるかなぁ…
「それ完全に強制ですよね…断れますか?」
「断れるわけなかろう!このままでは怪我人もどんどん増える。ギルドからの強制モンスター駆除依頼じゃ!」
「強制依頼っておれたちまだDランクなんですけど…」
「つべこべ言わずさっさと準備せぇ!儂が君達がギルドに来るのをどれだけ待ってたと思っておるんじゃ!」
「知らねぇよ!待ってる位なら自分達でなんとかしたらいいじゃん冒険者ならいくらでもいでしょ…」
「もう動いておるに決まっておろう!君達も戦えるんじゃから強制参加じゃ!ところでユウキ、君は回復魔法は使えるのぉ?」
「使えますけど?…あっ、嫌ですよ!おれはなんでも屋じゃないんですからね!それくらい自分達でなんとかしてください!」
「そこをなんとか頼むのじゃ!モンスターの殲滅と、怪我人の回復と、火災の消火活動だけでよいから…。」
「いや、それ全部じゃん!全部やらせようとしてんじゃん!図々しいにも程があるでしょ!えっ?おれの事バカだと思ってます?」
「うむ。」
「うむじゃねぇよ!大体…」
『うわぁーーー』
ホークのベットから出ると外からの音が聞こえるようになった。
鐘の音はもう聞こえなくなってるけど代わりに叫び声が聞こえてきた。
「…ったく仕方ないなぁ。おれたちができる範囲だけですからね!」
「それで構わぬ。では表で待っておるぞ。」
「いやいや待ってなくていいから!ギルマスはギルマスでやる事やってください。」
「いいんじゃ、儂は君達と動く。」
「は?なんで?」
「だってグリードの小僧が自慢気に話すから……君達が戦ってるとこ儂も見たいんじゃもん…。」
あのオッサンこのロリババアに何言いやがったんだ…おれが戦ってる所を他人に見せたくないの知ってるだろ
「こんな街中でダンジョン的戦い方するわけないでしょ!早く行ってください」
「うむ。わかった下で待っとるのぉ〜。」
「あっ、だから…」
「アハハ行っちゃったね…」
「あ゛ぁ〜!ギルマスってのはなんであんなに自分勝手な奴ばっかなんだよ!人の話全然聞かねぇ!」
「ユウキ、ギルマス耳がいいから文句言ってたら聞こえちゃうよ?」
「ホーク、大人の耳ってのは都合の悪い事は聞こえないようにできてるもんなんだよ。それは多分エルフでも変わらないんだろ…だから気にしなくて平気だよ。」
「ふ〜ん…そうなんだ」
「あぁだからこの会話が聞こえてたって聞こえないんだよ。……やりすぎると嫌われちゃいますからね?さぁホーク、おれたちも準備しよっか。」
「うん!」
急いで準備を済ませおれたちも外に出た。
「遅いぞユウキ、ホーク!冒険者なら準備位パパっとせんか!」
「えっ?むしろ早くね?3分位しか経ってませんよ?」
歯磨きなどはクリーンで終わらせて一瞬だったし、着替えてすぐ降りたのに文句言われるか普通…
図星付かれて怒っちゃってるのか?
「ってか待って無くていいって言いましたよね?」
「そんな事言っておったかの?いいから早く行くぞい!」
このババア、マジで腹立つ…どうやってもついてくるつもりだな…
「はぁ…わかりましたよ。ホーク、おれは街のマッピングをしてくるよ。リッシュを連れて先に戦っててくれ。」
「わかった!」
〈キュー!〉
「リッシュ、街中でブレスは禁止だ。それから前に言ったように最後まで気を抜かない事、ホークの指示に従う事、ちゃんとできるか?」
〈キュー!!〉
「よし!偉いぞ。それならおれの代わりにホークを守ってくれ。頼むな?」
〈キュー!!!〉
「じゃあ皆自分にできる事をしよう。行くぞ!」
「うん!」
〈キュー!〉
ホークとリッシュがマップ内で一番近いモンスターへと向かって行った。
「えっ?儂は?儂はどうするんじゃ?」
「なんでギルマスが指示待ってるんですか?あなた指示出す側でしょ!乗ってください!」
インベントリからボロボロになった空飛ぶ筏を出した。
「乗るってこれにかの?」
「そうです!おれ一人なら別にいらないけどギルマス空飛べないでしょ?」
「当たり前じゃ!儂は
「へぇ〜この世界には鳥人もいるんですね?まだ見た事ないや」
「そうであろうな…奴らは他の獣人と違って滅多にいない出会う事も珍しい種族じゃ。長く生きておるが儂も数回しか会ったことはないぞ。」
「そんなに珍しいんだ?おれが生きてる間に会えるかな?ミラージュバリア!飛びますよ落ちないでくださいね。」
「ユウキや、これ本当に大丈夫なのかの?」
「心配なら降りて好きにしてください。おれだって本当は一人の方が楽なんですからね!」
「ええいままよ!いっておくれ!」
「行きます!」
おれはギルマスを連れて空を飛んだ。この方法ならクルーシェの街位ならすぐにマッピングも終わるだろう。
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