第134話 なりきり師、ゼーベルダンジョン突入。

「ダンジョンに入りたいんですけど行っていいですか?」


 アイズダンジョンに入る際はこんな受け付け無かったのにな…ただギルドでサナさんに毎回ダンジョンに行くかの確認はされたけど…



「あら?初めての方かしら?」


「はい。そうです。」


「やっぱり〜見かけた事がありませんものね。ゼーベルダンジョンへようこそ!」


 茶髪のポニーテールの女の人がテンション高く歓迎してくれた。



「冒険者のユウキですよろしくお願いします。」


「ホークです!この子はリッシュです!よろしくお願いします!」


「ご丁寧にどうも。私はクルーシェの冒険者ギルド職員のココラよ。よろしくね♪

早速だけどユウキ君とホーク君はこのゼーベルダンジョンがどんなダンジョンか御存知かしら?」


「いえ、下調べせずに来たので知らないです。今日は様子見のつもりなので……。」


「そう…それならギルドで売ってるダンジョンの地図を買う事を推奨するわ。

このダンジョンは他のダンジョンと違って巨大な迷路になってるのよ。」


「巨大な迷路?」


「一度踏み込めば道に迷って帰って来れない。なんて事もあるから下準備はしっかりとしていないと危険なダンジョンなのよ。」


「へぇ〜迷路かぁ…」


「ココラさん、地図っていくらなの?」


「1フロア毎に値段は1万プライずつ上がるわ。ボス階層を除き24フロアまでの地図があるんだけど、16階層からは全ては埋まってないの。

それでも命に関わる物だし階段までの道はちゃんと載ってるから買う価値はあるわよ!」


 ん〜ハッキリ言っていらないな。地味に高いしマッピングなんて自分でできるし、マップを見れば道に迷う事もないはずだ。



「今日は様子見で深く潜るつもりも無いですし、節約できる所はしときたいので地図は休憩の時にでも頑張って自分で書いてみます。また今度必要そうな時に売ってください。」


「わかったわ。それならギルドで書き写しができるからそっちを試すといいわ。紙とインクと根気と集中力のいる作業だけど用意ができるなら無料よ。

でも書き間違いが多いからオススメはしないわよ?」


 なるほどねぇ…そうきましたか。まぁそりゃそうだよね。迷路を自分で書くとか大抵の人が無理だもんな。



「ココラさん、この商売方法ってクレーマー来ませんか?」


「クレーマー?そうね…たまにいるけど指導すれば最後は快く買って行ってくれるわよ?

まさかとは思うけど貴方達もギルドなんだからただで寄越せって言う冒険者なの?」


 指導って何だっけ?おれの認識間違ってたかな?絶対力でねじ伏せてるよね…



「いやいや、おれたち今は地図自体を必要としてないんでそんな事言いませんよ。必要ならちゃんと買います。

ただ手書きで迷路を書いて大変なのに冒険者の為に配れとか騒ぐバカはいるんだろうなぁって思っただけですよ…。」


「な〜んだそう言う事かぁ〜!指導者リストに追加しなきゃいけないと思ってビックリしちゃった。

ユウキ君はギルド側の苦労もわかってくれるのね。ありがとう。」


 指導者リスト…そんなリストあんの?それってギルド全体なの?それともココラさん個人のなの?パンドラの箱っぽいから聞くのは辞めておこう。



「ぁハハ……それよりダンジョンに行っていいですか?」


「あっ、そうよねじゃあいくつか質問に答えてね。まず一つ目、どの階層まで行く予定なの?」


「えっと……まだ決めてません。」


「じゃあまずは決めて貰えるかしら?ギルドとして救助に行くにもどの階層に居るのかの目安は欲しいの。」


 迷路だと少し時間がかかるよな…今日は宿も取ってるし街に帰りたいからな……


「う〜ん…じゃあ五階層で。」


「初めてで地図無しで五階層?ゼーベルダンジョンを舐めちゃダメよ。ニ階層までにしておきなさい。」


「二階層?二階層なんてすぐ終わりませんか?」


「終わりません。中は迷路だって言ったでしょ。無茶をする冒険者は長生きできないわよ。」


「あの…おれたち最下層までの攻略許可をギルマスから貰いましたけど…」


「そんな嘘言ってもダメよ!今日は二階層まで!いいわね?」


「…はい。」


 結局二階層までで決定してしまった…。別に守る必要は無いけど返事しちゃった手前守らなきゃいけない気分になるよね……



「よろしい。じゃあ次にこの魔道具にそれぞれ冒険者プレートを近付けて。」


 ココラさんが次に出して来たのは結婚指輪を入れる様な小さな箱の魔道具だ。

 おれたちは言われた通りに冒険者プレートを近付けた。



「うん、大丈夫ね。もし迷って帰れなくなったら蓋を開けて中のボタンを押してね。そうすれば遭難信号としてこっちの本体に知らされてギルドから救助に向かうわ。

ただしこれも無料じゃないわ。下の階層に行く程多くの人数と、それなりの実力が必要になるから高額になるの。覚えておいてね。」


「それでさっき行く階層を聞いてたんですね…わかりました。なるべく使わないように頑張ります。」


「立派な心掛けね。帰ったらその魔道具は返却して貰うから無くさないように注意してね。

諸注意は大体この位よ。後は依頼を受ける際にギルドで説明して貰ってね。」


「わかりました!もう行ってもいいですか?」


「えぇ。いいわよ。モンスターは壁や天井、地面からも湧いて来るから気を付けるのよ。」


「「は〜い!行ってきま〜す!」」


 アイズダンジョンとはまた違った癖がありそうなダンジョンだけどまぁ大丈夫だろう。









 〜ゼーベルダンジョン 一階層〜


「なるほどねぇ〜こんな感じかぁ!」


 ゼーベルダンジョンはどうやら洞窟寄りのダンジョンらしい。アイズダンジョンと違い壁と天井があって薄暗い。

 薄暗いだけで完全な真っ暗ではなくライトボールを使わなくても辺りは見える。



「ユウキ、マッピングする?」


「そうだな。どうせ今日は二階層までだしモンスターを倒しながらマッピングしようか。」


 このダンジョンでは鷹目も遠目もあまり使えなさそうだ。たまには楽しないで初心に戻るのも悪くないか。



「ホーク!早速第一モンスターだ!マップ見てご覧!」


「あっ、ホントだ!ねぇユウキ!おれが倒してもいい?」


「いいよ。一階層だから弱いとは思うけど油断はしちゃダメだよ。」


「うん!」


「よ〜し!じゃあゼーベルダンジョンの攻略開始だー!」


「おー!」



〈キュー!〉



 今日は二階層までだけどダンジョン攻略を楽しもう!

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