第125話 なりきり師、偽装する。

 〜メルメル 冒険者ギルド ギルマスの部屋〜



「今日位にはユウキとホークはクルーシェのギルドに顔出すよな?どうなってるか見に行きてぇ〜!」


「見に行きてぇ〜!じゃ無いですよ!あのギルドは『ババア』って言葉は禁句なんですよ!この前も血祭りに上げられた冒険者の話を知ってるでしょう!

ユウキさん達が本当にあなたの言う通りに言っちゃってたらどうするんですか!」


「そりゃ言うだろ!言って貰わなきゃ困る!」


「困る?何か考えがあるんですか?だからあの時私を止めてまであんな嘘を…」


「嘘?嘘は言ってねぇよ。おれがあのババアにババアって言ってももう何もしてこねぇから器が大きくなったし、周囲はその言葉を聞いて震え上がる。

正に完璧な新人潰し防御作戦だろ。まぁ1番危険な相手をしなきゃいけないがな……」


「あなたに何もしてこないのはもう諦められただけでしょ…

あぁ凄く心配になってきました…ユウキさん達は大丈夫でしょうか……」


「まぁアイツらならその辺はなんとかするだろ。おれも昔はあのババアにこっぴどくやられたからな…これはおれからの最終試練だよ。ガハハハハ…」


「はぁ…あなたって人は本当に……それで私を呼び出した理由はなんですか?」


「あぁ、明日からおれがもういいって言うまでクルーシェから来た冒険者をおれの所に案内してくれ。その情報をギルド職員で共有できるように通達もよろしくな。」


「……まさかユウキさん達の結果が知りたいからなんて言わないですよね…」


「おっ、よくわかったな!今のおれの一番の楽しみなんだよろしく頼む!」


「ついに楽しみって言ってしまいましたね……はぁ。」


「あ〜やっぱり今から猛ダッシュでクルーシェに行ってこようかな」


「仕事しなさい!!!」


「…はい。」









 〜クルーシェ ギルド〜



「ババアだゴルラァァァァ!!!」


「ビッグシールド!!!」



『バゴォーーーン!!』



「ぐっ!」



『ズズズズズ……』



 凄い衝撃だ。踏ん張ったから吹き飛ばされる事はなかったが、スキルも使ってないであろう素の威力で結構後ろにさげられた。

 これ他の新人に対してこんな威力の攻撃してたら間違いなく死ぬぞ……

 あのクソギルマスこうなる事がわかっててあんな伝言させやがったな笑ってる憎たらしい顔まで想像できるぞ!



「誤解です!ちょっと待ってください!話を…」


「口の悪さは心の悪さ…よって殺す!」


 えぇ何物騒な事言ってんの?ババアって言っただけで殺すって沸点低すぎだろ……


 ってかアンタも口悪いぞ?


 砂煙で相手見えねぇし、戦士の盾がさっきの攻撃でへこんでしまっている。

 相手は殺る気満々だしちょっと気合い入れないとまずそうだな…。



「話を聞いてください!メルメルのギルマスからうわっ!」



『ボゴォーーーン!』



 かろうじて避けたが地面を砕いた。そのせいでまた砂煙が舞う。



「あのガキまだ生きてやがったか!テメェ知り合いか?って事は関係者か?って事は弟子か?つまり殺ぉす!」


 えぇ何その死の連想ゲーム…。それ最早何言ったって行き着く所は殺すになるだろ!


 ってかギルマス何したんだよ!とばっちりがおれに回ってんじゃねぇか!



「(ウッドゴーレム)ごめんなさい!少し大人しくしてもらいます!」


 こっちから逆鱗に触れてしまった手前申し訳無いがおれも黙って殺される気はない。少しだけ拘束させてもらう。



「ユウキー!大丈夫ー?」


「大丈夫だ!任せろ!」


「弟子の仲間か?って事はあの声も弟子だなぁ!殺おぉす!」


「斬撃波!」


「うっと」


「笑えねぇ冗談だな。ホーク達に手を出すなら話は変わってくる。いくらクルーシェのギルマスでも容赦しねぇから覚悟しろよ。」


「ほぅ威勢はいいようだな。そんなにあの弟子が大事か?なら儂から守ってみろやぁ!」


「今だ!」


 ウッドゴーレムに合図を出しクルーシェのギルマスを捉えるべく襲いかかる。



「ふん、こんなもの。」



 だが『バキバキ』と音を立てて破壊されてる音が鳴り響く。20体以上いても流石にギルマスレベルが相手だと無理か…。


 砂煙に乗じてウッドゴーレムを使ったんだがなんで防がれるんだ?この砂煙の中が見えてるのか?



「ホーク!防御の準備だけはしといてくれ!(ディフェンシブ、肩代わり)」


「わかった!」


 おれはマップで大体の場所がわかる。ホークにバフをかけて一応の守りの体制は万全だ。



「数で押し切る!(ウッドゴーレムウッドゴーレムウッドゴーレムウッドゴーレムウッドゴーレム!)行け!」


 どうだ総勢120体だ!これだけいれば捌ききれないだろ。



「ほぅ、さっきから妙な事ばかり…だがそれで儂に勝った気でいるなら殺す!奥義・覇段弾はだんだん!」


 ヤバイ!直感でわかる。これはヤバイ…



「受け止めろ!」


 ウッドゴーレムが束で木になっておれを守る。100体以上が犠牲になってやっと打ち消せた。



「マジで殺す気かよ…」


「その通りじゃ。」


 真後ろから声が聞こえ悪寒が走った。



「回転蹴り!」


「遅い!」


 咄嗟に出た回転蹴りも受け止められ弾き返された。



「(ライトニングボルト)クソッ!」


 手加減して敵う相手じゃない。正体を隠して戦うとか言ってられるレベルじゃないぞ。



「何処を狙っておるんじゃ?そんなの当たりはせんぞ?君の本気はそんなものか?」


 ちっ、コイツ遊んでやがる……ん?なんか違和感…



「(バインドプラント)」


 よし!捉えた!



「ふふん、脆いのぉ!」


 クルーシェのギルマスには初級魔法は弱すぎたのか捉えたのに簡単に破られてしまった…。



「どうやら君は視界が悪くても儂の居場所がわかるようじゃな?」


「それがなにか?」


「ま、わかった所で関係ないのぉ。」


「クルーシェのギルマス!ならお望み通り本気を出します。避けてくださいね。」


「ほぅ、敵の心配かぇ?それより自分の命の心配をしたらどうじゃ?」


「これを前にそんな余裕ぶっこいてられますかね?奥義・スターライトノヴァ!」


 おれが両手を前に向けるとジリジリ、ビリビリした巨大な光の球が現れた。



「これはちょっとマズイかもしれんのぉ…」


「行きます!」


 そう言っておれは奥義を解いた。



「おや?撃たんのかぇ?」


「撃ちませんよ。おれはあなたを殺す気もギルドを壊す気もないですから…。」


 砂煙も落ち着きようやく相手の姿が見えた。そこに立ってたのは背は低く幼顔の巨乳の女エルフだった。


 俗に言うロリババアだ。しかも巨乳。更にエルフ。それにかわいい。そして強い。からのギルマス。


 キャラ渋滞起こしすぎじゃね?



「それは助かるのぉ。あんなのを撃たれてれば儂はともかくギルドはただではすまんかっただろうからのぉ。」


「少しは話を聞く気になってくれましたか?」


「ユウキ!大丈夫?」



〈キュー!!!〉



「あぁ大丈夫だよ!リッシュも心配してくれたのか?」



〈キュー!!!〉



「でもどうして撃つのを辞めたんじゃ?」


「口調が変わってますよ。それに攻撃をしなくなった。後ろに回り込んだ時にいくらでも攻撃できたはずなのにです。

変わったのはあなたが奥義を撃った後からですかね?」


「なるほどのぉ。確かに儂は奥義を撃った後落ち着きを取り戻した。と同時にしまったとも思ったぞい。だが防がれてしもぉた。」


「ってかあんなの人に向かって使うとか絶対ダメでしょ!おれじゃなかったら間違いなく死んでますよ!」


「それはそのぉ君がババアとか言うからつい…」


「ついじゃねぇし!誤解だって言ったでしょ!あのままホーク達を狙ってたら本気でおれも大技使って容赦しなくなってましたよ!」


「そうじゃ!君何者じゃ?あんなでたらめな能力…」


「しぃー。それ以上口にしないでください。それより話を合わせて何処か人気がない所に連れて行ってください。」


「なんじゃ?」


 おれは急いで偽装工作を始め落ちてる砂埃を顔や服に塗りたくり身体を汚した。

 ついでにシーフの武器のダガーを出し軽く自分を傷つけて血も流しておく。



「あのバカは死んだか?」


「全く人の迷惑も考えなさいよね」


「あっ、あそこ!」


 出ていった冒険者達や職員が騒動が収まったと思ったのか帰ってきていた。

 


「はぁはぁ……」


 前に倒れ込みやられたフリをする。名を上げるにしてもギルマス相手にここでおれが平気な顔して立ってたらいくらなんでもおかしいからな。


 やりすぎはなんでも良くない方に転ぶんだよ。



「ユウキ!」


「君、とんだピエロじゃな。」


「いいからどっか連れて行ってください。晒し者になるつもりはありませんから。それに一応あなたの顔を立ててるんですよ。」


「はぁ、仕方あるまい……冒険者達!全員で掃除じゃ!参加者には1万プライの依頼料を出そう!儂はこの者達を奥へ連れて行き尋問する!ドゥール指揮を執るのじゃ!」


「は、ひゃい!」


「よいしょっと!では頼んだぞ!」


 クルーシェのギルマスの肩に担がれおれたちは奥へと連れて行かれた。


 さぁて、どうやって説明しようかな……

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