第130話 なりきり師、買い物する。

 〜クルーシェ 一番商店〜



「いらっしゃいませ。一番商店へようこそ。」


「いらっしゃいました。店の中を見てもいいですか?」


 クルーシェの街で一番実績と信頼のある大きな商店それがこの一番商店だそうだ。

 扉を開けて中に入ると白髪のダンディな品のあるイケオジが出迎えてくれた。



「勿論でございます。どうぞごゆっくりご覧ください。失礼でなければ何をお求めになられてるのかお聞かせ願えますか?」


「あっ、はい。ベットを2つ欲しいんですけど……置いてますか?」


「ベットでございますね。勿論ご用意がございます。ご案内しますこちらへどうぞ。」


 おぉ!対応も完璧……ガキ相手でも丁寧で紳士的に案内してくれてるぞ。まだ金を持ってる事も言ってないのにこうやって対応してくれるとは…めちゃくちゃ素敵紳士じゃないか!



「こちらでございます。お求めやすい価格ですとこちらの商品などいかがでしょうか?」


「20万プライ……」


 えっ?高くない?何の変哲もないただのベットに20万?物価高ッ!高級家具じゃん…

 そう言えばアイテムバッグも数百万するとか言ってたな…



「あの〜店員さん?このベットって標準価格ですか?」


「そうでございますね…。一般的に宿屋等で使われているベットと同系統の物でございます。

これ以上に安いベットとなると申し訳ございませんが当店には……」


「あっ、違います!いいんです!お金ならちゃんと持ってますんで。ベットを買うのが初めてでちょっと想像を超えてたので驚いただけです。」


「左様でございますか。失礼ですがご予算をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「う〜ん…ただのベットで20万プライですからね…ちょっといい奴が欲しいんで2人で100〜150万プライ位ですかね?」


「ユウキ!そんなにお金使ってもいいの?」


「今後に関わる物だからな。大切に使えば長く使える物だしケチって後悔するよりいいだろ。お金はまた頑張って貯めればいいし。」


 貯金も一応はある。ベットに150万も出すとか正気の沙汰ではないが物価が高いんだから仕方ない。



「素晴らしい!!!」


「「えっ?」」


「…コホン。失礼致しました。流石は今話題の冒険者ユウキ様とホーク様でございますね。」


「えっ?なんでおれたちの名前…それに話題?おれたちが話題になってるんですか?…なんで?」


 名を上げるつもりではあるがまだ話題になるような事はしてない……。

 この街に至っては宿屋からギルドとギルドからこの店しか行き来してない。

 それだけでなんで話題になるんだ?



「ドラゴンを連れた新人冒険者を見た。それだけで貴族の方も何か情報は無いかと私の店にも来られました。

お二人はご自身が思ってる以上に周りから注目されている存在なのですよ。」


「あ〜そう言う事ですか…因みにこう言ったお店って他人の個人情報を売ったりもするんですか?」


「そうでごさいますね。場合によれば売る事もごさいます。

しかし御安心ください。お二人に関しては誰にも情報を売っておりません。世界の終わりに関わる事でございますからね…。」


「世界の終わり?なんの…あっ!まさか…」


 そう言えばギルドの食堂で作り上げた設定ってそう言う設定だったな…違う街のこの人も知ってるんだあの嘘……。

 商人の情報網の広さヤバくない?



「私が情報に敏い事もあるのでしょうが少なくともお二人は私にとっては今一番注目してる冒険者でございます。

今後も決して悪いようには致しませんので御安心くださいませ。」


「ハハ…ありがとうございます。でも本当に内緒でお願いしますね…。

それにしても情報に敏いって…商人って一冒険者の事をそんなに知ってるんですか?おれがついうっかり話しちゃったのってメルメルのギルドの食堂しか無いですよ?」


「商人にとって情報は命であると共に武器であり大切な収入源でもごさいます。どんな些細な噂話でも拾い集め、自身で吟味するのです。そうして私はこの店を大きくして参りました。


申し訳ごさいません自己紹介がまだでごさいましたね…。私は一番商店オーナーのガッツと申します。以後お見知り置きを…。」


 オーナーだったよこのイケオジ…どんだけハイスペックなんだ?素敵紳士に金持ちまで追加されちゃったよ……



「御二人の噂はメルメルでよく耳にしました。


・ドラゴンを連れた新人冒険者。

・登録したてにも関わらず格上の先輩冒険者に決闘で圧勝した。

・他の冒険者からの勧誘は一切受け付けない。

・ギルドの奥によく連れ去られる問題児など他にも様々でございますね。


信憑性の低いものですとメルメルのギルドマスターの隠し子とも聞いた事がございます。」


「なんですかその根も葉もない噂……あってるのドラゴンを連れた新人冒険者だけじゃん…」


「おや?他の話は間違っておりましたか?それなりの人数から聞いた情報なのですが……」


「間違っております。今から当事者のおれが本当の事を話しますね。よく聞いてください!


まず一つ目…格上じゃ無いです。アイツらのランクがどれ位だったのか知らないけど確か実力者の姉がいる的な話を聞きました。アイツら自身は本当に大した事が無かったんですよ。


次に2つ目…勧誘してくるのが変な奴しかいなかったんです。わざわざ色物パーティーに入る物好きじゃないんです。

仲間になるかは別としてちゃんとした人なら合同で依頼する位はしたかもしれません。


そして3つ目…あれはおれが無理矢理連れて行かれてただけでおれが問題児なんじゃないんです。本当にギルマス達には困ったものですよ……


最後に4つ目…隠し子じゃねぇし!誰だよそんな事言ってた奴!バカじゃねぇのか?」


「そうだよね。オジサンとオバサンもちゃんといるよ?おれもユウキもギルマスにあったのはメルメルが初めてだもんね。」


「そうでございましたか。大変失礼致しました。」


「それよりそんなに詳しいってガッツさんももしかしてメルメルにいたんですか?」


「左様でございます。我々一番商店の支店がメルメルにもございます。昨日の昼にメルメルを出発して丁度今朝このクルーシェに到着致しました。」


「へぇ〜一番商店って支店がある位大きいんですね?メルメルにいたけど知りませんでした。」


「メルメルの街の場合はお二人には少し縁遠かったのかもしれませんね…。メルメルの街の一番商店は貴族街に店を構えてますので……」


「あっ、そうですか…確かに貴族街には行きませんでした。そう言った場所に平民は用事がありませんからね。

でも、だとしたらクルーシェに移動してきて正解だったかもしれませんね。こうやって一番商店の事も知れましたし、ガッツさんならちゃんといいベットを教えてくれそうだし…。」


「これはこれは…ユウキ様はお世辞がお上手でございますね。商人にとって信頼される事は一番の喜びでございます。このガッツ誠心誠意ユウキ様、ホーク様に合うベットを紹介させていただきます。」


「「よろしくお願いします!」」


 これでようやく念願の自分専用のベットがゲットできるぞ! 

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