第117話 なりきり師、囮になる。
ま、そんなわけ無いか。わかってたからこそ依頼を出したんだしな……。
やっぱりこう言う展開になっちゃうんだよな……
〜ギルマスの部屋 依頼時〜
「まずは説明しますね。依頼したい内容は今日の夜の護衛です。」
「護衛?」
「護衛と言うか警護ですね。貴族が雇った犬が間違いなくリッシュを狙って来ると思うんですよね。
一応リッシュの力はさっきついてきてた奴等には見せたんですけど、見てない奴もいるし見た上で金に目がくらんで襲って来る奴もいると思うんです。」
「まぁあるだろうな…。」
「ドラゴンによって世界が滅ぼされるとか色々作り話をしたりしましたけどそれでも諦めないバカはいますからね。」
「それでおれたちに警護を頼みたいと?だが今日だけ無事でも意味ないだろ?」
「あぁ勘違いしないでください。何もおれたちを守って欲しいから依頼するんじゃないんです。」
「どう言う事だ?」
「おれたちが泊まってるガルーダの止まり木。あの宿に迷惑をかけたくないんです。おれが始末してもいいんですけど客室で人が死んだなんて縁起が悪いでしょ?
おれたちのせいでお客さんが減ったら申し訳ないですからね。ギルマス達には襲って来る奴等を捕まえるか、遠くで殺すかしてほしいんですよね。」
「ユウキ君それじゃさっきの答えになってないよ。今日無事でも明日からどうするんだい?」
「…敵なら容赦しません。貴族だろうが王族だろうが相手になります。
ギルマスおれあの時言いましたよね?覚悟を決めたって…。
あれは盗賊を殺す覚悟を決めたんじゃなくて敵となった人を殺す覚悟を決めたんですよ。」
「何度言わせるんだ?盗賊落ちするぞ!」
「おれがずっと引っかかってる事はそれなんですよね……。ギルマス…おれたちに嘘ついてますよね?」
「…なんの事だ?」
「人を殺しただけじゃ盗賊落ちなんてしませんよね?」
「………」
「おれの予想が正しければ他に条件があるはずです。そうじゃないとこの世界は盗賊だらけになっちゃいますからね。
例えば王様を守る騎士だったり戦争に駆り出される兵士だったりが人を殺しただけで盗賊になってたら巡り巡って最終的にこの世界から普通の人がいなくなっちゃいますよね?」
「それは…」
「ギルマスの立場上そう言う説明の仕方をしなければならない事も理解できますし、安易に人を殺す奴が増えると困るってのもわかります。
だけどおれは人の言う事を鵜呑みにする程ガキじゃないんです。話を聞いてあれから自分なりに考えました。
プライに聞こうとも思ってたんですけど時間切れで聞けませんでしたが多分間違ってないでしょう。
それにもしこの予想が間違っていたとしてもおれたちに鑑定は効きませんから盗賊に落ちたとしても最悪なんとかします。なりきりチェンジもありますからね…。
だから例え盗賊に落ちたとしてもおれはホークとリッシュを守るためなら襲って来る奴は殺します。
それがおれの覚悟です。」
「はぁ…ユウキおれはお前をまだみくびっていたようだな…。確かに人を殺しただけでは盗賊落ちするには至らないし盗賊落ちするには他に条件がある。それは認めよう。
だからと言って簡単に人を殺していいなんて事はないんだ。」
「簡単に殺したりしませんよ。ギルマス達が何と言おうとおれにとって盗賊も人だし、貴族でも邪魔してくる奴は敵なんです。
おれが決めた覚悟はあくまでも襲って来る敵を返り討ちにする事です。自分から進んで人を殺そうと思ったりなんかしません。
そしてその覚悟が決まってるからこそ今回の依頼なんです。
おれの覚悟とガルーダの止まり木に迷惑がかかる事は全くの別物です。
散々お世話になったあの宿に恩を仇で返すような事はしたくないんです。
本来なら今日出て行ってもいいんですけど今は貴族側に何もされてない事になってますからね。夜に街を抜け出したら不自然ですからね…。」
「貴族や王族を敵に回して平穏に暮らせると思ってるのか?」
「おれにどれだけスキルがあるかお忘れですか?まだまだ便利なスキルは増えますし、やろうと思えば証拠も目撃者も残さずに敵を殺すなんて訳無いですよ。
そんな事より今大事なのは依頼ですよ。受けてくれますか?」
「ったく物騒な事言ってんじゃねぇよ…自分達が狙われてんのに他人の心配してる場合じゃねぇだろうが…」
「フフッ言ったでしょう?おれほど空気の読める人間はいないんですよ…。おれは大切な物を守るためなら自分も囮に使うんですよ。」
「はぁ〜あ仕方ねぇ受けてやるよその依頼。ゴロズとシルバはどうする?」
「あたしももちろんやるわよぉ〜!」
「僕も受けます。ユウキ君作戦はあるのかい?」
「はい。一応考えてます。まぁ相手の動き次第なんで大まかにですけどね…。」
〜ガルーダの止まり木 現在〜
「ホーク、ホーク起きて!」
ぐっすり寝てるのに起こして可愛そうだがそうも言ってられない。
「うーん…どうしたの?」
「敵が来たよ。」
「えっ!ホントに来たの?」
「しぃー!静かに…作戦の内容は覚えてる?」
口を塞いでコクコク頷くホーク。
「どうやら4人組で来てるみたいだ。」
マップ内検索でリッシュを狙ってる奴はちゃんと更新してる。どうやら今回行動に移したのは1グループだけだったみたいだな。
「4人…って事は外に出るんだよね?」
「そうだな。トイレ作戦で行こう。ホーク、リッシュを頼んだぞ?」
「わかった。」
「シルバさんもお願いしますね。」
「任せてくれ。」
部屋の暗がりで完全に闇と同化してたシルバさんにも声をかけおれたちはこの日の作戦を実行する。
「さぁ、邪魔者駆除といきますか。」
〜ガルーダの止まり木 玄関前〜
「誰だよこんな時間にトイレ使ってんの…全然出てこないし寝てるんじゃないだろうな?」
「ねぇユウキ早くしてよ?おれ眠い」
「ごめんって!でも夜のトイレって怖いじゃん…お化け出たら嫌だもん……」
「お化けなんか出ないって!もう成人してるんだからトイレ位一人で行ってよ。」
「だからごめんって!すぐ終わらせるから待っててよ!」
ライトボールを4個浮かべておれたちは外へと出てきた。
このライトボールは離れて待機してるギルマスとマーガレット所長に敵の人数を伝えるための秘密の暗号だ。
3人以上で来た場合は部屋では手狭になってしまうのでおれたちが囮となり敵をおびき寄せる事になっている。
「でもどこでトイレするの?」
「仕方ないから路地裏に行こう。ちゃんと終わったらクリーンの魔法使うから黙っててよ?」
「わかった早くしてね?」
「うん!じゃあ行こう!ちゃんとついてきてよ!」
屋根の上にいる4人の刺客に聞こえるように話してもうすぐ絶好の隙ができる予告をしておく。
余程のバカでない限り今すぐ攻めてくるような事はないだろう。
まぁ、余程のバカでも的確に対処するけどね。
〜路地裏〜
いくら辺りが暗いからといってもあそこでは仕掛けてこなかった。そのかわりに屋根伝いにしっかりついてきてるけどね……
「この辺りでいいかな…さて、始めようか。(ミラージュバリア)」
ライトボールを消し小声でミラージュバリアを使い完全に姿を消した。
これならもし暗い所でも目が見えるスキルを持っていたっておれたちを見失うはずだ。
「おい!アイツらどこいった?」
「えっ?どこってそこに…あれ?」
おいおい…仮にも隠密行動してんだろ?大きい声なんか出しちゃダメじゃない。
「まさかおれたちに気付いて…」
「そんなはず無いだろ!新人のガキにおれたちがヘマするわけが無い!第一アイツらは周りを気にする素振りすら見せなかった。
誰かに狙われてるなんてわかってたらそんな反応はありえない。」
そうだろうね。でもそれは圧倒的に余裕がある相手には適応されないんだよ。
もちろんホークにも目線、視線、辺りを探る動きなんかも事前に打ち合わせておいて注意するようにお願いした。
それにおれはもちろんの事ホークにもバフとしてディフェンシブとレジスティーをかけた上で肩代わりも使ってるんだ。
襲われた所で安全だってのはホークに説明したしおれを信じてくれてるからこそ周りを気にする素振りをしなかったんだ。
なによりおれたちにはまだ仲間がいるからな。
「とにかく降りて探すぞ!あのドラゴンを持っていくだけで500万プライが手に入るんだぞ!」
「「「わかった!」」」
500万プライ…そんな物の為にリッシュを狙ったんだな?……ただで済むと思うなよ
「(ちょ、ユウキ何やってるの?おれたちはもう隠れて終わるのを待つだけでしょ!)」
「(止めてくれるなホーク…イラッとした!)」
おれはインベントリから弓を出し狙おうとしたのだがホークが止めてくる。
「(ダメだって!自分で考えた作戦でしょ!なんで自分で計画を壊そうとしてんの?)」
「(だってアイツら…)」
「(尋問してどんな状況になってるのかギルマス達に聞き出して貰うんでしょ?大人しく待ってなきゃダメだよ。)」
「うわっ!なんだこれ!」
ホークに諭されてる間にもシルバさんが影で一人を捕まえていた。
と思っているとギルマスもマーガレット所長も登場してあっという間に全員を捕まえてそのまま有無を言わさず口と目を布で塞ぎ連行していってしまった…
あれじゃどっちが悪人かわかんないな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます