第136話 なりきり師、地図を買う。
ホークが悩む事約5分…冒険者登録をした時と同じでめちゃくちゃ真剣に考えてるんだと思う。
このダンジョンの危険は何もモンスターだけじゃない。迷ってしまえばそれだけで危険なんだ。
もし迷って帰れなくなって救助を待つにしても、その間にもモンスターは昼夜問わず無限に湧いてくる。
今回はおれの能力に制限をかける事はさっき伝えてある。もし帰れなくなったとしても余程の事がない限りはホークに任せるつもりだ。
深い階層ではできないし、他のダンジョンではここほど迷う事も無いと思う。そう考えるとホークの成長には結構お誂え向きのダンジョンかもしれないな…。
まぁいざとなればおれがちゃんと対処するつもりだけど今回はホークに頑張ってほしいな…。
「決めた!」
「おっ?決まったか?何にするんだ?」
「空間支配者にする!だからユウキはインベントリを使って!」
「わかった。じゃあマッピングはホークの役目だな。それじゃあ地図を買いに行こうぜ!」
「はいこれ!先に直して!」
「もぉホーク…そんなに怒んなよ…。」
「別に怒ってない!!!早く行くよ!」
「怒ってんじゃん……」
〈キュー?〉
どうしたの?って感じでリッシュが聞いてきた。
「あぁ、ごめんなリッシュ。でも大丈夫だよ。ホークの場合はその内機嫌が治るからそっとしておくといいよ。
昔っからホークとはよく喧嘩してるから心配しなくて大丈夫だよ。今回はおれもちょっと大人気なかったかもしれないな……」
〈キュー〉
そんな事をリッシュに言ってるとリッシュがおれのほっぺをペロっと舐めた。落ち込んでるように見えたのかな?……
「ハハッ…慰めてくれてるのか?ありがとな。」
「ユウキ!リッシュ!早く行くよ!」
「あぁ、すぐ行くよ。」
〜ダンジョン前 受け付け〜
そんなこんなで戻って来たダンジョンの受け付け。地図はいらないと言ってダンジョンに入ったのにこんなに早く前言撤回する事になるとは……
「あらユウキ君、ホーク君、どうしたの?忘れ物?」
「あの、やっぱり地図を買いたいです。中に入って迷子になりそうな気がしました。」
「んむッフ〜〜!いいわ〜!凄くいい!!!最ッ高よ!」
えっ!なに?何で恍惚とした表情になってんの?怖いんだけど…
「コ、ココラさん?」
「あらごめんなさいね。貴方達が自分達の過ちに気付いて私を頼ったからつい……嫌ね私ったらはしたない…。」
あっ、なるほど…そう言う感じの人でしたか……そう言えばさっきもちょいちょい見え隠れしてたな…
〈ピィー!〉
その時何処からともなく鳥?の鳴き声が聞こえてきた。今はマップをオフってるから全然気づかなかったが、よくみると目で確認出来る所まで一直線におれたちに向かって突っ込んできていた…。
「しかたな…あっ……」
おれが倒そうと思った時にはココラさんがもう動き出し、飛び出していた。
「私の余韻の邪魔してんじゃないわよぉ!!!」
ココラさんの武器は長い鞭だった。飛んできた鳥のモンスターに鞭を巻き付け、まず自由を奪った。
広げていた羽は本来の位置とは無関係に折り曲げられあれだけでも痛そうだ…。
〈ピァッ!!!ピィ!〉
「私を上から見下ろすなぁ!!!」
『ドゴーーーン!!!』
ココラさんはそのまま力任せに背負い投げ方式で鳥を地面に叩きつけた。上から見下ろすなって…やっぱり思った通りのドS人間だったよ…。
指導された人間が快く地図を買って行くって…指導の意味がまるっきり変わってくるぞ……
「ココラさんスッゲー!ユウキ!ねぇ今の見た?あっ、そう言えばあれユウキもクイーンブーンビーにやってたよね!?」
おっ、どうやらホークの機嫌は治ったようだ。新技でも見せてワクワクを演出しようと思ってたけど必要なかったな。
「あ〜。確かにやったな…スッカリ忘れてたよ。まぁ飛んでる敵を地面に下ろさないと近距離職なら大変だからな…。」
「だよね。最初の頃はクイーンブーンビーに攻撃するの苦労したもんね……」
「まっ、今のおれたちなら飛んでる敵も問題無いけどな。ホーク後でダンジョンでおれの新しい空中対策のスキル見せてやるよ!今度のは結構凄い気がするぞ!」
「ホント!?見たい!」
「いいよ。その代わり今回のマッピングは頑張ってくれよ?」
「うん!」
よし。これでホークの問題は解決だ。
「お待たせ〜ごめんね〜邪魔者は排除したわ。」
首元にナイフの刺さった鳥モンスターを引きずってココラさんが笑顔で帰ってきた。
モンスターを倒してスッキリしたのかな?めちゃくちゃいい笑顔だ…。
「お疲れ様でした。モンスターを倒してくれてありがとうございました。
ココラさん早速で悪いんですけど3万プライ用意したので二階層までの地図を下さい。」
「フフッいいのよ。これが私の仕事だから。地図もすぐに用意するわ。少し待っててね……。」
〜ゼーベルダンジョン 一階層〜
地図を買いおれたちは再びゼーベルダンジョンへと戻った。
「さぁホーク頑張って攻略しような!マップばかりに気を取られて他の事が散漫にならない様に気を付けるんだよ?」
「うん頑張る!」
一階層から十五階層までは地図に推奨ルートが書かれている。ホークにはそのルートで攻略してもらう。
他の冒険者達もいるだろうが、その時はその時だ。なるようになるさ。
「じゃあホークが前、おれが後ろを警戒して行こう。リッシュは今回は休みだ。大人しくしておいてくれよ。」
〈キュー!〉
ホークがリーダーのダンジョン攻略の開始だ!
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