第141話 なりきり師、死の穴探索開始。
今日は昨日と違っておれもマップを使える。どこに人がいるのか、どこからモンスターが出てくるのか全部お見通しだ。
「ホーク、次を左だ。そしたらあとは一本道で少し進めば死の穴に到着するぞ!」
「ふぁ〜結構歩いたね!ユウキ、って事はもうそろそろだね?」
「あぁ。飛び降りるから心の準備だけはしといてくれよ。」
全く嫌になるよね…クルーシェに到着して3日、まぁ結構もった方か…。
おれたちはそのまま何事も無く歩きやっと死の穴へと到着した。
「これが死の穴ねぇ…確かに真っ暗でなんも見えねぇな……」
「穴って言うよりやっぱり崖だね?」
「そうだな。まぁ地図では大きさまではわかんないからな…。」
おれたちの目の前に広がった死の穴は反対側まで優に10メートルはあるんじゃないだろうか?これをよく穴なんて名付けたよ…
まぁそんな事は置いといて。
「さてさて、迷える狼共の相手でもしますか。」
おれたちはギルドの依頼ボードからずぅーっと尾行されていた。
最初は一人だけだったのに準備時間の間に合流して今は6人組になっている。早い話盗賊だ。
鑑定の結果全員ギルティ。どこの街でもリッシュを狙っちゃう奴はいるんだよね。もう盗賊ホイホイとして開き直ろうかな…
「ヘヘヘ…おいガキ共死の穴に行くなら金目の物とそのドラゴンを置いてから行け!アイテムバッグも出せ!」
剣を手でパシパシして笑いながら脅してくる盗賊。なんで声かけるかな?
せっかく反対の方向いてんだから後ろからソロっと近付いて斬りかかるとか、遠距離攻撃すればいいのに…
「僕ちゃん達ぃ?どうせ死ぬなら私達に全部ちょうだい。無駄にならないように私達が使ってあげるから。」
「この人数に後ろは死の穴で逃げ道はねぇぞ!素直に渡すなら見送り位はしてやるよ!背中を押してやるよ!」
見送り?背中を押す?そんな事する必要は無いよ。
「ホーク、リッシュ準備はいいか?」
「うん!」
〈キュー!〉
「せーの!」
「「誰が言う事聞くかバーーーカ!!!」」
おれたちはそう叫んで盗賊の方を向きながら手を繋いで後ろ向きに死の穴へと飛び込んだ。
〜少し時間を遡り、依頼受託後 クルーシェ〜
「ホーク一旦宿に帰ろうか。準備したい事があるんだ。」
「ん?いいよ!何すんの?」
「説明が長くなりそうだから宿に帰ってから全部話すよ。ホークにも簡単な作業を手伝って貰うから頼んだぞ?」
「わかった!」
とりあえずおれたちは宿の部屋へと帰った。
「今から空飛ぶ乗り物を作りまーす!」
「えっ?そんなの作れるの?」
「作れるよ。流石に本格的なのは無理だけど簡単な奴を作ろう。ホークにはおれと一緒に日曜大工をして貰うよ。」
「日曜大工?」
「うん。木を切ったり、削ったりして乗り物を作るんだ。トレントの大木が大量にあるからそれを使おう。」
「う〜ん…わかんないけど頑張る!」
「ちゃんと説明しながらやるから大丈夫だよ。じゃあ外に出て作業を始めようか。」
「うん!」
宿の主人に許可を得て隣の庭を貸してもらいおれたちは作業を開始した。
「ホーク、多少斜めになってもいいからおれが線を付けた所をまっすぐ斬ってくれる?」
「うん!」
「あっ、スキルを使う時は一応周りに注意するんだぞ?」
「わかった!」
「えっと、じゃあまずはこのままじゃ長すぎるからいらない部分を落とそうか。」
二人乗りだし2000ミリもあれば余裕かな。
大木の大きさは長さ3メートル、直径が1メートルだ。ハッキリ言ってクソでかいんだ。
これがまだ何十本もあるんだから当分木には困らないだろうな。
「んじゃホークここを斬って。」
「わかった!ヴィブラブレード!」
日本でなら道具を使ったって時間がかかる大きさでもこの世界ならスキルで一瞬だ。
ホークはいとも簡単に大木をスパッと斬ってみせた。
「ユウキ、次は?」
「次は板がほしいから双刀斬でここを頼むよ。」
「うん!」
こうやってどんどん必要なパーツを作り、素人DIYながらもおれたちは空飛ぶ
その途中で気付いたのだが、ギルドでも見た奴が
何回も行ったり来たりを繰り返している。
それに気付かない振りをしながら作業をして、この不審者を鑑定をしてみたらやっぱり盗賊だった。
コイツ依頼ボードの近くにいたからおれたちが死の穴に行く事知ってるんだろうな…。
隙だらけの今襲って来ないとなると、死の穴でおれたちを始末して、リッシュを奪おうって作戦かな?
「ホーク、もうちょっとで完成だから頑張ろうな!」
「うん!楽しみだね!」
「そうだな。楽しむ為に頑張らないとな…。」
この作業を始める前に職業だけ鍛冶士に転職していたのだが、この作業で熟練度が2に上がった。
防具作成と言うスキルを覚え簡単な防具を作れるようになった。
だが武器もそうだがまだ大した物を作れないから買った方が全然いいレベルだ。鍛冶士の熟練度も早く上げないとな…
そして約2時間近くかかってようやく完成した。下に骨組みを作って、上に板を乗せ釘で打ち込んだ。
長さ2メートル、幅1.5メートルの力作だ。裏にはファンネルをはめ込む為に☆型もくり抜きズレる心配もない。
飛ぶかどうかの確認は盗賊に見られている以上ここではできないので部屋に移動してからだ。
「ホーク、お疲れ様。これで完成だ!少し部屋で休んだら死の穴に行こうか。」
「え〜?すぐに行こうよ!」
「いいから!部屋に戻るよ!」
後片付けをしてホークを連れて部屋へと戻った。
「えっ?さっき盗賊がいたの?」
「あぁ。襲って来なかったし多分死の穴の直前で襲ってくるんだろ。穴に死体を捨てれば証拠も残らないからな。」
「じゃあそこで退治するんだね?」
「うん、退治って言うか逆に利用してやろうかと思うんだ。」
「利用?」
「今からその説明をするからよく聞いてくれ…」
筏の性能テストと作戦を伝えおれたちはゼーベルダンジョンに向かった。
〜再び 死の穴〜
「「誰が言う事聞くかバーーーカ!!!」」
飛び降りた先でインベントリから筏を出し、空中で留まった。
「アイツら本当に飛び降りやがった!」
「クソッ!折角のドラゴンが…」
「ちょっと話が違うじゃない!」
盗賊の揉めてる話が聞こえる。辺りは真っ暗で何もわからないがマップがあるから盗賊の場所は手に取るようにわかる。
「バインドプラント!」
おれは死の穴から盗賊達に向かってバインドプラントを使った。
「うわっ!」
バインドプラントは盗賊達全員の足を絡め取り死の穴へと引きずり込んだ。
「うわぁー!」
「きゃー!」
「ライトボール」
ここでようやく辺りを明るくした。
「盗賊の皆さ〜ん、あんまり暴れないでくださ〜い!あんまり暴れると落ちちゃいますよ〜?」
このファンネルどこまで耐えられるんだろ?落下だから別にいいかと思って6人全員落としたけど全然余裕で浮いている。おれのステータスに関係してるのかな?
「ユウキ、作戦成功だね!」
「あぁうまくいったな。何があるかわからないからこのまま予定通り盗賊達に先行してもらおう。」
バインドプラントの長さを変えて盗賊達の距離も変える。これでどれ位先から危ないかなんとなくはわかるだろう。
下でギャーギャー騒いでいるが自分達がしようとした事を忘れたんだろうか?
もうお前達はおれたちの安全マージンだ。死の穴究明のピースとして最後に働いてくれ。
「それじゃあ行くぞホーク!死の穴の謎を解き明かすぞ!」
「うん!」
ファンネルを操り、空飛ぶ筏でおれたちは下へと降りて行った…。
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