第115話 なりきり師、デリカシーに欠ける。

 チェスさんの店を見て回り必要そうな物をそれぞれが選んだ。


「いや〜我ながら爆買してしまったな…」



 防具屋さんだから服や鎧が置いてあるのはもちろんなんだけど、チェスさんの店には効果付きのアクセサリーも置いてたんだ。

 アクセサリー類はおれが転職しても装備していないのでついテンションが上がりそれ程強い効果があるわけでも絶対に必要って事も無いのにカウンターへと持って行ってしまった…。



「全部で9点で26万プライになります。」


「あれチェスさん計算間違ってませんか?多分ですけど30万プライは軽く超えてると思ってたんですけど?」


「大丈夫ですよ。これだけたくさん買ってくださってるので割引サービスです。それとリッシュちゃんにこれをどうぞ…」


 なんとラッキーな事でしょう!行き付けでもない初見の店で割引してもらえるとは思わなかった。


 それにリッシュにと言って追加でチョーカーのような感じの輪っかになってる薄ピンクのリボンを渡してくれた。



「いいんですか?」


「はい、もちろんです。リッシュちゃんも女の子ですもんオシャレをしたいと思うんですよね。

見た所ユウキさん達は効果付きのアクセサリーばかりをお買い求めみたいですのでこれは私からリッシュちゃんへのプレゼントです。」


「あれ?リッシュがメスだって言いましたっけ?」


「何言ってるんですか!見たらわかるじゃないですか!ねぇリッシュちゃん。」



〈キュー!!!〉



 どこだ?どこを見てわかった?ドワーフ特有の特殊能力か?ティ〇〇ィンか?〇ィンティ〇が無いからか?


 そもそもモンスターのオスメスってどうやって見分けるんだ?

 怒られそうなので口には出さないがチェスさん恐るべしだな…



「えっ?リッシュさんって女の子だったんですか?」


 あっ、シュラフさんが丁度戻ってきた。シュラフさんもわかってなかったんだ…じゃあドワーフの特殊能力の線は消えたな。



「兄さんそれ本気で言ってんの?どこからどう見ても女の子でしょ!」


 だからどこをどう見たんだよ?わかるように教えてよ…あれ?じゃあサナさんもリッシュがメスだって知ってるのかな?


 女にだけわかる何かが共鳴してんのか?



「アハハ…おれたちも最初わかんなかったんですよ。名前をつける時に初めて女の子だって知ったんです。」


「えぇ〜ユウキさん達もですか?こんなにカワイイのに…」



〈キュー…〉



 リッシュが何を言ってるかわからないけど、これは何を言ってるかわかる。

 だって完全にヤレヤレ感を出して呆れた鳴き方をしてるんだもん…。ホントにデリカシーがないよね的な事を言ってるんだろう……



「…アハハ。……チェスさんそのリボン本当に貰ってもいいんですか?売り物でしょう?

それにリッシュがどの位の速さで成長して大きくなるかわかんないんですぐに着けられなくなるかもしれませんよ?」


 別に怒られてるわけでも喧嘩してるわけでもないからこう言う時は話を変えちゃおう。



「それは大丈夫です!これは装備者の大きさに自動で合わせる事のできるリボンですのでリッシュちゃんでも着ける事は可能ですよ。

ただあくまでもこれはオシャレアイテムなので装備補正とかはないんですけどね。」


 装備補正ないんだ…ってか自動で大きさが変わるリボンか…また新しい異世界要素が出てきたな…。

 日本では説明できないような不思議パワーがこの世界にはいくつもあるからなんか多少の事じゃ驚かなくなってきたな……



「へぇ〜便利なんですね。じゃあありがたく頂きます。リッシュこれチェスさんからリッシュにプレゼントなんだって。つけてみるか?」



〈キュー♪〉



 リッシュにつけてみるか聞いてみるとこちらに背を向けて尻尾をフリフリしながら喜んでる。尻尾につけたいのかな?



「尻尾につけるのか?」



〈キュー♪〉



「そっかわかった。チェスさんにちゃんとお礼を言うんだぞ。」


 リッシュの望み通りに尻尾にリボンをつけようと持っていくと本当にジャストフィットに輪っかがキュッとなってつけることができた。



〈キュー♪〉



 リッシュも喜んでチェスさんの顔を舐めに行った。あれがリッシュなりのお礼なんだろうか…

 辞めさせないといけないと思ってるのにな……。



「アハハ、リッシュちゃんありがとう。私の髪の色と同じなんだよ。お揃いだね!」



〈キュー!〉



 チェスさんもありがとうって言ってるしまぁいいか。もしリッシュが舐めて怒る人がいたらその時はおれが謝ろう。

 でも皆が皆ドラゴンが好きって事じゃない事はリッシュに今度教えとこう。









 〜冒険者ギルド〜


 チェスさんの防具屋で買いたい物も大体買えたし再びギルドへとやってきた。

 シュラフさんに売ったアイアンスコーピオンの外殻が20万プライで取引成立となったので防具屋での支払いに使わせて貰った。

 ホークの刀を作って貰った余りしかないのに結構な額で買い取ってくれたと思う。

 シュラフさんもチェスさんもいいドワーフだったな…。



『コンコンコン。』



「ユウキです。用事を終わらせたのでまた来ました。」


「開いてるぞ入れ!」



 ギルドの職員さんにギルマスと約束がある事を話して確認してもらいギルマスの部屋に行く許可を貰えた。


 声をかけると中からギルマスの声が聞こえて……ん?防音対策は?なんで中からの返事が聞こえるんだ?



「ギルマス…確認ですけどこの部屋って盗聴されないんですよね?今外に声が聞こえてたんですけど…」


「そりゃ聞こえるだろうよ。今は魔道具切ったからな。心配すんな基本は常に使ってる状態だ。もちろん今も作動したぞ。」


 そう言えば前に防音の魔道具だって言ってたな…



「えっでもそれってギルマスのうっかりミスで筒抜けになる可能性があるって事じゃ…」


「お前と一緒にすんじゃねぇよ!おれはギルマスだぞ!おれに限ってそんな失敗するわけねぇだろ!」


「酷い言われようだな……ってどうして誰もスキルの書を使ってないんですか!」


 テーブルの上にはおれたちが出ていった時と変わらずスキルの書が箱に入って置いてある。



「だから言ってんだろ神からの贈り物なんてそんな簡単に使えるかよ!」


「それはさっき聞きました。でも使わないと意味ないでしょ!せっかくプライが皆さんが喜ぶと思ってプレゼントしてくれてるのに使わない方が罰当たりますよ?

何気におれの事ずっと見てるしこの光景も見てますよ。」


「「「なんだって!?」」」


「ユウキ君どうしてそんな大事な事を黙ってたんだい?」


「えっ?」


「あなた神がいつも見守ってるなんてあたし達に言ってないじゃないか!」


「そ、そうですけど…大事ですかそれ?」


「当たり前だろうが!大事に決まってるだろ!お前が見られてるって事はおれたちも間接的に見られてるんだろ!」


「? そうですね。それがどうかしました?」


「緊張するだろうが!」


「知らねぇよ!なんでそんな理由でおれが責められてんだよ!」


「プライ様ありがとうございます。スキルの書は大切に使わせて頂きます。」


 うわぁ…完全におれのツッコミ無視されたよ……



「さっきも言いましたけど多分ハズレスキルでは無いと思います。だけど心配ならおれが鑑定しますけど?」


「バカバカ!おまバカ!心配なんかしてねぇよ!すぐ使うから待ってろ!」


 なんで怒ってんだよ!ってか怒り方小学生か!



「リッシュ、今から皆がスキルの書を使うんだって。おれも使った事があるんだけどブワーッてなって凄いんだよ!」



〈キュー?〉



「今から魔法陣とかが出てくるけど問題は無いから大人しくしとくんだぞ?」



〈キュー!〉



 おれの頭からホークに抱きつきに行った。リッシュにしたら未知の体験だから怖くなったのかな?


 ギルマス達は意を決したように箱からスキルの書を取り出した。


 プライが贈った箱からスキルの書を取り出すと箱が勝手に消えた。って事は1回も箱から出して無いのかこの人達……

 使っておくように言ってシュラフさんの店に行ったのに取り出してすらいなかったんだな…



「じゃあいくぞ。ゴロズ、シルバ、準備はいいか?」


「はい!」


「おう。」


 そう言って3人は同時にスキルの書を開くと魔法陣が飛び出し本が光りだした…。


 さぁてどんなスキルを覚えるのかな?

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