第127話 なりきり師、やりかえす。

「で、で!?マミーはなんて言ってたんですか?」


「そう急かすでない。物事には順序と言うものが大切なんじゃよ。

あれはそうじゃの今から約300前、儂がまだ子供だった頃の話じゃ。儂が今より小さくそれはそれはカワイイ時の話じゃ。」


 この見た目で300歳以上確定!?ロリババア恐るべし……。

 そんな事より過程はいいから結論だけパパっと聞きたいんだけどな…急いでは無いけどこの後色々予定あるんだよな…



「マミーに大きくなったら冒険者になりたいと言った事があるんじゃ。マミーも昔は冒険者じゃったから大賛成してくれてのぉ。過去の武勇伝をよく聞かせて貰ったものじゃ。

中でも儂はブルルバイパーの討伐の話が好きでのぉ…」


「あの〜進めずの…」


「マミー達は全員エルフでパーティーを組んでいたらしくってのぉ…

ブルルバイパーの鱗は固くマミーのパーティーは弓を使う者が3人もいて…」


 あっ、ダメだこれ…。都合のいい耳しだしたぞ……

 さっき耳がいいって自分で言ったし絶対聞こえてるのに聞こえないフリし始めたじゃん…。そう言う話はギルド職員とか関係者にしてくれないかな……



「リッシュおいで。」


 他人の武勇伝程聞いていられない物はない。しかも今回は他人の母親の武勇伝だ。聞く意味がわからない。

 リッシュのお世話をしてる方がよっぽど有意義な時間だ。


 だけど心配御無用!こっちには純粋無垢な純度100%ピュアボーイのホークがいる。

 おれと違って疑う事を知らずワクワクしながら他人の武勇伝でも聞いてあげる事のできる優しい子だからな。ここはホークに任せよう……。










 それから約1時間…ギルマスの遠回りに次ぐ遠回りの長話が続き、ブルルバイパー討伐の武勇伝から始まりマミーとパピーの出会いの話、ガキの頃に毒キノコを食って死にそうになった話、近所のエルフ達を締め上げて女王に君臨した話を経て、ようやくマミーに進めずの扉の話を聞いた時の話になった。


 さすがのホークも飽きたらしく途中から聞いてなかったので代わりにおれが適当に相槌をうつことにした。

 リッシュに至ってはおれの所にきてブラッシングしてやったらすぐに寝てしまった。



「さて、そろそろ儂が聞いた進めずの扉の事を聞いてもらおうかの。」


「ようやくか…なんかもう途中から悪意だけで長話をしてるのかと思いましたよ…。」


「何を言う失礼な!それに儂に成敗された君達がすぐに出ていったら変じゃろ!時間潰しの為に儂が少し話をしたんじゃ!

儂も話を聞いて貰えて嬉しかったし、君達も復活するまでの時間が稼げた。お互いに得のある有意義な時間ではないか?」


「はぁ、そう言う事なら先に言ってよ…完全に余計なお世話です。おれたち姿を消すスキル持ってるんで誰にも気付かれずに外に出れますから…

因みに空中移動もできるんで他人とぶつかるような心配も無いんですよ。」


「なんと!君のそのスキルの豊富さは一体なんじゃ?にわかには信じられん話じゃが実際に儂も目の当たりにしておる…君の職業は一体なんなのじゃ?」


「そんなのは先に進めずの扉の事を教えてくれてからです。話す気がないのならもう妥協できるまでの我慢はしたんでおれたちは帰ります。


正直ダンジョン攻略の許可を貰わなくてもダンジョンには行きますし、素材を買い取って貰えなくてもお金には余裕があるんでハッキリ言って困りません。

ここに来たのはあくまでも冒険者としての義理からなのでギルドがそれを拒むならおれたちも好きにさせてもらいます。おれたちはおれたちのやる事をやるだけなんで。」


「待て待て待つんじゃ!話す気が無いなんて誰も言うておらんじゃろ。今から話す所じゃったろ。それにダンジョン攻略の許可も出す。

君達がそんなスキルを持っていたなんて儂は知らんかったんじゃ。」


「転生人をエルフの物差しで図るからですよ。それにスキルを使わなくてもこのギルドから出る方法なんていくらでも思いつくし、それらを有言実行する能力もありますよ。」


「そうかい。それは悪い事をしたのぉ。年寄りのおせっかいとして水に流しておくれ。よかれと思ってやったんじゃ。」


「いや別に怒ってるわけじゃないですけど…」


「そうかの?それはよかった!なら気にする必要はないの。」


 あ、やりやがったコイツ確信犯だ…。悪いなんて1ミリたりとも思ってないぞ…。そっちがその気ならおれにだって考えはあるんだからな。



「そうですね。気にしなくていいんで進めずの扉の情報をください。」


「よかろう。儂がマミーに聞いたのは進めずの扉は昔一斉に閉じたと言うことじゃ。」


「一斉に閉じた?」


「300年前に聞いた話じゃから今からじゃと約400年前の事じゃの。それぞれのダンジョンのある階層から扉が開かなくなったとギルドに報告がいくつもあったらしいんじゃ。」


「400年前から…」


「行方不明になった冒険者も数多くいて進めずの扉の先に閉じ込められたのでは無いかと言われておったらしい。

そこでギルドで話し合われ進めずの扉を壊そうと言う結論に至ったらしいのじゃが進めずの扉は何をやっても壊せなかったそうじゃ。」


 400年前から悪魔が魔王に力を注いでるとしたらかなりヤバイんじゃないのか?

 魔王復活にどれだけの時間と力がいるかわかんないけど悪魔達も結構な時間使って頑張ってるぞ…



「って事は進めずの扉の先にもダンジョンはあるって事ですよね?」


「マミーが言うにはそうじゃの。じゃが儂は進めずの扉の手前までしか行ったことがない。確実にあるとは言えんのぉ。」


「いえ、それがわかっただけで十分です。行こうホーク!」


「えっ?もういいの?」


「うん。今の話で色々現状がわかった。あとは自分ですり合わせるよ。」


「ふーん。」


「待つんじゃ!次は君の職業について教えてくれる番じゃろ。」


「えっ?おれがいつ職業を教えるなんていいました?」


「ぬっ!?さっき言ったじゃろ!進めずの扉の事を教えたら…」


「教えるなんて一言も言ってませんよ。嫌ですね年寄りの早合点は。自分に都合良く考えちゃうんですもんそんな事されたらガキは困っちゃいますよ。」


「儂を、この儂を騙したのか!?」


「嫌だなぁ〜騙してなんていませんよ。ギルマスが勝手に勘違いしただけですよ。いくら見た目が若くても頭は年をとっちゃうんですね?見た目だけじゃなく、頭も心も若々しくいてくださいね。そしたらギルマスは最強ですよ!」


「ぐぬぬ…」


「あれ〜?怒っちゃうんですか?おれもギルマスと同じで1ミリたりとも悪いとは思ってないんですけど、さっきおれは我慢して飲み込んだんですよ。

15のガキにできるのにまさか300年以上生きてて我慢できないとか言いませんよね?

それとも自分は他人にやるけど他人が自分にやるのは許さないとか言っちゃうんですか?

言えないですよね?さすがにそんな恥ずかしい大人がギルマスなんて人の上に立つ仕事するなんてありえませんもんね?」


「もももももちろんじゃ。儂は怒ってなどおらんぞ。」


 はぁ〜ん間違いないな。絶対的強者故に今まで誰にもやり返されなかったパターンの人だな…。

 ギルマスって立場が邪魔して怒るに怒れなくなるように誘導してやったわ!

 まずおれに演技で仕掛けてきた方が悪い。それにおれがやり返すタイプの人間だって見抜けなかったギルマスの落ち度だ。



「そうですか。それはよかった!ならおれも気にする必要は無いですね。それじゃあおれたちはこれで失礼しますね。」


「全く君はいい性格をしてるのぉ……」


「褒められると照れますね。ハハハハハ……」


「ホッホッホッ…」


 立ち上がりホークと共に部屋を出る。っとその前に……



「ギルマス」


「なんじゃ?忘れ物かぇ?」


「おれたちは敵じゃないんですからこれからも仲良くしましょうね?」


「……」


「それじゃ!」


 そう言って今度こそ部屋を出た。あ〜あ…これは一部屋潰れたかな?

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