第131話 なりきり師、散財する。

「では先ず、どう言った効果の物をお探しかお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「効果?ベットに効果付きなんてのがあるんですか?」


「左様でございます。付属しております魔石に魔力の供給が事前に必要になりますが、効果は折り紙付きでございます。

例えばこちらの商品ですと最大でMPを50程溜め込みます。そして2時間就寝しますと10時間お休みになられた時と同様の回復量を確認しております。」


「へぇ〜凄いですね…。」


 めちゃくちゃ怪しい……5倍の回復量かぁ…。それが本当なら迷わず買うんだけど回復量なんて人によって違うんじゃないか?


 こんな対面してる時に完全鑑定なんて使えないもんなぁ…



「続いてこちらの商品は周りの音を遮断する効果を持ちます。同時にベットから外への音も遮断しますので少しお値段は張りますがイビキ対策が必要な方に人気の商品でごさいます。」


「これも魔石ありきの効果ですか?」


「左様でございます。ベットの効果は作る際に魔石に刻み込みます。設定する効果の数が増える程作るのが難しく、より高値になってしまいます。」


 こんな所で魔石の重要度が知れるとは…おれたちも何個か持ってるし職人系の職業になったら使えそうだな…安易に売らずに取っておこうっと。



「そうなんですね…ガッツさん、もしよかったらこのベット試させて貰えませんか?魔力は自分で注ぎますので…。」


「勿論でございます。魔力も貯めておりますのでお気になさらずどうぞお試しください。」


「ありがとうございます。」


 ダメ元で頼んでみたがすんなりオッケーしてくれた。なのでおれは遠慮なくベットに寝転びいまいちピンとこないベットの効果を自分で試してみる。



「そのヘッドボードにございますスイッチを押して頂くと魔石が使われる状態になります。」


「これですね?じゃあちょっと失礼して……」


 ポチッとスイッチを押した。う〜ん…変わった?



「これでいいんですか?」


「………………」


 ガッツさんが喋ってるけど音は全く聞こえない。口をパクパクしてるだけだ。



「…………」


 ホークも何か言ってる…。って事はこの効果は本物なんだ。凄いね異世界。これイビキ以外にも欲しい人一杯いるだろうな。


 あっ、ガッツさんがスイッチを押したぞ…。



「いかがでございましたか?私やホーク様の声は聞こえましたでしょうか?」


「聞こえなかったです。ホークはおれの声聞こえた?」


「聞こえなかったよ!凄いねこれ煩くしても平気だし煩くてもよく寝れそうだよ!」


「そうだな。うーん…でもなんか違うな。他のも見せてください。」


 ダンジョンで使う時に周りの音が聞こえないのはいただけない。普段使いなら最高だがおれたちに必要なのはこれじゃないな…。



「勿論でございます。ご納得頂ける商品が見付かるまでお好きなだけご覧くださいませ。」


 効果付きのベットかぁ…正直頭に無かったけど現物を見ちゃったらやっぱり良い物が欲しいよな…。


 よし、ここはもう妥協なしで金の上限を決めずに欲しい物を選ぼう。

 ホークにもそう伝えておれたちは自分のお気に入りのベットを選んだ。



「ユウキ様、ホーク様が選ばれましたベットの合計が330万プライとなります。」


「高ぇぇぇ!…あっ、ごめんなさい。」


「構いません。それ程に大きな買い物でございます。その高いと思える感覚をお持ちになられている事は素晴らしい事でございます。是非今後とも忘れずにいてくださいませ。」


「あっ、はい…わかりました…。お会計お願いします。」


 15歳で使う330万…しかもベットにだ…車が普通に買えちゃうよ。…これはもう考えちゃダメだな。

 でもガッツさんおれたちが330万払える事を疑問に思わないのかな?確かにお金は持ってるって言ったよ?でも予算の2倍なんだけどな…

 まさかスキルの書を売った事まで知ってたりしないよな?


 ガッツさんはおれたちが選んだベットにクリーンの生活魔法を使いそしてアイテムバッグに入れた。



「ではお部屋の方にご案内致します。どうぞこちらへ。」


 ガッツさんについて行くときらびやかな部屋に案内された。

 無駄に金かけてるなー。とは思うけど客商売だからしょうがないのかな?



「凄い部屋ですね…場違い感がハンパないよ…。」


「こちらは高額購入者様専用の部屋にございます。どの部屋よりもプライバシーに配慮しておりますのでどうぞおくつろぎください。」


「高そうな物ばっかで落ち着かないよ…」


「だよな?おれも…早くお金払って昼飯食いに行こう。」


「昼食でしたらこちらでご用意致しますがいかがなさいますか?」


「あっ、大丈夫です。クルーシェの街も見て回りたいので自分達で探します。」


「そうでございましたか。失礼しました。」


「いえ、ありがとうございます。お金はここに出せばいいですか?」


「はいよろしくお願い致します。合計金額の内訳ですが、ユウキ様のご購入されます疲労回復、回復量増加付ベットが160万プライ。

ホーク様の疲労回復、睡眠促進、防音付ベットが170万プライになります。」


「わかりました。これでお願いします。確認してください。」


 アイテムバッグ風の袋から次々に1万プライのコインを出す。10枚を33列作りこれで330万プライだ。


 ガッツさんに確認してもらい支払いを済ませた。



「ご購入ありがとうございます。ご購入されましたベットですがどちらにお持ち致しましょうか?」


「アイテムバッグに入るのでここでください。」


「承知致しました。ユウキ様は素晴らしいアイテムバッグをお持ちなのですね。王都のお父上からの贈り物でございますか?」


「あ〜…はい、そうです。ただほとんど何も入って無いだけですよ。このベットを入れたら半分以上埋まってしまう気がします。」


「それでも素晴らしい性能でございます。大切になさってくださいね。」


「はい。ありがとうございます。」


 購入したベットも受け取り、おれたちは一番商店を後にする。



「またお越しくださいませ。ユウキ様、ホーク様、最後にこちらをどうぞ。」


 ガッツさんが渡してきたのは一枚のプレートだった。



「これは?」


「一番商店のVIPプレートにございます。全国各地の一番商店にてお見せ頂きますとさまざまな優遇がございますので是非お使いください。」


「えっ!?おれたちが貰っていいんですか?初めてきたお店でVIPって…」


「勿論でございます。これは私の商人としての未来への投資でございます。

私の勘がお二人は凄い冒険者になると言っております。お二人に今日この日に出会えた事を感謝致します。」


 転生人ってのはバレて無いんだよな?不安になるほど終始丁寧で紳士な対応だったな…



「わかりました。では遠慮なくいただきます。ありがとうございます。」


「ありがとうございます!」


「こちらこそありがとうございました。是非ともまたお越しくださいませ。一番商店はお二人をいつでもお待ちしております。」


「はい、また来ます!」


 かなり高い買い物になってしまったが冒険者は頑張れば頑張るだけ収入が増えるんだからまた頑張って稼げばいいや。

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